新型ホンダ「シビック」に追加された「e_HEV RS」は、想像以上にスポーティだった! 『GQ JAPAN』ライフスタイルエディターのイナガキがリポートする。
新型ホンダ シビックe:HEV RSの特徴
単なるハイブリッド車のスポーティーグレードではない!──新型ホンダ シビックe_HEV RS試乗記
1.RSの新境地2.内外装の違い3.巧みなサスペンションチューニング4.ノーマルモードでもわかる違い1.RSの新境地
シビックは1972年の初代誕生以来、累計で約2760万台の販売台数を記録してきたホンダのグローバルスタンダードだ。
現行の11代目モデルは、ホンダのクルマづくりの原点とも言える“人中心”のフィロソフィー掘り下げ、乗る人すべてが直感的に“爽快”と感じられるクルマを目指して開発されたのが特徴だ。
ラインナップの中核を担うべく、2022年に投入されたのが、ホンダ独自の2モーターハイブリッドシステムを搭載した「e:HEV」モデルである。
そして2026年4月23日、新たな切り札となる「シビック e:HEV RS」の情報をサイトで先行公開した。
今回の新型シビックe:HEV RS誕生の背景には、市場の変化とホンダの危機感、そして挑戦の歴史が横たわっている。
開発陣のプレゼンテーションによれば、現行の11代目シビックは、2024年にガソリン車の「RS」グレード(6速MT)を追加投入し、シビック本来のスポーツイメージを力強く牽引してきた。事実、2025年度にはシリーズ全体で約1.6万台を販売し、中でもスポーティーなガソリンRSはクルマ好きからの熱烈な支持を集めた。一方で、メインストリームとなるべきハイブリッドモデルe:HEVの販売台数は、伸び悩んだ。
自動車市場全体の潮流を見渡せば、ハイブリッド車へのニーズはすでに市場の6割を超え、今後さらにその比率は高まっていくのが確実視されている。絶対的なトレンドの中でe:HEVの販売を再活性化させるためには、これまでの“エコで滑らか”といったハイブリッドの常識を覆す起爆剤が必要不可欠。
そこでホンダが導き出した解答こそが、イージードライブや優れた実用性と、胸のすくようなスポーティな走りを高次元で両立させる、新時代のハイブリッド・スポーツ「e:HEV RS」の投入である。実購買層として想定される50代から60代の夫婦などはもちろん、これまでピュアスポーツカーを乗り継いできたような30代から40代の若年層男性をも唸らせる“本物”の走りを目指したのだから期待が高まる。
2.内外装の違い
実車を目の前にしてまず心を奪われるのは、RSの称号に恥じない、引き締まった専用エクステリアが放つオーラだ。
標準モデルが持つ流麗で伸びやかなプロポーションをベースとしながらも、随所に施された精悍なブラックパーツが、RSが只者ではないのを雄弁に物語っている。 ヘッドライトリング、アッパーサイドガーニッシュ、そしてバンパーロアガーニッシュなど、フロントマスクを構成する重要な要素をブラックで統一。低重心感とワイド感がより一層強調された。
足回りに目を移すと、特別にアップデートされた18インチの専用スポークデザインホイールが奢られており、表面には光の反射を抑えたマットブラック塗装が施されている。このホイールは、単なるドレスアップパーツではなく、後述するRS専用チューニングのサスペンションと、グッドイヤー製ハイグリップタイヤの存在感を際立たせるための必然的なチョイスだ。
運転席のドアを開け、低く設定されたシートに腰を下ろすと、そこにはドライバーの気分を静かに高揚させる空間が広がっている。インストルメントパネルを貫くピンストライプ、身体をしっかりとホールドするシートのステッチ、そして夜間のキャビンを彩るドアイルミネーションには、RSの血統を象徴する赤いアクセントが散りばめられている。
中でも特筆すべきは、ドライバーとクルマとを結ぶ重要なインターフェースであるステアリングホイール。e:HEV RSには、先に復活を遂げたスペシャリティクーペ「プレリュード」から譲り受けた、Dシェイプデザインの専用ステアリングホイールを採用した。赤いステッチが施された上質なグリップを握り、メタル製パドルシフトに指をかけた瞬間、新型シビックe:HEV RSが単なる移動の道具ではなく、ドライバーの意志を路面に刻み込むためのマシンであるのが全身に伝わってくるのだった。
3.巧みなサスペンションチューニング
新型シビック e:HEV RSが、単なる外見だけのスポーティーグレードではないのを最も明確に証明しているのが、徹底的に鍛え上げられたシャシーと足回りのセッティングだ。
標準モデルのe:HEVは、市街地での柔らかな乗り心地と高速道路での安定性を高い次元で両立させた、いわば“グランドツーリングカー”としての性格が与えられている。しかし、RSのバッジを冠する以上、サーキットやワインディングロードの極限領域において、ドライバーの操作に対して1mmの遅れもなく反応するハンドリングが求められる。
開発責任者が語る技術的な数値は、凄まじいものがある。RS専用に開発されたサスペンションシステムのうち、サスペンションダンパーの応答性を、標準モデル比で107%も向上させたという。さらに、スプリングのバネレートとスタビライザーの剛性を最適化して引き上げることで、コーナリング時の車体の傾きを抑えるロール剛性を11%アップ。
ステアリング機構においても妥協はない。ドライバーの操舵力をタイヤに伝えるステアリングのトーションバーのレートを引き上げることで、路面のインフォメーションをより正確に伝え、ドライバーの意図したラインをリニアに切り裂くダイレクトなステアリングフィールを実現したと謳う。
加えて、足回りの関節部分にあたるサスペンションのコンプライアンスブッシュの剛性も引き上げられた。バルブ特性を最適化した専用ダンパーとの組み合わせによって、タイヤが路面に吸い付き、決して離れないような接地感とスタビリティを手に入れている。
これらの大規模な改良により、標準モデルの段階ですでに欧州の強豪ライバル車と同等レベルだったハンドリング性能が、RSではさらに1ランク上の孤高の領域へと引き上げられている。それはまさに、日常の快適性を残した標準モデルと、サーキットのラップタイムを削るためにすべてを捧げた「タイプR」といった“2極”の間に存在する、理想的なスイートスポットを正確に撃ち抜くチューニングであるだろう。
4.ノーマルモードでもわかる違い
理論上の数値がいかに優れていようとも、クルマの真価は実際にステアリングを握り、走らせて初めて明らかになる。
今回の試乗は「日本サイクルスポーツセンター」の特設コースで行われた。急激なアップダウンと先が見えないブラインドコーナーが連続する、まさにクルマの素性を丸裸にする環境だ。
比較のため、まずは標準モデルのe:HEVに乗り込み、コースへと滑り出す。荒れた路面や大きなうねりのあるセクションに進入すると、標準モデルはサスペンションを豊かにストロークさせ、ボディ全体が柔らかくロールし、路面からの入力をしなやかにいなしていくのが手にとるようにわかる。
ステアリングの反応もマイルド。ファミリーでの長距離ツーリングでは、このゆったりとした乗り心地は間違いなく大きな武器となるだろう。しかし、ペースを上げてコーナーに飛び込んでいくと、ややボディの沈み込みが大きく、限界領域ではアンダーステアの気配を感じるのも事実である。
続いて、本命であるe:HEV RSに乗り換え、同じコースをまずは「ノーマルモード」のまま走り出す。電子制御サスペンションを持たないe:HEV RSにおいては、メカニカルな足回りのセッティングこそが命。最初のコーナーに向けてステアリングを切り込んだその瞬間、手のひらと腰のシート越しに伝わる感触の違いに思わず息を呑んだ。 先ほどの標準モデルで明確に感じられたボディの揺り返しや、コーナー外側へのロールが見事に抑え込まれている。サスペンション自体は明らかに引き締められているものの、ダンパーの初期の動きが滑らかであるため、決して不快な突き上げやゴツゴツとした硬さは感じさせない。グッドイヤー製タイヤが路面のアンジュレーションを舐めるように追従し、高いグリップ力でアスファルトを捉え続ける。
標準車に比べ、自分が描いたラインをトレースできる印象だ。下り坂のコーナーをモーターのみ(エンジン停止状態)で滑空するように駆け抜ける際、車内は静粛性が高く、ロードノイズが低く抑えられているのにも驚かされる。スポーティなタイヤを履き、足回りを硬めているにもかかわらず、乗り心地の良さと静粛性といったハイブリッドカー本来の美点を犠牲にしていないのだ。ノーマルモードでありながら、すでに標準モデルとは違う、スポーツハッチバックとしての完成度を見せつけられた。
▲試乗記の続き:「単なるハイブリッド車のスポーティーグレードではない!」
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みんなのコメント
これに飛びつくかな?(28年製造工場移転先確保済みです)
新型への機能は、歩行者認識ウインカーぐらいか?
各メーカー一斉搭載となり時期は協議中だろう