今季アルファタウリからF1デビューを果たしたニック・デ・フリーズだが、思うようなシーズンの幕開けとはなっていない。そのデ・フリーズについて、レッドブルのドライバー人事を司るヘルムート・マルコは、「必要とあらば対応する」とシートから彼を下ろす選択肢を否定していない。
デ・フリーズは2019年にFIA F2チャンピオンに輝きながらもF1昇格を果たせず。フォーミュラEへと進んでメルセデスに加入し、2020-2021年シーズンには同シリーズで世界チャンピオンに輝いた。
■デ・フリーズ、アルファタウリF1シート喪失をめぐる憶測も「驚きはない。この業界はそういうもの」
フォーミュラEでメルセデス入りしたことにより、F1でメルセデスのリザーブドライバーを務めることになったデ・フリーズ。2022年にはメルセデス製パワーユニットを使うウイリアムズ、アストンマーチン、メルセデスでフリー走行に出走した。
同年のイタリアGPではアレクサンダー・アルボンの代役としてウイリアムズからF1デビュー(ちなみにこのグランプリのFP1では、アストンマーチンのマシンをドライブしている)。突然の参戦ながらも9位入賞を果たし、これがアルファタウリのF1シート獲得に繋がった。
28歳にしてF1フル参戦が叶った”オールドルーキー”のデ・フリーズ。その経験値から、今年3年目を迎えるチームメイトの角田裕毅を上回るパフォーマンスをすぐさま発揮してくるのではないかと、開幕前から大きな期待が寄せられていた。しかしここまでの5戦では、同じくルーキーのローガン・サージェント(ウイリアムズ)と並んで無得点となっている。
またアゼルバイジャンGPでは予選と決勝でクラッシュを喫し、スプリントでは角田と接触……マイアミGPではランド・ノリス(マクラーレン)に追突と、良い流れを掴めていない。モナコGPでデ・フリーズは角田を上回る12位。ただ、ウェットコンディションでブレーキ問題が悪化するまでは、角田が入賞圏内を走っていたことを考えると、慰め程度にしかならないのかもしれない。
マルコは第6戦エミリア・ロマーニャGPが中止となる前、次戦スペインGPをデ・フリーズの成長を見るひとつの区切りとしていた。
彼はmotorsport.comの姉妹メディアであるFormel1.deのYouTubeに登場した際、デ・フリーズがレッドブルの期待に応えられていないか、との質問に対して次のように答えた。
「仰る通り、デ・フリーズのパフォーマンスは我々が期待したモノではない」
「彼はユウキから平均して0.3秒遅れている。加えて、レースを追うにつれてクラッシュの回数が増えている」
「彼にカウントダウンも最後通告もしないが、我々は状況を見て、必要であればどんな形であれ対応するつもりだ」
「なお、放送のコメンテーターなどからの”エール”もあるが、決してそれに影響されることはない」
デ・フリーズの後任候補筆頭は……
デ・フリーズのシート喪失の噂は、5月はじめにレッドブル・レーシングのサードドライバーであるダニエル・リカルドがアルファタウリでシート合わせをしたことで加速。デ・フリーズの後任候補として、リカルドの名前が挙げられるようになった。
しかしマルコは、リカルドの目標は「トップチームに戻ること」であり、「アルファタウリは彼の選択肢にはない」と明言。ルノーやマクラーレンで鈍ったリカルドの鋭さを、中団グループのアルファタウリでは引き出せないとしている。
一方でマルコはF1-insider.comに対して、現在スーパーフォーミュラ参戦中でレッドブルのリザーブドライバーであるリアム・ローソンと、FIA F2参戦中の岩佐歩夢のふたりをデ・フリースの後任候補に挙げた。
レーシングドライバーがF1に参戦するためには、スーパーライセンスを取得しなくてはならない。そして、その発給要件のひとつとして、直近3年間で順位に応じて与えられる”スーパーライセンスポイント”を合計40点以上獲得する必要がある。
岩佐は現時点で32ポイントとスーパーライセンス発給のための要件を満たしておらず、2024年に向けて2020年に稼いだポイントが失効することで、今年はF2でランキング5位以上に入る必要がある。
岩佐のF1参戦に必要なスーパーライセンス取得について尋ねられたマルコは次のように語っている。
「彼は(スーパーライセンスを)今のところ持っていない」
「でも、現時点で彼はランキング3番手だ。年内に必要なポイント数を稼ぐには充分なポジションだ」
一方で、もうひとりの候補であるローソンは、2022年にF2でランキング3位に入り、現時点でスーパーライセンス発行に充分な46ポイントを既に手にしている。
そのため、シーズン中にデ・フリーズと入れ替わる形でアルファタウリからF1デビューを果たすことも可能。ただ。日本で武者修行を行なうローソンはまず、スーパーフォーミュラでチャンピオンを獲ることに集中している。
昨年のチャンピオンチームであるTEAM MUGENから参戦するローソンは、マルコをはじめレッドブル上層部を納得させるかのように開幕戦富士でデビューウィンを果たすと、第4戦オートポリスでも勝利を挙げ、ドライバーズランキングトップに立った。
オートポリスでのレース後、ローソンは将来的なF1参戦へ向けて次のように語っていた。
「今年はチャンピオンを目指して戦い、1年を終えたいと思っている。それが、来年最高のチャンスをもたらしてくれるはずだ」
「F1で何が起きているか……それは僕が何かできるようなことじゃない。今回は勝つことができて嬉しいよ」
マルコもオートポリスでの戦いぶりを「印象的だった」と高く評価し、次のように続けた。
「彼はあのサーキットが初めてだった」
「簡単じゃなかったが、予選で2番手。レースではスタートこそ完璧とはいかなかったが、後はとても巧みで、戦略的にも上手くいっていた」
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