レスオプションやオリジナルのドレスアップを施した特別仕様車も
新車の販売促進のカツ入れをおもな目的として投入されるのが特別仕様車。たとえば、1987年にデビューした6代目トヨタ カローラセダンでは、マイナーチェンジ後の後期モデルに中間グレードのXEをベースに、XEには標準装備されないタコメーター、ウレタン製3本スポークステアリング、パワーウインドウを特別装備し、さらに専用シート&樹脂ホイールキャップや“LIMITED”バッジを装着した特別仕様車“XEリミテッド”が設定され、これがよく売れた。
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また同型車では、上級グレードのSEリミテッドベースに、オートエアコン、オートリバース機能付き4スピーカーカセットオーディオ、ブロンズティンテッドガラス、バニティミラー付き助手席サンバイザー、車速感応型ドアキー連動電磁ドアロック、カラードドアハンドル&サイドプロテクションモール、フルカラードバンパーなどを特別装備した“SEスーパーリミテッド”も設定されていた。
※写真は標準の6代目トヨタ・カローラ
カローラに限らず、紹介した特別仕様車が設定されていた頃は、タコメーターレスグレードにタコメーターを特別装備した特別仕様車などが目立っていたが、メーカーの生産工場で装着しないと特別装備できないので、これらは“メーカー製特別仕様車”とも呼ばれた。モデルレンジも中盤ぐらいになり、販売にカツ入れするために設定したり、モデル末期に差し掛かり、最後の売り込みを行うタイミングで設定されていた。アメリカでは、モデル末期に“ファイナルエディション”として、日本での特別仕様車に相当するものがよく設定されている。
その一方で、ディーラーオプション扱いだった、エアコンやオーディオとちょっとしたアクセントストライプを、ディーラーでカタロググレードに割安で装着して(割安ではないこともあったが)、洒落た名前をつけた“ディーラー製特別仕様車”も多く設定されていた。エアコンとオーディオそしてパワーウインドウが標準装備されているだけでも、かなり特別感を強く感じる時代だったので、どのメーカーでも特別仕様車が稼ぎ頭となっていた。
しかし、その後軽自動車でもオートエアコン、オーディオ、パワーウインドウの標準装備が当たり前となると、“特別感”がなかなか強調できなくなってきた。さらに、90年代後半あたりになると、カーナビなどの普及もあり、“自分の好みのカーナビやオーディオを装着したい”という多様性のあるニーズが強まり、“オーディオレス”を特別仕様としてくる特別仕様車も登場してきた。
そして、このころになると目立ってきたのが、ディーラーオリジナルのドレスアップ系特別仕様車である。
これは、バブルのころは単にクルマがよく売れただけでなく、まだまだエアコンやオーディオを標準装備するクルマが少なかったのだが、これらを装備して購入するのが当たり前となり、ディーラーオプションとしてこれらは装着されるので、ディーラーは物販でもおおいに潤っていた。
しかし、だんだん生産工場での標準装備化が進むなかで、単純に新車だけを販売していては儲けが少なくなり、そしてユーザーの間でも個性を競う傾向がより強まってきたので、オリジナルドレスアップモデルを設定するようになった。ポイントは、専門メーカーなどからパーツをまとまった台数分購入するので、パーツの定価よりははるかに安い価格でパーツを手配できるが、車両価格の上乗せでは定価ベースで、“これだけお得”とするので、単純に新車を販売するよりは結構な利益が期待できるというのがある。
下取り査定時ディーラーオリジナル車はベースグレード扱い
ミニバンでは、リヤエンタテインメントシステムも含めた、純正ではない汎用カーナビベースのシステムの販売促進を強化しているが、これも極端な例としては型落ち商品をかなり格安で仕入れて、そこそこの価格を上乗せして販売するといったケースもある。
とくにドレスアップパーツについては好みで選ぶものなので、自分の判断で割安と感じればもちろん購入しても構わないが、ディーラーオリジナル車は下取り査定時には、独立したモデルではなくベースグレードとして値付けされてしまうため、期待した査定額が提示されないケースも多いので注意してもらいたい。
メーカーが生産工場で前述したタコメーターのないベースグレードに、タコメーターをつけるなどの特別装備を装着した特別仕様車は、たとえばトヨタ車ならばベースグレードの型式番号の末尾に(A)などというものがつき、正式に独立したグレードとなっている。このようなケースでは、トヨタ以外のメーカー系ディーラーでも、型式指定番号や類別区分番号などで、“●●リミテッド”というグレードであると確認できるので、独立したグレードとして下取り査定が行われる。
ディーラーオリジナル車は、手間を省き、お気に入りのドレスアップ状態に割安で仕上がっていることが購入者の魅力となり、販売側としては新車に付加価値をつけて販売でき、利益アップにつながるものとなっているのである。
ただ、昨今では運輸支局のディーラーへの違法改造についての抜き打ち監査も目立つ。数ミリでもタイヤがフェンダーからはみ出していれば違法改造として指摘されるとのこと。さらにいまではメーカーがすでにGRやNISMOバージョンなどをラインアップしており、確実に合法的なモデルも多く存在するので、オリジナルドレスアップ車を用意するディーラーは限定的ともいえる。
しかし、実際に某輸入車ブランド系で、積極的に汎用ドレスアップパーツや、エンジンチューニングパーツなどの物販を行い、しっかり利益を上げているディーラーを取材したこともある。そこでは、エンジン内部のエアクリーナーなどについても、積極的にパワーアップにつながる汎用品に付け替えたり、シートについては、購入する人のかなりの割合でブランド品に替えるひとも多い。購入者の希望に合わせてカスタマイズするだけでなく、自社でカスタマイズモデルを積極的にラインアップし、販売を行っている。
こうなると、同じモデルを販売するほかのディーラーよりも付加価値が高いので、遠方からもクルマを買いに来る人がいたり、リピーターとなるお客や積極的に増車するお客も目立つ。表現は悪いが、やはりいまどきでも輸入車に積極的に興味のある人は、身分の安定した公務員や、所得に余裕のある人が多いので、“いかに財布から多くお金を引き出すか”ということからも、ドレスアップなどは有効なセールスツールなのである。そのため当然ながら台当たり利益もより高まることにもつながる。
また、アルファードを扱うあるディーラーでは、単に汎用ドレスアップパーツを装着するのではなく、専門のカスタマイズ業者とコラボレーションし、専用オリジナルペイントに塗り替え、ボンネットもオリジナル仕上げを行い、エアロパーツもオリジナルなものを開発して装着するなど本格的なところもある。ここまで特別感があれば、ディーラーオリジナルモデルとはいえ、リセールバリューも専門業者へ売却すれば十分期待できるものとなるだろう。
※写真は標準のトヨタ・アルファード
ただ正規ディーラーで販売する限りは、違法改造とならない範囲にとどめるのはマストとなるので、ディーラー経営陣の経営判断だけでなく、経験や知識の豊富なスタッフがいないと、難しいところもあるようだ。とくに、販売現場の最前線に立つセールスマンがしっかりしたエアロパーツなどの商品知識や、カスタマイズについて造詣が深くないと、このようなモデルの購入を検討しているひとの興味や知識量に追い付かず、愛想をつかされて商売に結び付かないという、実際の商売上の難しさというものもあるようだ。
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