全編iPhone 16 Proで撮影した短編映画『ラストシーン』が発表された。監督をつとめたのは日本が世界に誇る映画監督、是枝裕和。スマホで映画を撮る時代はやってくるのか?
アクションモードは衝撃的だった
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わずか20数分のなかで、人間のおかしみや人生のせつなさを感じさせる短編映画『ラストシーン』。この是枝裕和”最新作”でストーリーと同じくらい印象的だったのは、その映像の美しさだった。観る前に聞いていなければ、この作品がiPhone 16 Proだけで撮影されたということに気づかなかっただろう。是枝は、このチャレンジングなオファーが届いたとき、ひとりのカメラマンが頭に浮かんだのだという。
「瀧本幹也さんとやってみたいと思いました。瀧本さんはカメラとかフィルムの知識が豊富で、新しいことにチャレンジすることを面白がるカメラマン。だから瀧本さんに決まった時点で、僕は普段通りに演出するだけでいいなと思いました。ただせっかくだからiPhoneの機能を活かした映像も撮りたいと思い、脚本を書く段階でそういうシーンを意図的に入れました」
『ラストシーン』で使われたiPhone 16 Proの機能は、被写体をくっきりと映しながら前景と背景を美しく、自然にぼかす被写界深度エフェクトが適用される「シネマティックモード」や、最大240fpsの1080pと最大120fpsの4Kドルビービジョンに対応し滑らかなスローモーションビデオを撮影する「スローモーション」、手ぶれ補正が強化され、走りながら撮影しても被写体を滑らかに撮影できる「アクションモード」など。なかでも是枝監督が驚いたのは、アクションモードで撮影した主人公とヒロインがふたりで走るシーンだったという。
「これまでなら、同じようなシーンの撮影には専門的な機材やスタッフが必要だったし、何度もテストをしなければならなかった。でも今回は、俳優が走るのにあわせてiPhone 16 Proを持ったカメラマンが一緒に走るだけ。でもそうやって撮った映像を見たら、まったく問題ないというか、思っていた以上の仕上がり。あれは衝撃的でしたね。だってサポートスタッフもいらず、カメラマンひとりで撮れちゃうんですから。瀧本さんも『おおっ!』と声をあげて驚いていました」
不便さと便利さの両方を視野に普段の作品では、フィルムにこだわる是枝監督だが、今回の『ラストシーン』撮影を通してiPhoneの大きな可能性を感じたという。
「iPhoneだけで劇場公開用の作品を撮れるという時代は、もうすぐそこまできていると思いました。映像のクオリティの問題だけでなく、iPhoneで撮影することでこれまで不可能だったこともどんどん可能になるという利点もある。今回の作品に観覧車のシーンがあるんですが、以前『ベイビー・ブローカー』という作品で観覧車を使ったときは、スペースの問題で僕が観覧車に乗れなかったんです。観覧車を止めた状態でリハーサルをやって、そのあとは1回転するまで下から見ているしかなかった。でも今回は機材がほぼiPhoneだけなので、僕も同じゴンドラに乗って細かく演出できた。それはすごくありがたかったですね」
あえて弱点をあげるとすると……。
「今回撮影前には、音声は難しいだろうなと思っていたんです。でもiPhone 16 Proには再生時、セリフだけを際立たせることもできる機能もあることを知りました。あえて改良点をあげるとするならば、フォーカス送りですかね。フォーカスを送るスピード、テンポはそれ自体が演出のようなところがあって、均等に送ればいいというものでもなく、すごく人間的なセンスが求められるんです。そこはまだテクノロジーが追いつかないところかもしれない……でもすぐにそれもできるようになるんでしょうね(笑)」
ほどんどの映画がデジタル撮影になるなか、是枝監督がフィルムにこだわる理由は、その”不便さ”にあるという。
「フィルムのカメラは大きくて重いし、フィルムチェンジや照明のセッティングにも時間がかかる。でもその重いカメラを動かして、ここで撮るぞと決めるから覚悟ができる。レンズもこれにしようと決めたら、簡単には変えない。そういうひとつひとつの決断と覚悟、そこから生まれる一回性みたいなものに、神聖といったら大げさだけど、そういうものが潜んでいるような気がしているんです。合理性を追求し、すべてが軽やかになり、デジタルの後処理でどうにでも加工できるようになると、それが失われていってしまうのかなと。でも実際、iPhone 16 Proで撮影してみて、これからの時代は、そういう不便さが持つ豊かさと、便利に簡易になったことによる新しい可能性の両方を視野に入れていかなきゃマズイと思いました」
今回は短編映画だったが、是枝監督が劇場公開作品でiPhoneを使う日は来るのだろうか?
「そういうオファーがあれば、つくることはできます。実際、この作品の試写を映画で使うのと同じサイズの試写室で行ったんですが、見劣りするというようなことはまったくありませんでした。これだけの性能、ポテンシャルがあることがわかったので、内容的にiPhone の撮影があっていると思えば、ためらいなく使うことになると思います」
是枝裕和1962年生まれ、東京都出身。1987年に大学卒業後、テレビマンユニオンに参加し、主にドキュメンタリー番組を演出。2014年に独立して「分福」を立ち上げた。初監督作品『幻の光』以降、各国で高い評価を受ける。18年『万引き家族』がカンヌ国際映画祭パルムドール受賞。19年日仏合作映画『真実』、22年韓国映画『ベイビー・ブローカー』と国際的にも活躍。23年映画『怪物』(23年)は、第76回カンヌ国際映画祭にて脚本賞(坂元裕二)、クィア・パルム賞を受賞した。
文・川上康介 編集・岩田桂視(GQ)
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