高級ミニバンといえば日本車の独壇場だったが、近年中国勢が猛追している。その出来栄えがどれほどのものか気になったので、代表的なモデル2台に乗ってみた。はたしてアルヴェルやエルグランドに比べて、どこが劣り、どこが勝っていたのだろう!?
文:山本シンヤ/写真:山本シンヤ、BYD、東風汽車
アルヴェルにどこまで迫った? 乗り比べて分かった中国製ミニバンの意外なマルとバツ!!
【画像ギャラリー】おもてなし装備がすごい中国製ミニバンを見て!(14枚)
中国では高級ミニバンが増殖中!
今回試乗した2台。右がDENZA D9、左がVOYAHドリーマー
2年ぶりに訪れた中国・上海。緑ナンバー(BEV/PHEV)、青ナンバー(HEV/ICE)の比率は筆者の肌感覚で7:3といった感じ。この辺りはあまり変化がないが、一番の違いは高級ミニバンが増えたことだ。
これまでトヨタ・アルファード/ヴェルファイア(アルヴェル)、レクサスLMの独擅場だったカテゴリーだが、中国での需要が高まり様々なメーカーからフォロワーが登場。どれも日本未導入なのでその実力は未知数だが、今回訪中に合わせて2台の中国製ミニバンに乗る(後席のみだが)ことができたので報告したいと思う。
最初に乗ったのはBYDのハイエンドブランドDENZA(デンツァ)のミニバン「D9」。2023年のJMSに展示されていた“あの”モデルだ。エクステリアがアルヴェルに似ているのは事実だが、個人的にはスクエアではなくラウンドしたプロポーションはオデッセイの雰囲気もあるかも? フロントグリルはパワートレイン違いで2タイプ用意されるが、今回のモデルはPHEVなのでブロック形状だ。
デンツァD9はボディ剛性を高めた30系アルヴェル?
BYDが手がけるデンツァD9は全長5.2m級の大型ミニバン。PHEVとEVがあるが写真はEV仕様でフロントグリルが縦基調となる
インテリアはインパネからドアまで連続的なデザインで質感もなかなかのモノ。メーターとセンターディスプレイが独立しているのはBYDモデルのそれと同じで、中国車にしては意外とオーソドックスな印象だ。2列目はキャプテンシート仕様で、シートはやや小ぶりで体格の大きい人だとややタイトな印象。見た目はゴージャスだがクッション/シートバックがそれほど厚くないので、掛け心地は想像していたよりもやや硬めだった。
アームレストに装着されるスマホのようなコントローラーはアルヴェル以上の充実ぶりで、シートや空調、エンターテイメント、さらには冷蔵庫(センターコンソール後端に装着)のコントロールが可能。マッサージ機能はアルヴェルのそれよりも押す力が強いのは中国らしい感じだ。
パワートレインは1.5Lターボエンジンとモーター、バッテリーで構成されるPHEVだが、グレードが解らないのでバッテリー容量は不明。ただ、乗っている時に一度もエンジンは始動せず。フル乗車でも動力性能は十分で、中国のアグレッシブな走行環境(隙あらば居場所を見つけての信号ダッシュや車線変更など)にもシッカリ対応しているのが印象的だった。
プラットフォームはシール/シーライオン7にも使われる「eプラットフォーム3.0」を採用。後席で感じた乗り味は、ボディ剛性を高めたアルヴェル(30系)と言った感じ。
街中ではアタリが優しくふんわりした乗り心地で走りの質感も悪くないが、速度が上がるにつれてリアサスの追従性の悪さからクルマの動きがなかなか落ち着かず、常にドタバタしてしまうのが気になった。他のeプラットフォーム3.0採用モデルでも大なり小なり似たような動きが出るので、これは素性が関係しているのかもしれない。
VOYAHドリーマーはワイド&ロー感がエルグランド風
VOYAHドリーマーの全長は5.3m超。全幅も2m近いが全高が約1.8mと低く、ロー&ワイド感がある
続いて乗ったのは、Dongfeng(東風汽車)のハイエンドブランドVOYAH(ヴォヤー)のミニバン「ドリーマー」だ。エクステリアは他のミニバンと比べるとワイド&ロー感があるプロポーションで、日産エルグランドに雰囲気が似ているような。
インパネからドアまで連続的なデザインなのはD9と似ているが、メーター~センターディスプレイ~助手席ディスプレイがズラーっと並ぶ感じは中国車の真骨頂といった感じ。
ただ、素材の質感や精度に関してはちょっと粗さがあるかなと。2列目はキャプテンシート仕様で、シートスライドが手動など先進性はD9に劣るものの、シートは大きめかつクッション/シートバックも厚く、掛け心地はアルヴェルほどではないものの、エルグランドといい勝負をする感じだ。
シートにはコントローラーは内蔵されておらず、シート側面にシートヒーター/シート空調/マッサージ機能のスイッチのみ。各種コントロールはルーフに装着される収納式モニターで行なう。タッチパネルでわかりやすいが、座っていると手が届きにくく走行中の操作はなかなか難しい……。
総合力では日本車の完成度の高さに軍配
いずれアルヴェルを追い越すミニバンが中国でも誕生するだろうか?
パワートレインはEVとPHEVが選択可能だが、今回乗ったのは1.5Lターボエンジンとモーター、バッテリーで構成されるPHEV。こちらも乗っている時に一度もエンジンは始動しなかったが、動力性能はD9よりも確実に高く、フル乗車時でも加速の鋭さや余裕は後席でも解る。ただ、レスポンスが鋭すぎなのかアクセルコントロールは難しそうな感じ。
プラットフォームはESSA(エレクトリック・スマート・セキュア・アーキテクチャ)プラットフォームを採用とあるが、同社のセダン系と同じとのこと。後席で感じた乗り味は、ボディ剛性はD9よりも骨太な印象。全幅約2mを活かしたワイドトレッドとミニバンにしては低めの全高1.82mも相まって、コーナリング時の印象はアルヴェルというよりも日産エルグランドに似た雰囲気だ。
快適性は街中だと入力の吸収の仕方や足さばきは高級ミニバンとしては粗さが目立ったが、速度が上がるとその印象は薄れて逆にフラット感の高さが印象的だった。そういう意味ではやや高速寄りのセットアップなのかなと。よくいえばスポーティミニバンのような感じだが、見た目とのギャップがないといえば嘘になる。
そろそろ結論にいこう。どちらのモデルもいろいろいいたいことはあるが、素直に「なかなか、いいじゃない」と感じるインパクトや魅力を持っていることは理解できた。個々の性能や装備、価格の面では強みは間違いなくあるが、クルマとしての“総合力”ではアルヴェル、そしてレクサスLMの完成度の高さを改めて実感したのも事実だ。とはいえ、彼らのベンチマークになっているのは周知の事実。戦いは始まったばかりだが、今後の展開・進展にも注目である。
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みんなのコメント
脅威でしかない。
こんな車乗れねーよって言ってられるのも今の内かもしれないよ。
侮らない方がいい。
それ程中国車が進化して来ていると思われる。
中国は合弁と称し海外自動車メーカーの生産技術を入手、海外デザイナーも引き抜き成長し現在に至る。