現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > ’21ホンダGB350試乗インプレ by 丸山浩【雑味のないパルス感&レトロだがすべて計算通り】

ここから本文です

’21ホンダGB350試乗インプレ by 丸山浩【雑味のないパルス感&レトロだがすべて計算通り】

掲載 更新 2
’21ホンダGB350試乗インプレ by 丸山浩【雑味のないパルス感&レトロだがすべて計算通り】



――

爆売れホンダGB350! モダン仕様のGB350Sも7月発売スタンバイ【すべてがスポーティー仕立て】

―― 【テスター:丸山 浩】長年にわたり『ヤングマシン』誌のメインテスターを担当。全日本などで活躍してきたレーサーとしても知られているが、実は2輪旅の経験も豊富だ。

古めかしい振動はなく、あるのは楽しい鼓動感のみ

「これまで人気があった他社のさまざまなレトロ系モデルを徹底的に研究し既存のライダーに愛されてきた理由を探る一方で、これからバイクに乗る若い人たちにとって『それも味だよ』なんて曖昧な言葉では見過ごせないネガティブ要素を徹底的に排除した…という感じ。つまり、レトロだけど古臭いわけじゃない!」

これが今回GB350をライディングしてみてまず思ったことだ。

車格については、単気筒348ccということを考えれば意外に大きく、600ccクラスやちょっと前のナナハンクラスの雰囲気。堂々としたルックスだ。

その分だけシートもちょっぴり高めで(シート高800mm)、またがったときに前後サスペンションの沈み込みが少ないことやサイドカバーが内腿に当たることなどから、足着きが決して良いわけではないのだが、それでも身長168cmで両足の母趾球までは十分に接地するから、悪いというレベルではない。

ライディングポジションは、ハンドルグリップ位置がかなり手前にある印象。結果的に上半身は直立不動に近い姿勢となる。

このマシンの”キモ”となるのは、もちろん新開発された空冷単気筒エンジンだ。シリンダーが直立した、いわゆるバーチカルシングル。この形式は、それこそ古くから受け継がれ続けてきたものだが、GB350のエンジンはレトロだけどイマドキでもある。

たとえば、発進の瞬間にまず感じられるクラッチレバー操作荷重の軽さ。アシストスリッパークラッチのおかげで、非力な女性でもきっと扱いやすい。ちなみに、ギヤも軽いタッチで入る。

超ロングストロークのエンジンは、いわゆるパルス感あるいは鼓動感がとにかく気持ちいい。でも、昔のバイクみたいに振動があるわけじゃない。低回転域からスロットルを開けていくと、「スタタタタ……」とか「パンパンパン……」という、雑味がなく歯切れのよいパルスがライダーを包み込む。ひとつずつの爆発(正しくは燃焼)を、肌で感じられるエンジンだ。

タコメーター非装備のため何回転という表現はできないが、なるべく高いギヤで低い回転から多めにスロットルを開ける方が楽しめる。速度域では40~60km/hがとくにオススメ。それも、一定速度で流しているときよりも加減速の生じる時の方が、さまざまな質のパルスを楽しめて心地良い。

最高出力は20psとはいえ、高速道路では100km/h巡航も十分にこなす。とはいえ、やっぱりそれよりもはるかに快感なのは60km/h以下。一般道だけを走りつなぎ、のんびりペースで旅をする。そんな使い方がもっとも適したエンジンだし、それによってバイクに乗る楽しさの本質に触れることもできる。この長所は、これからバイクに乗る若い人たちにとっても大きなプラスとなるだろう。まったくトバさなくても、スロットルを開け閉めする気持ち良さが得られる。そういう魅力があるエンジンだ。

―― エンジンのシリンダーと同じく、ライダーの上半身も直立。走行風を多く浴びるので高速道路はちょいツラいが、低中速域では気持ちいい!

安定感あるハンドリングが、旅やタンデムに効く!

続いてコーナリングだが、こちらはベタッと車体が寝るイメージ。フロント19インチタイヤの特性から、バンクした瞬間に前輪がクイックに向きを変えるような旋回力を生むという感覚はない。バンクするところまでは比較的早いが、それが旋回につながるまでにワンテンポある。ただしコレ、だから悪いというわけではない!

ツーリング先で出会ったワインディングで、右へ左へとゆったり車体を寝かせながら走るのは、これまた心地いい。そして、ベタッと寝たところでも車体は安定していて、前輪がセルフステアでイン側に切れてくることもないので、コーナリング中にギャップを通貨した場合でも安心感がある。

ちなみにこのコーナリング特性には、大径の前輪だけでなく120mmという多めのトレール量や1440mmに設定されたロングホイールベースも効いているのだが、おかげでGB350は直進安定性がすこぶる良い。停車状態からちょっと進んだ瞬間に、ふらつくことなくすぐにフロントタイヤが直進方向へ。この安定感が、ロングツーリング時には疲労軽減、初心者にとっては大きな安心感につながるはずだ。

そのぶんUターン時のクイックさはちょっぴり欠けるが、この時も最初に車体がクッと寝て、その先で安定して車体が向きを変える。

このバイクのベースとなったハイネスCB350が製造販売されているインドでは(国内仕様のGB350は熊本製作所で最終組み立て)、ダートを走る機会も多いはず。日本では、このバイクで未舗装路を走ることはまずないだろうが、もしもそういうシーンに遭遇しても、安定感の高さはプラスとして寄与する。ただし、前後サスはややハードにセットされている。

ちなみに、タンデムライディングもなかなか快適。標準装備のグラブバーはタンデムシートに座った時に掴みやすい。どうせなら前後が完全にフラットなシート形状でも似合ったのではないかと思うが、とはいえ前後シートの段差は低く、ライダーとパッセンジャーの距離が適度で、後席に座ったときの不安はない。ライダー側からすると、後ろに人を乗せた場合でもハンドリングに安定感があり、結果的に疲れにくいというのが嬉しい!

―― リーンは比較的早いが、そこから旋回力が生まれるまでは少し間がある。ハンドリングがクイックすぎないので、ワインディングをゆったり駆けるのにちょうどいい。寝ていても安定感がある。

車体はあくまでもシンプル。主役はエンジンのパルス感

何度も触れるが、GB350の主役は雑味のないパルス感が堪能できるエンジン。まぁそのエンジンもそうなのだが、車体自体も極めてシンプルな構成だ。

とはいえ、現代のバイクとして必要な性能と機能は省くことなく盛り込まれていて、昔のバイクなんて知らない若い人たちが乗っても、「なんだコレ??」なんてことにはまずならない。

たとえば、前後ブレーキはディスク式で十分なストッピングパワー。もちろんABSも付いている。メーターのギヤポジションインジケーターなんていうのも、現代のバイクに慣れ親しんだ世代にとっては必需品だろう。

一方で、驚きのレトロ装備もある。それは、シーソー式のチェンジペダル。クルーザーやビジネスバイクではないオンロード車にこれが使われることは珍しいが、慣れるとこれもなかなかいい。シフトアップ時に、ペダルを足の甲で持ち上げるのではなくカカトで踏む操作も可能なので、ブーツやシューズの甲部が汚れたりキズついたりしない。ライディング用ではないフットウエアでも気兼ねなく乗れることで、より日常的にバイクを活用できそうだ。

我々の年代からすると、GB350というのは昔からあるパッケージのモデル。何度も繰り返してきた歴史という風に見ることもできるのだけれど、一方で現代の技術を導入しながらホンダがつくったシングルスポーツの最新形態と考えることもできる。ベテランが乗っても楽しめる要素は多い。

しかしそれよりも、若い世代がこのGB350を見て、実際に乗って、バイクのカッコ良さや楽しさを知ってくれることのほうが本当は大事。抑えられた価格設定やU39割など、そのための仕掛けも抜かりない。

旅から日常の足まで、ソロでもタンデムでも幅広い方向で楽しめて、カスタムベースにも良さそう。シンプルだけど”単車”としての魅力が詰まっている。GB350をきっかけに新たなバイク乗りが多く誕生して、長くバイクを楽しんでくれることを熱望する!!

―― 【トラクションコントロールもしっかり作動】オン/オフのみのシンプルな切り替えモード設定ながら、ホンダセレクタブルトルクコントロールの制御も意外に秀逸。ダートでも、後輪の空転を抑制しながらちゃんと車体を前に進める。また、ABSの制御も信頼性高し! [写真タップで拡大]

※本記事の内容はオリジナルサイト公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

関連タグ

こんな記事も読まれています

テスラ「モデル3」 最高速262キロ!専用デザインの新グレード「パフォーマンス」追加
テスラ「モデル3」 最高速262キロ!専用デザインの新グレード「パフォーマンス」追加
グーネット
ヒョンデ、高性能EV「IONIC 5 N」の国内仕様車の概要を発表 4月25日から期間限定モデル「First Edition」の購入予約受付を開始
ヒョンデ、高性能EV「IONIC 5 N」の国内仕様車の概要を発表 4月25日から期間限定モデル「First Edition」の購入予約受付を開始
月刊自家用車WEB
「サーキット以外の場所でやることにも意味があったと思う」盛り上がりを見せた岩佐歩夢発案のSFキャラバンが成功裏に終了
「サーキット以外の場所でやることにも意味があったと思う」盛り上がりを見せた岩佐歩夢発案のSFキャラバンが成功裏に終了
AUTOSPORT web
新型スイフトスポーツも新型ワゴンRも24年夏に登場予定か!? スズキは計5台の新型を投入で戦力アップなるか
新型スイフトスポーツも新型ワゴンRも24年夏に登場予定か!? スズキは計5台の新型を投入で戦力アップなるか
ベストカーWeb
「SLS AMG」の偉大さをメカニズムから検証。速さだけでないメルセデスの安全思想も注ぎ込まれた最高傑作の1台でした
「SLS AMG」の偉大さをメカニズムから検証。速さだけでないメルセデスの安全思想も注ぎ込まれた最高傑作の1台でした
Auto Messe Web
スーパーカーオーナーさん、いらっしゃい──新型ヒョンデ アイオニック5 N試乗記
スーパーカーオーナーさん、いらっしゃい──新型ヒョンデ アイオニック5 N試乗記
GQ JAPAN
愛犬家は要チェック!?ルノー「カングー」最長1年間貸与!モニターキャンペーン実施
愛犬家は要チェック!?ルノー「カングー」最長1年間貸与!モニターキャンペーン実施
グーネット
軽からミニバンまで!車中泊にぴったりの厚さ8cmマット、新デザイン登場 ベアーズロック
軽からミニバンまで!車中泊にぴったりの厚さ8cmマット、新デザイン登場 ベアーズロック
グーネット
BMW 燃料電池車「iX5 ハイドロジェン」 日本での実証実験を2024年も継続
BMW 燃料電池車「iX5 ハイドロジェン」 日本での実証実験を2024年も継続
グーネット
【24’ 4/22最新】レギュラーガソリン平均価格、再び175.0円に値上がり
【24’ 4/22最新】レギュラーガソリン平均価格、再び175.0円に値上がり
グーネット
代役スピネッリ、SBK初陣でギャンブル大成功「これがレース!信じられないような勝利で嬉しい」/第3戦オランダ
代役スピネッリ、SBK初陣でギャンブル大成功「これがレース!信じられないような勝利で嬉しい」/第3戦オランダ
AUTOSPORT web
「盗まれた」県が怒りの声明 県道の工事現場から“かなり重い資材”が複数 被害総額300万円超
「盗まれた」県が怒りの声明 県道の工事現場から“かなり重い資材”が複数 被害総額300万円超
乗りものニュース
さよなら「ゾエ」! ルノーのEV先駆者を振り返る 後継は「5」 楽しい走りで電費は優秀
さよなら「ゾエ」! ルノーのEV先駆者を振り返る 後継は「5」 楽しい走りで電費は優秀
AUTOCAR JAPAN
「911ターボ」登場から50年! 「911ダカール」と「タイカンGTS」と並んでポルシェの過去・現在・未来を表現したブースがおしゃれ
「911ターボ」登場から50年! 「911ダカール」と「タイカンGTS」と並んでポルシェの過去・現在・未来を表現したブースがおしゃれ
Auto Messe Web
王者ミケリスが貫禄のポール・トゥ・ウイン。新たな僚友ジロラミも初勝利/TCRワールドツアー開幕戦
王者ミケリスが貫禄のポール・トゥ・ウイン。新たな僚友ジロラミも初勝利/TCRワールドツアー開幕戦
AUTOSPORT web
羽付き9X8のデビュー戦9位は「最大限の結果」とプジョー技術ボス。1周目の事故で損傷の94号車も完走
羽付き9X8のデビュー戦9位は「最大限の結果」とプジョー技術ボス。1周目の事故で損傷の94号車も完走
AUTOSPORT web
もはやガソリン車より便利に…? 高速道の「EV充電器」怒涛の増設! 魔の空白区間?―“出ていいよ”
もはやガソリン車より便利に…? 高速道の「EV充電器」怒涛の増設! 魔の空白区間?―“出ていいよ”
乗りものニュース
全長5.7m級の「斬新トラック」実車公開! ド迫力“カクカク”デザイン×「全面ステンレス」ボディ採用! 「サイバートラック」を披露
全長5.7m級の「斬新トラック」実車公開! ド迫力“カクカク”デザイン×「全面ステンレス」ボディ採用! 「サイバートラック」を披露
くるまのニュース

みんなのコメント

2件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村