いちクルマ好きとして、ニューモデルが発売されるたびに、仕事抜きで「試乗してみたい」という衝動に駆られます。多くの方がご存知のように「メディア向け試乗会」というものが存在しますが、筆者のような身分のライターには声が掛かりません。そこで、最新のクルマを試乗したい場合はディーラーに出向いて試乗させてもらうことになります。この点は他のユーザーさんとまったく同じです。
1.試乗どころか相手にされなかった20代…
疲れ知らずの20代のうちに…。夜な夜な走るのが楽しいと思える時間はそう長くない
身の程知らず、分不相応といえばそれまでですが、ディーラー、街の中古車販売店を含め、20代のころはずいぶん悔しい思いをしました(筆者だけでなく、同様の経験をした方は意外に多いようです)。いま振りかえってみると相手の事情は分からなくもないのですが、クルマを販売する側の立場で考えると「買うつもりもない」「そもそも買えるはずもない」ユーザーを相手にしている時間はないのですから、当然といえば当然です。
とはいえ、数々の悔しい思い出のなかでいまでも忘れられないのが、成人式から半年ほど過ぎたある日、輸入車ディーラーに行ったときのこと。そのメーカーの看板モデルを試乗させてもらえることになったんですが、試乗中、ふとルームミラーを見てみると、お目付役のセールスが「家でお父さんがテレビを観ているときのように」顔に肩肘をついてリアシートでゴロ寝。ルームミラー越しに筆者と目線があうとさすがにきちんと座り直していましたが…。
ときどきあのときの光景を思い出しますが、いまでも悔しさがこみあげてきます。しかし「自分にはどう逆立ちしても買えるわけがないのに、無理いって乗せていただいている立場」ですから文句はいえません。その後、件のディーラーは閉鎖されたのちに取り壊されてしまい、ファーストフード店になってしまいました。
2.対応が変わってきたのは30代になってから。そして40代になるとこそばゆいほどに
年齢を重ねるに連れて、ディーラーの対応が少しずつ変わってきたと実感したのは、筆者の場合、30代に入ってからでした。
※振り返ってみると、長期ローンを組んで初めて新車でクルマを購入した(ゴルフ5 GTI)のは32才のとき。独身だからできた無謀な決断であったことはいうまででもありません
アポなしで来店して、いきなり試乗を勧められ、戻ってくると美人のショールームレディが用意してくれた美味しいコーヒーが用意され、同乗したセールス氏が分厚いカタログと見積書持参で商談テーブルにやってくる…。こちらの心境などおかまいなく「さて、まずは現在お乗りのクルマを査定してみましょうか。本日契約していただければ、最短の納期は…」と一気に商談モード。…という対応の激変振りに驚いた…というより、あれほど蔑まれたはずなのに、「単に歳を取っただけでこうも変わるのか」と、あまりの変貌ぶりに目まいがした記憶があります。
そして40代に突入し、よほどのハイブランドディーラーでない限り、見た目はともかく年齢層的にも「見込み客の可能性あり」とみなされるように。試乗を希望すればセールスの方がすぐさまデモカーを用意してくれますし、試乗後は「ところで、いつ買い替えのご予定ですか?」とばかりに商談を持ち掛けられることもしばしば。それがこそばゆいと同時に「買うかどうか分からない(見込み客としても微妙)」相手に無駄な時間を割かせてしまうのは申し訳ないと考えるようになったのも事実です。そのため、どうしても実車を観てみたいときは、入店してすぐに駆け寄ってくるディーラーのスタッフの方に「興味本位で観に来ただけなので、放置で大丈夫ですから」とお願いするようにしています。
3.「買う気ほぼゼロでも試乗だけはありか?」現役セールスの本音とは
筆者の友人にも輸入車ディーラーの現役セールスがいます。「買う気ほぼゼロでも試乗だけはありか?」という問いに対しては「乗ってみなければ分からないこともありますし、度を過ぎない程度であれば試乗してみてください」とのことでした。やはり現役の輸入車セールスなので、当たり障りのない模範解答をしてきます。おいおいそれが本心かよ…というわけで、もう少し突っ込んで聞いてみると「あきらかに見込み客でない方の試乗は正直困ることがありますね。特に、土曜日や日曜日は新規の方はもちろん既納客の方のご来場が多く、お待たせしてしまうことも少なくありませんから…」とのこと。それに加えて「さすがに、あきらかに試乗目的(ハナから買う気ゼロ)という方はだいたい分かりますよ」…だそうです。
遠慮ばかりしていたらいつまで経っても気になるクルマに乗ることは叶わないし、かといって片っ端から試乗していたら迷惑以外の何者でもない。ユーザー側に節度が求められるということかもしれません。
余談ですが、ある取材で誰もが知るスーパーカーのディーラーを取材させていただいたとき、セールスの方に「いきなり試乗したい」と来店した方にはどう対応しているか聞いてみたところ「購入の意思や時期、見込み客になりうるかどうかを見極めたうえで判断しています」とのことでした。なかには「いまは買えないけれど将来必ず手に入れるから、何とか試乗させて欲しい」というケースもあるそうなので、正直に事情を伝えれば憧れのスーパーカーを試乗(または助手席体験)も夢ではないかもしれません。
4.試乗車を借りてSNSなどで勝手にインプレッション…について思うこと
最近、ブログだけでなく、FacebookやInstagramなどのSNS、YouTubeでユーザーのインプレッション記事(あるいは動画)を見掛ける機会が増えました。主な内容は、モータージャーナリストのように最新モデルを運転しながら批評しているものが中心です。
批判を覚悟で申しあげると「褒めるならともかく、モータージャーナリストばりに批評した内容をネット上に公開する(いわゆるディスることを含める)のはいかがなものか?」というのが筆者の考えです。まして、公開範囲を限定した友人・知人などの身内に伝えるくらいならともかく、ライフワークのごとく毎週のように各ブランドをディーラーをハシゴして、試乗車を乗り回した挙げ句にインプレッション記事(あるいは動画)を公開すること自体、ディーラー側からすれば「たまったもんじゃない」行為であることを認識する必要がありそうです。
購入の意思もないのに試乗車を借りて、ブレーキや加速の挙動テスト(「頭に”フル”がつく場合も」)。内外装の批評、ダメだし…。もちろんガソリンはディーラー持ちです。とはいえ、事故を起こしたときは自身が加入している任意保険で対処することを承知のうえ(念書にサイン)であれば試乗okというケースも少なからず存在するので、意外とリスクが高いのも事実です。しかも、このご時世ですから、万一事故を起こした場合、本人はもちろんのこと、ブランド名やディーラー名までもが一瞬にして拡散されてしまう=世間にさらされてしまうことも頭に入れておかなくてはなりません。それはつまり、試乗車を貸したディーラーにも多大な迷惑が掛かることを意味します。
5.結論:試乗はほどほどに…
公私ともにディーラー関係者の方と接する機会が多いので、筆者自身、現場の方の苦労話を耳にすることもしばしばです。ディーラーを含めた自動車販売店側の立場からすれば「おそらくはほぼ買う気ゼロ」の人でも試乗したいといわれたら大半のブランドは断れないと思われます(とはいえ、悪質なケースは系列店で要注意人物として情報が共有され、最悪の場合は出禁になりかねないことも)。
試乗インプレッションをSNSやYouTubeなどに公開する目的でディーラーから試乗車を借りだし、数十分から数日程度乗りまわしたすえの忖度なしのコメントは、ユーザーにとっては参考になる反面、個人の感想に終始しているケースも予想されます。その「率直すぎる試乗インプレッション」は、本人にはそのつもりや意識(悪気)がなかったとしても、試乗車を提供する側の立場からすると結果的に営業妨害となっている可能性は否定できません。
「試乗大歓迎」だとしても、半分は本当で残りの半分は「冷やかしやSNSにアップする目的ならできれば遠慮してね」という含みが多分に含まれていることを、あらかじめ理解するのが賢明かもしれません。
[ライター・撮影/松村透]
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マツダのETC取り付け位置に唖然……色々あってフツーの場所なったけど戻した方がよくね??
みんなのコメント
自己満足と再生回数稼ぎのオナ ニーばかり
一般人の冷やかし試乗ってのは仕事じゃないから年に数回で少なからず買う可能性はあるわけで
そもそも記事が目的なんて冷やかし以下