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「自転車月間」って本当に意味あるの? 毎年5月に開催も「事故7.2万件」、“青切符”では届かない教育不在の現実

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「自転車月間」って本当に意味あるの? 毎年5月に開催も「事故7.2万件」、“青切符”では届かない教育不在の現実

安全活用を推進する自転車月間

 自転車活用の推進を目的とした「自転車月間」が毎年5月1日から31日まで実施されている。これは自転車活用推進法に基づく制度上の基本方針に則った啓発活動の期間だ。

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 2025年は明治神宮外苑周辺で「サイクルドリームフェスタ2025」が開催された。また、自転車ロードレース大会「Tour of Japan 2025」も同時期のイベントとして行われている。サイクルドリームフェスタではステージイベントのほか、自転車メンテナンス講座やBMXパフォーマンスショーも実施された。

 これらの取り組みを通じて、自転車の交通ルールやマナーを守る人が増えることが期待されている。しかし、近年は自転車の危険運転が目立つのも事実だ。こうした状況を受けて、2024年11月には道路交通法が改正され、

・ながらスマホ
・酒気帯び運転

など自転車運転に関するルールの罰則が厳しくなった。さらに、2026年4月からは自転車の交通違反に対して反則金を科す「青切符」による取り締まりも始まる予定である。

 法改正による厳罰化は即効性が期待される。一方で、期間が短く緩やかに安全意識を促す自転車月間の有用性はどこまであるのか、疑問も残る。

子どもも学ぶ安全推進の現場

 結論からいえば、自転車月間は決して無意味ではない。多くのイベントが自転車の普及に加え、安全な利用に関する内容を含んでいるからだ。

 サイクルドリームフェスタでは、警視庁交通総務課と連携した自転車交通安全教室を実施している。子ども向けの乗り方教室や試乗コーナー、自転車安全シミュレーター体験も用意されている。楽しみながら安全を学べるカリキュラムが提供されているのだ。

 次に、警察庁が発表した「令和6年版警察白書」の「自転車関連事故件数の推移」を見てみよう。自転車関連事故は10年前と比べて大幅に減少した。しかし2023年は7万2339件と前年より2354件増加した。全交通事故に占める自転車事故の割合は23.5%に達し、10年前の19.0%から4.5ポイント増加している。この数字は自転車関連の安全対策が急務であることを示している。

 この状況を改善するために道路交通法は改正された。しかし、それだけで安全対策が万全になるわけではない。法律の内容を周知し、運転者に遵守を促すことが不可欠だ。地道な啓発活動として自転車月間の取り組みが必要である。

 さらに重要なのは、安全対策が自転車月間に限られていない点だ。年間を通じた多角的な施策も同時に進められている。

安全利用を促進するための活動

 警察庁は毎年春と秋に交通安全運動を実施している。期間中は国や地方公共団体が連携し、幅広い国民運動を展開している。2025年の春の全国交通安全運動では、自転車のヘルメット着用と交通ルールの遵守を重点に据えた。

 自転車の安全活用を推進するため、政府は自転車活用推進本部を設立した。さらに民間団体と連携するために、自転車活用推進官民連携協議会も立ち上げている。協議会に参加する各団体も自転車の交通マナーに関する広報活動を行っている。

 例えば全日本交通安全協会は滋賀県の小学校などで安全教育を実施している。シミュレーターを使い、自転車の走行方法や安全な乗り方を指導している。また、YouTubeチャンネルを開設し、自転車事故防止や安全利用の啓発活動にも取り組んでいる。先に触れたサイクルドリームフェスタも同協会の啓蒙活動の一環である。

 このように、自転車の安全利用に関する取り組みは年間を通じて行われている。それをさらに集中して行うのが自転車月間である。

安全に欠かせない教育を実施

 自転車の安全利用を促す自転車月間は重要な取り組みである。しかし、その効果が自転車運転者、とりわけ違反を繰り返す層に届かなければ意味をなさない。自動車とは異なり、免許制がない自転車ではなおさらだ。

 自動車運転には免許取得が必須であり、教習所で交通ルールを学ぶ必要がある。これに対し、自転車利用者にも同様の教育が必要である。しかし、自転車には自動車のような教育制度が存在しない。このため、自転車月間のような学びの場が極めて重要になる。

 道路交通法の改正は、違反への厳罰化だけでなく教育の強化も含んでいる。一定の違反を繰り返す自転車運転者には、自転車運転者講習の受講が義務付けられた。

 単純なルールの遵守は誰かに教われば済む話かもしれない。しかし、

「危険運転がどのような悲惨な事故に繋がるか」

を体験し、深い知識を得る機会は自転車月間などのイベントならではのメリットだ。

 自転車の安全利用促進の啓発活動は即効性に乏しく、意味がないと誤解されやすい。しかし、多くの人に安全利用を促すうえで不可欠な取り組みである。自転車月間もその一環として認知度を高め、参加イベントを増やせば、自転車事故件数の減少に繋がるだろう。(喜多崇由(フリーライター))

文:Merkmal 喜多崇由(フリーライター)

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みんなのコメント

10件
  • lan********
    7.2万件のうち、自転車乗りが何かしらの免許を持っているケースはどれくらいあるんだろうね?
    少なくともそいつらに関しては教育が問題ではない。

    また、成人していて教育が、など他責思考も甚だしい。
    自ら学べば済む話。

    教育のせいにできるのは子供だけ。

    最初から学ぶ気も守る気もないんだよ
  • mik********
    警察が仕事すれば済む話
    罰金払いたくないなら勉強しろ
    特に歩道での徐行義務くらい守れ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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