この記事をまとめると
■マスタングのチューニングで有名な「サリーン」が2000年に「S7」を発売した
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■S7はコンペティションモデルの「S7R」でFIA-GT選手権にも参戦して活躍
■2005年にはツインターボ化されて最高出力が750馬力にアップした
コンペティションモデルはFIA-GT選手権で活躍
多くの自動車メーカー、あるいはチューニングメーカーがそうであるように、アメリカのハイパフォーマンスカーメーカーとして知られるサリーンもまた、アメリカン・トランザム・シリーズに代表されるモータースポーツの世界から、その技術的なノウハウを武器にロードカーへと進出を果たしたメーカーのひとつだ。
カリフォルニア州アーバインに本社を置くサリーン社を率いるのは、自身もレーシング・ドライバーとして活躍したスティーブ・サリーン氏。設立当初はマスタングのチューニングで多くのカスタマーから注目を集め、このサリーン製のマスタングは改造範囲の狭いショールーム・ストックカーレースにも参戦。魅力的なリザルトを残してみせたのである。
そのサリーンの名を、さらに世界中に知らしめる原動力となったのは、2000年秋にデビューを飾った完全オリジナルのスーパースポーツ、「S7」の存在だった。
スティーブ・サリーンは、開発段階からこのS7をモータースポーツに投入する計画を前提としており、そのためにアメリカ車ならば、通常は立方インチで表示されてもおかしくはない車名の排気量にリッターを採用。S7、つまりサリーンの7リッターモデルであることを世界中に主張してみせたのだ。
実際にサリーンS7は、2001年シーズンからモータースポーツへの参戦を実現している。正確には「S7R」と呼ばれたコンペティションモデルは、サリーンの狙いどおりに世界中のサーキットで華々しい活躍を見せる。その象徴的な例といえるのは2003年から参戦を開始したFIA-GT選手権での活躍だろう。ヨーロッパの強力なコンペティターの中でS7Rは着実に勝利を重ね、その存在とパフォーマンスの高さは、さらに広く知られることとなった。
サリーンの存在は、創立時から友好的な関係を持つフォードにとっても非常に重要なものだった。サリーンの本社は前でも触れたとおりカリフォルニア州にあったが、じつはミシガン州のトロイにも生産工場が置かれていた。サリーンはこの工場で、2005年からフォードの100周年を記念した「フォードGT」の1500台に及ぶ限定生産を行い、両社の絆はさらに強いものとなった。
最終モデルの最高出力はツインターボ化で750馬力に
この2005年にはサリーンのS7そのものにもマイナーチェンジが行われている。ミッドに搭載されていた7リッターのV型8気筒OHVエンジンには、新たにギャレット社との共同開発によるツインターボシステムが組み合わされ、0.35バールという最大過給圧が設定される標準仕様の場合、その最高出力は750馬力にも達することになった。組み合わせられるミッションは6速MT。
また、この時のマイナーチェンジでは、カーボン製のエクステリアパーツにも積極的な改良が施され、ダウンフォースは前作と比較して60%も高められたと当時のリリースにはある。エクステリアには、とくに過激な造形の空力的な付加物は見当たらないが、これはS7が走行中のダウフォースのほとんどをボディ下面のヴェンチュリートンネルで得るデザインを採用しているからにほかならない。
ちなみにこのS7の基本構造体となっているのは、クロームモリブデン鋼で成型されたスペースフレーム。すでにこの時代、カーボンモノコックを使用するスーパースポーツも多く見られるようになってきたが、サリーンはFIA-GTの車両規定を考慮してクロモリのスペースフレームを選択したのだ。当時のGT-1クラスにはマセラティからMC12もエントリーしていたが、MC12はFIAの特例措置によって参加が可能になった例外的な存在だった。
軽いバタフライ式のドアをオープンすると、そこに広がるのは豪華なレザー素材を惜しみなく使用した2シーターキャビン。もちろんカスタマーのリクエストによっては、レーシーな雰囲気のキャビンをオーダーすることも可能だが、シートやペダルなどには一切のアジャスト機能はない。これはオーナー個人の体型にのみ合わせた特別な一台であることを物語る、サリーンからのメッセージともいえる。
サリーンS7、それはアメリカが生んだ紛れもないスーパーカー、いやハイパーカーにほかならない。
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