この記事をまとめると
■全日本ジムカーナは僅差の争いが続き事前調整が勝敗を左右する
ジムカーナが上手い人はサーキットでも速い! 両刀遣いドライバー4名に「共通点」と「相違点」を聞いてみた
■上位選手はアライメントや内圧を細かく変更し最適解を探る
■エア圧やエアコン設定など身近な調整も性能向上に直結する
勝負は走る前から始まっている
全日本ジムカーナ選手権では常に僅差のタイム争いが展開。わずか1秒の間に10台がひしめくことも珍しくはなく、5月16~17日、広島県のスポーツランドTAMADAで開催された第4戦「MAZDA SPIRIT RACING CUP IN TAMADA」でも各クラスで接近戦が展開された。
それゆえに、全日本選手権ではシビアなセッティングが求められ、多くのドライバーが金曜日の練習走行や土曜日の公開練習で本番に向けた調整を行っているのだが、果たして、どんなことをやっているのだろうか?
というわけで、今回は本番前のテスト走行でどんなことをやっていたのか、数名のドライバーを直撃してみた。
まずはトヨタGRヤリスでPN5クラスに挑む津川信次選手で、津川選手は5月15日(金)に計4回の練習走行を実施。その際のセットアップ変更について、「金曜日に確認しているのは、タイヤの山の高さとエア圧、あとはアライメントです。今回は前戦の赤門の状態がよかったので、それをベースに1本目を走行しました。このとき、路面に砂が乗っているなどコンディションが悪ければもう一度同じ仕様で走りますが、金曜日はよかったので、2本目と3本目、4本目はアライメントをそれぞれ変更して、マシンのバランスを確認しました。それをやりながらタイヤの内圧も変えました」と津川選手は解説する。
さらに16日(土)の公開練習では計2回の走行を行っているが、津川選手によれば、この際のセットアップに対して「金曜日の4本目は手応えがよかったので、これに対して1回目はタイヤの内圧を変えて走行。2回目もタイヤの内圧を変更して走行しました。基本的にパドックで変更しているのはタイヤの内圧とアライメントぐらいで、クルマの動きがよほど悪くない限り、ダンパーの減衰力は変えません。スプリングも前後のバランスが取れているので、シーズン中に変えることはないですね」と解説する。このように金曜日・土曜日の細かい調整の結果、津川選手は競技本番で爆発的なスプリント能力を披露し、PN5クラスを制した。
また、ホンダS2000でBC2クラスに挑む広瀬献選手も、車両規定の変更により車両の最低重量が引き上げられたことから、それを補うべくスーパーチャージャーを装着するなどマシンの仕様を大幅に変更。それに伴い、シーズン前に細かいセッティング変更を繰り返していたようで、今大会においても「前戦の赤門が終わってダンパーをオーバーホールしましたし、同時にタマダに合わせて、アライメントを変更した状態でもち込みました」とマシンの状態を語る。
広瀬選手は事前にテストを行っていたようで、レースウィークは土曜日の公開練習で2回のみ走行。このときのセッティングについては「1本目を走行したらフィーリングがよくなかったのでスタビライザーとバンプラバーの位置を変更しました。その結果、2本目のフィーリングはよかったので、あとは日曜日に細かい部分を変更するぐらいです」と語る。
このシビアなセッティング変更を行った結果、広瀬選手は競技本番で素晴らしい走りを披露しており、BC2クラスを制したほか、オーバーオールでもベストタイムをマークしたのである。
そのほか、トヨタMR-SでBC2クラスに挑む小林キュウテン選手も「これまではソフトタイヤを使用していたんですけど、今回はハードタイヤを装着。金曜日の1本目はアンダーステアだったので、2本目はアライメントを変更してキャンバーを付けて走行しました。その結果、舵角の大きいコーナーはよくなったけれど、小さいコーナーはイマイチだったので、3本目はキャンバーを戻してフロントのバネを変更。そうしたら全体的にはよくなったけれど、今度は深い舵角が入っていかなくなったので、4本目はフロントのバネをそのままにキャンバーを付けてみたら、ずいぶんとよくなってきました」と14日(金)から精力的にセッティング変更を実施している。
さらに、「土曜日はセッティングを変更せずに、リヤのみ状態のいいタイヤに変更したところ、バランスがよくなりました。かなりいいところまで行ったので、2本目はセッティングを変更せずにドライビングをアジャストして走りました」と小林選手は語る。その結果、小林選手は競技本番で素晴らしい走りを披露し、激戦のBC2クラスで3位入賞を果たした。
トップドライバーのセッティング術を学ぶ
このように、全日本ジムカーナ選手権で上位争いを展開するドライバーは、ベストタイムをマークするためにシビアなセッティング変更を行っているが、その技術は競技をやっていない人でも、ワインディングやサーキットでの走行会にも応用可能で、なかでもエア圧はビギナーでもできる超簡単なセッティングとなっているようだ。
「タイヤの内圧でマシンのフィーリングは大きく変わります。内圧を高くすると初期の応答がよくなりますが、Gがかかったときは内圧が低いほうがタイヤの接地面が増えるので、タイム的には内圧が低いときのほうがいいときもある。たとえば今回のタマダであれば、タイヤの内圧を0.1kg/cm2を変えるだけで、0.2秒ぐらいタイムは変わると思うので、そこはタイムを重視してエア圧を調整したい部分です。私の場合は0.05kg/cm2単位でエア圧を調整していますが、競技をやっていない人の場合は、0.2kg/cm2ぐらい変更すれば、すぐにその違いがわかると思います」と語るのはGRヤリスを駆る津川選手だ。
さらにエア圧だけをみても、GRヤリスには独自のセッティングが必要になっているようで、「GRヤリスの場合、リヤのエア圧が変わってくる。コーナリングを重視したいのならエア圧を低めに設定するし、ターンを重視したいならエア圧を高めに設定する傾向はあります」とのことだ。
ホンダS2000を駆る広瀬選手もエア圧に関してシビアな調整を行っているようで、「僕の場合、エア圧は0.05kg/cm2単位で調整していますが、競技をやっていない人もセンサーを磨いていけば、エア圧を0.1kg/cm2変えるとその違いがわかってくると思います。ステアリングの初期反応やトラクション、ブレーキとかすべてのフィーリングが違うし、タイムも変わってくる。それは市街地を走っていてもタイヤの転がり方が違うのでわかると思う。走行会などではタイヤのエア圧を細かく変更してみて、もっともいいタイムが出たときの数値が適正だと思います」と語る。
ちなみにトヨタMR-Sの小林選手はタイヤの内圧をあまり変更しないようで、「ロードスターでPN2クラスを走っていたときは、セッティング変更ができるところが少ないのでエア圧も変えていましたが、いまはほかの部分で変更する要素が多いので、エア圧は固定にしてほかの部分を変えながらセッティングをしています」とのこと。
さらに、全体的にドライ路面のエア圧の数値はかなり低く設定されており、その一方でウエット時にはエア圧を高く設定する傾向にあるようだ。
まさにタイヤのエア圧はドライビングフィールとタイムを左右する超簡単なセッティングといえるが、このほかにもエアコンのオン・オフもマシンのパフォーマンスに大きく影響するようで、PN5クラスでナンバー付きのGRヤリスを駆る津川選手は「PN車両はエアコンが付いているので、出走する前はファンで水温を下げるためにエアコンを付けています。そのほうがエンジン出力を出しやすいんですけど、ここで注意したいのが、出走前にエアコンをオフにすることです。エアコンを切り忘れてしまうと必ずエンジンの出力に影響してくると思います」とのことで、エアコンのオン/オフも簡単なセッティングだといえるだろう。
そのほか、津川選手によれば「ブレーキパッドも簡単なセッティング変更です。タイヤの限界付近で走っているときに、コントロールできるパッドがジムカーナには最適だと思う。僕のクルマのブレーキパッドは、利きだけでいえば強いほうではないけれど、コントロールがしやすくなっています」とのこと。
このようにタイヤの内圧やエアコンのオン/オフでもマシンのパフォーマンスは変わってくるだけに、スポーツカーのオーナーは、超簡単なセッティングとして試してみてはいかがだろうか?
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みんなのコメント
人によってセッティングが全くちがう
柔らかい人もいればガチガチの人もいます