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【ユーザー・メリット少ない】日産ノート 燃費スペシャルにご用心 不毛な「数値」競争、いつまで続く?

掲載 更新 40
【ユーザー・メリット少ない】日産ノート 燃費スペシャルにご用心 不毛な「数値」競争、いつまで続く?

燃費スペックに特化したスペシャルなグレード「F」

text:Kenichi Suzuki(鈴木ケンイチ)

【画像】どんなモデルがある?【ノート、キックスなど2020年発売の日産車】 全153枚

editor:Taro Ueno(上野太朗)

昨年(2020年)の暮れに日産の新型コンパクトカーであるノートの発売がスタートした。

ノートといえば、2017年から2019年にかけて3年連続で国内販売の暦年コンパクトカーでナンバー・ワンを記録するほどのベストセラーカーだ。日産としては、当然、販売にも大きな期待をかけているはず。そうした日産の気合の入りようは、そのグレード編成から見て取ることができる。

それが「F」というグレードの存在だ。ノートの基本となるFFモデルは「F」、「S」、「X」という3グレード編成になっており、後に追加された4WDモデルは「S FOUR」と「X FOUR」。つまり、「F」はFFグレードにしか存在しない。こうした場合、多いケースは「F」がエントリーという位置づけだ。

しかし、価格を見ると、最も安価なのは「S」の202万9500円。「F」は、それよりも高い205万4800円だ。

ちなみに、最も高いのが「X」となる。装備内容を見ると、最も内容が充実しているのが「X」で、「S」と「F」はほぼ同等で若干「F」が劣る。つまり、装備内容は「X」から「S」、そして「F」の順で低くなる。

つまり、「F」は装備が「貧弱」なのに、一番安いわけでもないという、不思議な設定になっている。

では、「F」は、いったい、何のためにあるのか? 

その答えは、「燃費スペック」にある。燃費性能を見ると、「X」と「S」は同じWLTCモード28.4km/Lなのに対して、「F」は29.5km/Lとひとつだけ数値が良いのだ。古いJC 08モードでいえば、他グレードが34.8km/Lに対して、「F」だけが38.2km/Lと良い。

いわゆる「F」は「燃費スペシャル」という燃費スペックに特化した特別なグレードなのだ。

優れた数値を出すために軽量化

3つあるグレードのうち、「F」の燃費スペックだけが飛びぬけて良いのは、車両重量が他よりも30kgも軽いのが理由だ。

装備の簡素化だけでなく、燃料タンクも他より4L小さい。この「F」グレードがあるおかげで、「新型ノートの燃費性能は~」と紹介されるときには、その一番良い数字が使われることになる。正直、良心的とはいえない手法だが、実のところ他の自動車メーカーも使っている。日本の自動車メーカーの悪しき伝統だ。

ちなみにノートのライバルとなる、トヨタのアクアも全グレードの燃費性能が同じではない。やはり1グレードだけ重量が軽く燃費性能に優れる「L」というグレードが用意されている。

こちらの燃費性能はWLTCモードで29.8km/L。また、燃費性能の良さで売る、トヨタのプリウスも同様だ。こちらもタンクを小さく車両を軽くして燃費性能を高めた「E」というグレードが存在する。

こうした特殊なグレードは、たしかに燃費性能には優れているかもしれないが、日常ユースでは、走行距離が相当に大きく伸びなければ、なかなか燃料費の安さが実感できるほどのものではない。

それでいて、装備類が簡素だし、燃料タンクが小さいというのは日常の利便性にも悪影響がある。ユーザー・メリットは少なく、実際に数多く売れるグレードではないのだ。

不毛な燃費競争はいつまで続くのか

こうした「燃費スペシャル」といえるような存在は、「燃費重視」というユーザー側の姿勢が生み出したものだ。

「同じようなクルマであれば、少しでも燃費性能の良いものを選ぶ」というスタンスが「燃費スペシャル」誕生の理由だ。

ただし、そうした動きは、実のところ沈静化の兆しが見えている。少し前まで軽自動車も燃費競争が激しかった。燃費をよくするために、タイヤの空気圧設定を驚くほど高くしたり、加速性能を犠牲にするなどの涙ぐましいメーカーのチューニングがおこなわれていた。

ところが、ここ数年はホンダのNボックスを筆頭にスーパー・ハイトワゴンがベストセラーになっている。背が高く、しかも重いスライドドアを持つ、スーパー・ハイトワゴンは燃費性能的に非常に不利となる。

そのため、Nボックスの燃費はWLTCモードで最高でも21.2km/L。軽自動車の燃費最高を競う、スズキ・アルトやダイハツ・ミライースが、25km/L台で戦っているのに対して、大きなディス・アドバンテージとなる。

ちなみに、同じスーパー・ハイトワゴンのライバルであるスズキ・スペーシアの燃費は22.2km/L。つまり、Nボックスの燃費性能は、それほど良いわけではない。

しかし、売れ行きは不動のナンバー・ワン。言ってしまえば、軽自動車ユーザーは、今となっては、それほど燃費性能を気にしていないのだ。

さらに、新型ノートのライバルとなる、ホンダのフィットは「数字を追わない」と宣言している。実際に、燃料タンクを小さくするなどのあからさまな「燃費スペシャル」グレードを用意していない。

そうした姿勢はヤリスも同じ。ちなみにフィットのハイブリッドは最高でWLTCモード29.4km/L、ヤリスが36.0km/L。つまり、燃費スペシャルを用意した29.5km/Lの新型ノートは、ぎりぎりフィットを上回るも、ヤリスには届いていないというのが実情なのだ。

日産はそれだけ必死だということか

新型ノートの燃費性能は、燃費スペシャルで29.5km/Lで他が28.4km/Lだ。トヨタ・アクアは燃費スペシャルが29.8km/Lで通常グレードが27.2km/L、ホンダ・フィットは最高値が29.4km/Lで中級以上が27.2~27.4km/L。

通常グレード同士で比較すれば、ノートの燃費性能はフィットとアクアよりも良い成績となる。ただし、ヤリスは35.4~36.0km/Lなので到底届かない。ヤリスが飛びぬけているが、それら以外の3車の差は、わずか2km/L程度の差。

運転環境や運転の仕方でどうにかなるほど、小さなもので、正直どうでもよいのではないかと思うほど。賢明なユーザーであれば気にしないのではないだろうか。

そういう意味で、新型ノートが燃費スペシャルを用意したのは、いささか時流にあっていないといえるだろう。

もちろん、そんなことは日産だって理解しているはずだ。だが、それでもあえて燃費スペシャルを用意したのは、それだけ日産が必死だということではないだろうか。

なんといってもノートは過去3年連続のベストセラーカーだ。だが、新型のノートはeパワーというハイブリッド専用車になった。旧型では販売の6割をeパワーが占めたけれど、逆にいえば残り4割はガソリン車だった。

その4割を捨てたのだ。その捨てた分を、なんとしてでも挽回したいと考えるのは理解できる。燃費で買ってくれる人が少しでもいれば、それに対して「用意する!」そんな意気込みだったのかもしれない。

実際に、新型ノートはどれだけ売れるのか。緊急事態宣言という逆風の中で、どんな数字が出るのかに注目したい。

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みんなのコメント

40件
  • > 「燃費重視」というユーザー側の姿勢が生み出したもの

    いやいや、広い・安い・便利と燃費評価ばっかりやってて、日本のクルマをつまんなくしたのは、アンタら自動車メディアでしょうに。
  • 日産から久々に出来の良い新型車が出たかと思えば、このこともそうだし、オプション設定がユーザー想いでなかったりするので、なんだかなーと思ってしまう。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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