「運転技能検査」(実車試験)が、いよいよ2022年5月13日から開始される。
検査は免許更新を希望する75歳以上の高齢ドライバーかつ、起点日(免許有効期限の直近の誕生日から160日前)から過去3年間に信号無視や速度違反、横断歩道での歩行者妨害などの違反歴がある場合、受検しなければならない。
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受検場所は教習所や運転免許センターだ。検査は免許有効期限の6カ月前から何回でも受検が可能で、実際にクルマを運転し、運転技能をチェックする。合格すれば認知機能検査や高齢者講習を経て免許更新が可能になる。
また、自動ブレーキなどの安全装置を備えるサポカーの限定免許制度も、今年5月13日に開始する予定だ。申請があれば、免許はその日のうちに交付される。ただ、限定免許でサポカー以外のクルマを運転した場合は違反点数2点が加算されるので、要注意ということになるのだが……。
文/諸星陽一
写真/AdobeStock、トビラ画像:viaduct_k@AdobeStock
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■高齢者の免許更新が厳格化されたのは1998年から
毎日のように高齢者が関係する交通事故のニュースが聞こえてくる今日この頃。交通事故を防止するためのクルマの機能は日々進化を続けているが、免許制度でも事故を防止するためのさまざまな方策がとられるようになってきている。
高齢者の免許更新が厳しくなったのは1998年から。それ以前は、何歳であろうと視力などの運転適性検査に合格し、更新のための講習を受講すれば継続してクルマを運転することができた。
1998年に改正された法律では70歳以上の人が免許更新を行う場合には座学、運転適性検査、運転講習などがセットになった高齢者講習の受講が義務づけられた。2017年には改正され75歳以上の人は認知機能検査が強化される。
しかし、警察庁の資料によると、平成21年以降、高齢者が第一当事者となる死亡事故は微減、もしくは横ばいといった様相である。そうした背景もあり、2020年6月に道路交通法が改正され、高齢者に対する免許制度も改正された。この改正道路交通法は2年以内に施行となっているので、2022年6月までには施行されることになる。
■高齢交通違反者の免許更新がより厳しく
今回の改正ではついに「運転技能検査」という名の運転そのものを判断する検査が盛り込まれた。この「運転技能検査」はすべての高齢者が対象ではない。対象となる高齢者は免許更新通知が届いた時点から過去3年間に一定の交通違反歴のある75歳以上の免許保有者となっている。この対象者でない免許保有者は従来どおりの手順で免許の更新が可能だ。
一定の違反とは次のものとなる予定。
・通行区分違反
・携帯電話使用等
・交差点右左折方法違反等
・安全運転義務違反
・信号無視
・交差点安全進行義務違反等
・速度超過
・通行帯違反等
・横断歩行者等妨害
・横断等禁止違反
・踏切不停止等・遮断踏切立入り
■運転技能検査とは
運転技能検査は免許有効期限の6カ月前から受けることができる。この間に何度受けてもよく、合格すれば、通常の75歳以上の運転免許保有者と同じ手順に進むことができる。
運転技能検査が対象となるのは普通免許のみだ。もし運転技能検査で不合格となっても、希望者に対して原動機自転車や小型特殊の免許を残すことが可能だ (Monet@AdobeStock)
運転技能検査の内容は次のものとなる予定。〈 〉内は、できなかった場合の減点数で、一種免許の場合は-30点まで、二種免許も場合は-20点までが合格ライン。これを超えると不合格となる。
・指定速度による走行(速度指定区間を、指示速度よりおおむね10km/h以上遅い又は速い速度で走行した場合)〈-10〉
・一時不停止・大(道路標識による一時停止の指定場所で、車体の一部が停止線を越えるまでに停止せず、かつ、車体の一部が交差点に入るまでに停止しない場合)〈-20〉
・一時不停止・小(道路標識による一時停止の指定場所で、車体の一部が停止線を越えるまでに停止しなかったものの、車体の一部が交差点に入るまでには停止した場合)〈-10〉
・右側通行・大(車体の全部が道路の中央線から右の部分にはみ出して通行した場合(道路交通法第17条第5項各号に該当する場合を除く。))〈-20〉
・右側通行・小(車体の一部が道路の中央線から右の部分にはみ出して通行した場合(車体の全部がはみ出した場合を除く。道路交通法第17条第5項各号に該当する場合を除く。))〈-10〉
・脱輪(縁石に車輪を乗り上げ又はコースから車輪が逸脱した場合)〈-20〉
・信号無視・大(赤色信号が表示されているときに、車体の一部が停止線を越えるまでに停止せず、かつ、車体の一部が横断歩道に入るまでに停止しない場合)〈-35〉
・信号無視・小(赤色信号が表示されているときに、車体の一部が停止線を越えるまでに停止しなかったものの、車体の一部が横断歩道に入るまでには停止した場合)〈-10〉
・段差乗り上げ不適(タイヤの中心が段差の端からおおむね1mを超えるまでに停止しなかった場合)〈-20〉
・補助ブレーキ等(行中危険を回避するため、検査員がハンドル、ブレーキその他の操作を補助し、又は是正措置を指示した場合(上記確認項目のいずれにも該当しない場合に限る。))〈-20〉
運転技能検査は自動車教習所および運転免許試験場で行われるという。補助ブレーキ等の項目が含まれていることから、検査に使われるクルマは教習車や試験車で使われる5ナンバーのセダンとなるパターンがほとんどとなるはず。
普段から5ナンバーや3ナンバーのセダンに乗っている人は、わりと楽に検査を受けられる可能性があるが、普段乗っているクルマが軽自動車などの場合は取り回しに苦慮する可能性もあるだろう。
また、ミニバンに乗っている人や、各種のセンサーが付いているクルマに乗っている人も判断が難しくなる可能性はある。リアルワールドの狭い道で縁石に乗り上げるような状況は縁石だけがあるような状況ではなく、塀やフェンス、ガードレールなども存在しているので、センサーが作動する。
また、縁石はドアミラーに映らないが塀やフェンス、ガードレールは映るので、勝手はずいぶん違うはずだ。また、運転技能検査が対象となるのは普通免許なので、運転技能検査で不合格となっても希望者には原動機自転車や小型特殊を残すことは可能だ。
■サポカー限定免許
この改正道路交通法では安全運転サポート車(サポカー)のみが運転できる限定免許の創設が予定されている。サポカー限定免許は、従来の運転免許保持者が申請することで免許の切り替えも可能にしている。
サポカー限定免許は免許の返納に躊躇している免許保有者に向けての制度としての役目が期待されている。対象となるサポカーも施行までに発表される。
2020年11月以降の新車から搭載が義務付けられた運転支援装置を備えたクルマが「サポカー」となるという。ただし、自動ブレーキ装置などを後付けしたものは対象外 (freehand@AdobeStock)
今回の運転技能検査やサポカー限定免許のように、安全を確保したうえでクルマを運転し続けるようになることは歓迎だ。本当に運転ができない人であれば免許を与えないのは当たり前だが、高齢者になったからといっても一律で免許を取り上げるのはおかしなこと。
高齢者の運転リスクが大きいことは否定しないが、高齢者でなくても運転適性のないドライバーはいる。運転を続けることが健康に寄与することもあるのだから、むやみやたらに免許剥奪を行うのは方向性が違うだろう。
大切なのはクルマが安全に走ること。すべての人がクルマの運転をやめれば、クルマに関連する交通事故はなくなるだろうが、それは正しい社会ではないと私は思う。
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