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若武者に訪れた試練!! F1角田はエミリア・ロマーニャGPでかく戦えり

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若武者に訪れた試練!! F1角田はエミリア・ロマーニャGPでかく戦えり

 自動車ライターの伊藤梓です。前回、F1の開幕戦の様子をレポートしましたが、なんとこれから毎戦レポートさせていただくことになりました!

 角田裕毅選手の頑張りやホンダパワーユニット勢の話題を中心に楽しくレポートしていきますので、よろしくお願いします。

箱根にカブ大豊作!! カブの楽しみ方は無限大だぜ

文、イラスト/伊藤梓、写真/HONDA

【画像ギャラリー】戦いはまだ始まったばかりだ!! 角田裕毅選手試練のエミリア・ロマーニャGP

■TA中に「放送禁止用語」も飛び出す怪しい雲行き

ライターの伊藤梓氏にイラストで第2戦を総括してもらった。角田選手も「Nooooo…」と頭を抱えたかっただろう

 イタリアのイモラサーキットで行われた、第2戦エミリア・ロマーニャGP。

 角田選手にとっては、“試練の一戦”と呼べるグランプリだったのではないかと思います。角田選手は、開幕戦では、得意のオーバーテイクを見せつつ、9位入賞して初ポイントをゲットしました。おそらく「次は更なる高みに!」と、第2戦へ挑んだことでしょう。

 しかし、エミリア・ロマーニャGPは、非常に難しいコンディションからのスタートでした。

 サーキットの気温は10℃前後、路面温度も25℃前後と、とても冷え込んでいます。フリー走行中、角田選手は、コースオフしたり、タイムアタック中にトラフィックに引っかかるなど、思うようにタイムが出せません。

 コース上の渋滞に対して、「なんだ、この◯×△(放送禁止用語)な“トラフィックパラダイス”は!」と叫ぶなど、フラストレーションが溜まっている様子(この無線は世界でも話題になりました)。観戦しているこちら側も「流れが悪そうだな……」と心配する中、予選のQ1はスタートしました。

■まさかのアクシデントで決勝は最後尾スタート

イモラは得意なサーキットだと公言していたこともあり、どこかに焦りがあったのだろうか……

 まずは、各車タイヤを温め、バッテリーを満タンにして、アタックに入った2周目。早くも赤旗がはためきます。

 カメラが切り替えられ、クラッシュしたマシンが大写しになると、なんとそこには角田選手の姿が……。あっという間もない出来事。マシンのリア側が大きく損傷しており、予選の時間内では修復不可能の様子。残念ながら、角田選手はそのまま予選敗退となり、決勝は最後尾からのスタートとなりました。

 速さがあるマシンだと分かっているにも関わらず、Q1のアタック1本目というタイミングでのクラッシュ。

 やはり角田選手には、焦りがあったのだろうなと感じました。インタビューでは「イモラは何度も走った自信のあるサーキット」とコメントしていたので、その分、フリー走行の結果や周囲の期待を悪い方向に気負ってしまったのかもしれません。

 とはいえ、ルーキーは誰でもミスをするもの。確かにQ2に進出できなかったことは残念ですが、「角田選手ならこのミスから学んで決勝に活かせるはず!」と前向きな気持ちで応援することにしました。

■ウェットコンディションの中着々と順位を上げる角田選手

ベストとはいえない路面コンディションの中で着々と順位を上げていった角田選手

 そして、いよいよ決勝日。前日から予報があったとおり、サーキットには冷たい雨が降り注いでいます。2戦目して初のウェットコンディションになったエミリア・ロマーニャGP。しとしとと降る雨に打たれる20台のマシンは、荒れたレースを予感させる気配が漂っています。

 赤く点灯したシグナルがブラックアウトすると、各マシンの後方から一気にウォータースクリーンが立ち上がり、レースがスタート。

 水のベールから真っ先に飛び出して来たのは、3ワイドに並びかけた上位3台。その中でも、レッドブルのフェルスタッペンの蹴り出しが良く、早速1周目でハミルトンを押さえ、トップに立ちます。

 その際、軽い接触があり、ハミルトンのフロントウィングのパーツが飛んでいきました。現代のF1は空力が繊細なので、こういった小さな損傷でもラップタイムに大きく響きます。その影響もあり、マックスがトップに立つと、あっという間にハミルトンを引き離し、集団をリードする形になりました。

 後方では、ウィリアムズのラティフィとハースのマゼピンが接触して、SCが入るなど、混乱が起きています。角田選手はそれらに巻き込まれることなく、着々と順位を上げているようです。

■ドライで勝負か!? 見所たっぷりタイヤ交換の駆け引き

タイヤ交換のタイミングをめぐる各チームの駆け引きもF1の大きな見所のひとつだ

 そして、レースが大きく動き始めたのは、レースの3分の1が過ぎた頃。路面が徐々に乾き「ドライタイヤに交換するかどうか」という各チームの駆け引きが始まりました。

 まずは、下位チームが逆転を狙って先にドライタイヤを投入。そして、中位~上位チームで真っ先に動いたのは、角田選手でした。彼も後方からの追い上げになってしまったため、チームが賭けに出たのでしょう。

 そして、その直後、先にドライタイヤに交換していたアストンマーティンのベッテルがファステストタイムを記録。

 上位チームも、「ここでタイヤ交換を出遅れたら、負ける!」と判断したのか、バタバタとドライタイヤを用意し始めます。

 トップだったマックスは無線で「スリックタイヤで走れるのは、一本のラインしかないよ」と伝えていましたが、チームオーダーによりピットイン。それにメルセデスも続き、あっという間に全チームがドライタイヤを装着しました。

 全車タイヤ交換を終えた後は、ファステストタイムの奪い合いが続きます。どうやらレコードラインは、十分スリックタイヤで走れる様子。

 「どのドライバーも、路面の感触を掴んだのかな」と思った矢先、黒いマシンがグラベルに飛び出して壁に接触!「メルセデス?!ボッタスかな?」と見ると、なんと、それは絶対王者のハミルトンではないですか!

 最近では、ハミルトンのスピンする姿すら見たことがないのに、ましてやクラッシュなんて、いつぶりのことでしょう。「ハミルトンですら苦戦するこの路面で、何も起こらないわけがない……」と思った直後、今度はボッタスとラッセルが大クラッシュ!

 どうやらラッセルがボッタスに対してオーバーテイクを仕掛けたものの、濡れた路面に追いやられ、グリップを失ってスピンしたよう。マシンの回収とデブリ除去のために赤旗中断となりました。

 赤旗により、全車ピットロードに戻ると、角田選手は最下位から10位まで上がっていて、なんとポイント圏内に。

 大きなクラッシュにも巻き込まれず、順位を上げた角田選手を見て、「予選で学んだことを活かして、しっかり確実に走っているのだろうな」という印象を受けました。

 最下位スタートということを考えると、ポイントが獲得できる位置まで追い上げられたという点で、今回のGPでの役目はほぼ果たせたのではないでしょうか。だからこそ、まさかこれ以上の無茶をするとは、全く予想していませんでした。そう、赤旗明けにまだ波乱が待っていたのです……。

■もったいない! 無謀なオーバーテイクであえなくスピン

若さ故の無謀なチャレンジが今回は裏目に出たが、12位完走は評価してもよいのではないだろうか

 通常、赤旗後は、一度仕切り直してスタンディングスタートになりますが、今回はトラックコンディションのためか、SC先導によるローリングスタートとなりました。

 そのフォーメーションラップ中、アルファロメオのキミ・ライコネンが、スリップしてコースオフ。その後ろにいた角田は、自動的に9位に繰り上がりました。さらには、トップを走るフェルスタッペンまで姿勢を崩してスピン。

 マックスは、素早くコースに復帰したので、なんとかトップに戻れましたが、歴戦の猛者が簡単にスピンしてしまう状況を見ると、慎重にリスタートしなければいけないことは明白。タイヤは冷えていますし、さらに路面温度は18℃。雨が残っている場所に踏み入れれば、ほとんど氷の上を走っているの同じです。

 ところが、レースがリスタートした1ラップ目。角田選手は、なんと目の前にいたハミルトンに対して、いきなりオーバーテイクを仕掛けたのです!角田選手は、レコードライン外の濡れた路面に踏み入れ、途端にグリップを失い、スピン。そのままグラベルへ……。一気に15位まで順位を落としてしまいました。

 「ルーキーなのにハミルトンにチャレンジするとはすごい!」と褒めたいところですが、状況を見れば、やはり無謀なオーバーテイクだったと言わざるを得ません。

 その後、角田選手は、順位を取り戻そうと必死になって追い上げるも、イモラの厳しいトラックリミットによって、ペナルティも取られてしまいました。結局、角田選手は12位でレース終了。若さゆえの焦りとミス。それが重なってしまったのが、彼にとってのエミリア・ロマーニャGPだったと思います。

■フェルスタッペンが優勝! ホンダ有終の美に一歩近付く

レッドブルのフェルスタッペンが優勝し、ホンダ有終の美に一歩近付いた。ホンダPUと角田選手の次回のレースに期待したい

 しかし、日本のファンにとってみれば嬉しいニュースも。レッドブルのフェルスタッペンがトップを守り切り、優勝を飾ったのです! 角田選手の活躍ももちろんですが、ファンの一番の願いは、ホンダラストイヤーにホンダPUがチャンピオンを取ること。それに一歩近づいたことがとても嬉しかったです。

 角田選手にとっては失敗続きのグランプリで、期待外れだと思った人もいるかもしれませんが、それはまだ時期尚早です!

 彼自身も、シーズン前にこう言っていました。「レース前半戦は、様々なチャレンジをしようと思うので、失敗もたくさんするかもしれない。でも、それをしっかり活かして後半戦は追い上げたい」と。

 角田選手は、様々な経験を積み上げている途中です。ましてや、今回は絶対王者ハミルトンさえミスをするような状況。レースで生き残れただけでも、まずは御の字だと思います。次戦では、この経験を活かしてさらにひと回り成長した角田選手の活躍に期待しましょう!

【画像ギャラリー】戦いはまだ始まったばかりだ!! 角田裕毅選手試練のエミリア・ロマーニャGP

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