ボルボの最先端BEVが待望の日本上陸
2026年7月に発売開始となった、ボルボのフラッグシップEV「EX90」に東京都内で試乗する機会を得ました。多様なモビリティが交錯する都内の一般道、そして首都高を走行した印象を共有したいと思います。
「小さなボルボ」は本当に安全? プロダクト責任者が語るボルボ独自の取り組み
EX90のプロフィールから紹介しましょう。
2022年に発表されたEX90はEセグメントに分類される7シーターの大型プレミアムSUV。最新のセントラルコンピューティングを採用するなど、SDV(ソフトウェア定義車両)として意欲的な電子系となっていますが、そのためかソフトウェア開発に手間取ったこともあり、生産に遅れが生じていました。
2026年夏になっての、日本でのローンチは“待望の”という表現がピッタリかもしれません。
ボディサイズは全長5035mm・全幅1965mm・全高1740mmとプレミアムSUVらしいサイズ感。ホイールベースは2985mm、最小回転半径は5.9mとなっています。この数字をみると都内での試乗というシチュエーションでは、取りまわしのネガも感じそうで、そのあたりも試乗前にはチェックポイントとして想定していました。
EVとしての基本性能に影響するバッテリー総電力量は106kWh。総電圧718Vという高圧システムを実現しています。ちなみに、種類としては三元系リチウムイオンバッテリーとなっています。
グレードとメーカー希望小売価格は以下のとおり。
EX90 Plus Twin Motor 1199万円 EX90 Ultra Twin Motor 1349万円 EX90 Ultra Twin Motor Performance 1399万円
全車が前後に駆動モーターを積む4WDで、一充電走行距離は650kmと共通。外観についてもほとんど同一です。ホイールサイズが、エントリーグレードは20インチ、中間グレードは21インチ、最上級グレードは22インチとなっているのが識別ポイントとなります。
なお、システムで発生するパフォーマンスは「Twin Motor」グレードが330kW/670Nm、「Twin Motor Performance」は500kW/870Nmとなります。これほどスペックに差があっても航続性能が同一というのは、モード走行においてはいずれも高性能領域を使わないこともありますが、基本的には同じ駆動モーターを搭載しているということも関係しているようです。
モーター、バッテリーが共通でもソフトウェアによってパフォーマンスが大きく変わる……これはEV時代の新常識といえるかもしれません。
というわけで、今回試乗したのはEX90 Ultra Twin Motor Performance。はたして、大きな体躯のプレミアムSUVは、東京の市街地でどんな振る舞いを見せてくれるのでしょうか。
乗り出して最初の感想は「想像以上に扱いやすい」というものでした。非常に大きなボディですが、車両感覚が掴みやすいのです。
その要因はメーター表示にあります。EX90のメインメーターは9インチの横長ディスプレイとなっていますが、その表示モードはマップ/サラウンド/カームの3種類があります。マップは地図情報をメインとするもので、カームは速度や充電率などをシンプルに表示するもの。そして、今回メインで利用したサラウンドは、周囲の車両や区画線の情報を表示してくれます。
この表示については、先進安全機能・運転支援システムに用いる多数のカメラやミリ波レーダーなどの情報をもとにしているそうですが、トラックや乗用車の違いも認識しますし、バイクや自転車も逃さず表示します。また、区画線と車両の位置関係もかなり正確ですから、道路の中央を走っているのか、左右に寄っているのかもメーター表示によって把握できるのです。この表示のおかげで、ボディサイズを気にすることなく、都内をドライブすることができました。
運転支援システムを起動していなくとも、システムがもつセンサー情報がドライバーの視界や車両感覚をアシストしてくれることで、これほど運転しやすくなるわけです。
首都高を走行する際には、コラムに置かれたシフトレバーをDレンジ方向に押すだけで起動する先進運転支援システムを利用しましたが、これまた高精度。車線中央をしっかりと維持してくれますし、コーナーに合わせたステアリング操作もアシストしてくれます。
ドライバーの意思が入っているときはマイルドなアシスト、ドライバーの操作が遅れそうなときは強めに舵を入れるといった印象。クルマとのコミュニケーションも適切に仕上げられていると感じたのは気のせいかもしれませんが、ボルボの「安全から遠ざかるので、ハンズオフ機能はあえて搭載しない」という方針を聞けば、こうしたステアリングアシストの味付けも納得です。
先進安全機能として衝突被害軽減ブレーキを搭載しているのは当然ですが、EX90の特徴としては、前方検知センサーの情報を使ったワンペダルドライブを実現していることでしょう。アクセルペダルだけで加減速をコントロールできるワンペダルについては強・弱・オート・オフと4つのモードを選べますが、オートモードでは前を走るクルマとの距離を見ながら回生ブレーキの強さを調整してくれますし、アクセルオフにすれば適切な車間での停止まで実現しています。
ボルボらしい安全思想が随所に反映
特筆すべきは、停止時のピッチング(前後方向の揺れ)がほとんど感じられないこと。前後モーターの独立制御および回生ブレーキとメカブレーキの協調制御、試乗グレードに標準装備されるツインチャンバーのエアサスといったハードウェアを活かした成果といえます。とにかくスムースなブレーキングで、運転が上手くなったような気分が味わえます。
こうした滑らかな走り味は、2列目・3列目の同乗者にも好評となるでしょう。
さらに驚くのは、2列目や3列目に座った瞬間です。電動格納式の3列目シートが、十分に大人が座れる空間になっているだけでなく、それぞれに用意されたエアコン吹き出し口から風が出てくるのです。キャビンの状況を、車両が完全に把握しているわけです。
この機能は、車内に設置された60GHzミリ波レーダーによるものです。そもそも、このミリ波レーダーは車内の置き去り事故を防止するために新設されたものです。レーダーによって人影を確認、呼吸していることを検知すると、ドライバーのスマホアプリにワーニング情報を表示するだけでなく、バッテリー電力が残っている範囲でエアコン(温度に合わせて冷暖房を自動制御)を利かせることもできるという、いかにもボルボらしい安全機能です。
こうした新しい安全装備を生み出すもとにあるのは「人間はミスをするもの」というボルボの開発思想。前述したハンズオフ制御をあえてやらないという判断も、人間のミスを少しでも減らすため、具体的には運転支援が終わったときのドライバーの集中力が落ちることを避けるためといいます。
とにかく安全第一、その上で先進運転支援機能に必要なセンサー情報を、ワンペダルのオートモードや、エアコン制御など利便性・快適性に利用するというのは、まさにボルボのフラッグシップに乗っていることを実感させてくれるものでした。ボルボに期待する安全性と乗りやすさは、フラッグシップSUVであるからこそ最高級の機能となっているのです。
ところで、EVといえば航続性能が重要と思うかもしれませんが、今回の試乗ではバッテリー残量についてはまったく気になりませんでした。
具体的にいえば、出発時のバッテリー充電率と航続可能距離表示は96%/500kmで、2時間以上の試乗後(もちろんエアコンはガンガンに使っています)の表示は86%/410km。
あと8時間くらい試乗していたらバッテリーの残量が気になったかもしれませんが、それほどの長時間を連続走行するのは非現実的。リアルワールドでの使い方を考えると、多くのユーザーにとってドライブ途中での充電を気にすることがないであろう航続性能を有しているのです。
少なくとも、EX90のようなEセグメントのプレミアムEVにおいては、航続性能は気になるものではなくなっています。前述したようなピッチングを抑える前後モーター制御や、エアサスによる快適性が評価ポイントとなるでしょう。
全体的な走りの満足度としては「コストパフォーマンスが高い」というのが個人的な感想。もちろん1000万円超の価格は絶対的には高価ですが、その予算を出せるユーザーにとっては、プレミアムSUVの選択肢として、ハイブリッドカーやPHEVと比較される対象になりそうです。
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