「愛車のためによかれと思ってやっていること」が、実はクルマに悪影響を与えているかもしれない。よくある日常的な行為でも、間違った知識のまま続けていると愛車の寿命を縮める原因になりかねない。本企画では、実は逆効果になってしまう行為を4つ紹介する。
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、Adobe Stock(トビラ写真:Kesuku@Adobe Stock)
【画像ギャラリー】よかれと思ってやっていたのになぜ逆効果なのか?(8枚)
NG行為:下り坂をNレンジで走ると燃費がよくなる
まず、走行中の下り坂でATをNレンジにシフトするのは絶対に避けるべき行為である。コースティング(駆動系の伝達を切って駆動抵抗を減らした滑走状態)をイメージし、「燃費が向上する」と考える人も少なくない。
しかし、Dレンジのままでもトルクコンバーターのおかげでエンジンブレーキは強く利かず、アクセルペダルを完全に戻していれば、エンジンがストールしない程度に燃料を噴射するだけで済むため、燃料消費は抑えられる。
一方、Nレンジではエンジンがアイドリングを続けるため、Dレンジで下り坂を走るよりも燃料を消費してしまう可能性がある。
さらに問題なのは、Nレンジでの走行はATにダメージを与えるおそれがあることだ。ATには変速やトルクコンバーターの制御だけでなく、内部を潤滑するためにATFを圧送するオイルポンプが組み込まれている。
Nレンジではエンジンの駆動力が伝わらなくなり、オイルポンプが停止する。その状態で走行すると潤滑不良や油圧不足を招き、AT内部を傷める可能性がある。
ただし、機械式油圧制御のATであっても、多くのAT車にはドライバーのシフトミスを想定した安全機構が備わっており、極低速域以外では前後進のシフト操作を受け付けないようになっている。そのため、誤操作をしてもAT本体にダメージが及ばないよう配慮されている。
NG行為:クルマを労わるためエンジンを高回転まで回さない
クルマを長持ちさせたいと考えると、「低回転で優しく運転することが大切」と考えがちである。確かに、高負荷・高回転の連続使用はエンジンの摩耗を早める要因になる。
しかし、街乗り中心で2000rpm以下しか使わない運転を続けると、エンジン内部にススやカーボンが堆積し、かえってコンディションを悪化させることもある。
結論としては、「毎回高回転まで回す必要はない」が、「まったく回さないのもよくない」ということになる。
【メリット】
・油圧が高まり、オイル経路へのスラッジ堆積を抑えられる
・燃焼温度が高くなり、カーボンやデポジットが焼却されやすい
・エンジン内部の動きが滑らかになり、吹け上がりが改善する場合がある
【デメリット】
・燃費が悪化しやすい
・濃い燃料噴射で加速すると、逆にデポジットが増える場合もある
・高回転を常用すると摩耗リスクが高まる
では、10万km、20万kmと長く乗るにはどうすればよいのか。
・月に1回程度は高速道路を走る
合流時などで3000rpm前後まで回し、その後は一定速度で巡航すると燃焼温度が安定し、デポジットの蓄積抑制が期待できる。
・短距離走行ばかりを避ける
エンジンが十分暖まる前に停止を繰り返すと、カーボンが蓄積しやすい。週末に少し長めのドライブへ出かけるだけでも効果が期待できる。
・ディーゼル車の場合
低回転ばかりではPM(粒子状物質)が蓄積しやすく、DPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)の再生が滞る原因になる。時々3000rpm前後まで回すことで、DPF再生を助け、エンジンの健康維持にもつながる。
NG行為:タイヤの空気圧を高めにしすぎる
タイヤには車種ごとに適正空気圧が設定されている。自然に空気圧が低下することを見越して、やや高めに調整することは珍しくないが、高めすぎるのは逆効果である。
省燃費性能を重視した軽自動車では、先代アルトやワゴンRのように280kPaという高い指定空気圧を採用するモデルもある。しかし、こうした車種は専用タイヤを装着し、十分なテストを経て性能を確保している。
一般的な乗用車で指定空気圧が220~240kPa程度なら、高めに設定するとしても1割程度までが目安である。それ以上高めるとタイヤが衝撃を吸収しにくくなり、ホイールベアリングなど足回り部品の寿命を縮めたり、タイヤの偏摩耗や雨天時のグリップ低下を招く可能性が高くなる。
転がり抵抗の少ないエコタイヤに交換した場合でも、指定空気圧を大きく超える必要はない。適正空気圧を守るだけでも十分な燃費改善効果が期待できる。
NG行為:エアコンのON/OFFをこまめに切り替えると燃費がよくなる
エアコンのACボタンをこまめにオン・オフすれば燃費が向上すると考え、実践しているドライバーもいる。
しかし、この方法は基本的に逆効果である。
エアコンはオンの状態でもコンプレッサーが常に作動しているわけではなく、冷媒圧力が一定になると電磁クラッチが切れ、自動的に停止する仕組みになっている。
ところが、自分でオフにすると冷媒圧力が低下し、再びオンにした際にはコンプレッサーが長時間作動することになり、結果として余計なエネルギーを消費してしまう。
快適性と燃費を両立させたいなら、オートエアコンを活用し、設定温度で制御させるほうが効率的である。ただし、走行中に頻繁に操作することは安全面からも避けるべきだ。
省エネルギーセンターが提唱する「エコドライブ10のすすめ」では、外気温25℃でエアコンを使用すると燃費が約12%悪化するとされている。
また、シャシーダイナモを使った実験では、外気温25℃程度の環境でも、エアコンをオンにしているだけで燃料消費が約14%増加するという結果も報告されている。
一方、外気温35℃を超える猛暑日に外気導入でエアコンを最大稼働させると、燃料消費はさらに悪化する。こうした状況ではAUTOモードを活用し、状況に応じて内気循環と外気導入を使い分けることが重要である。
編集部まとめ
「愛車のため」と思って続けている行為が、実は逆効果だったというケースは少なくない。
今回紹介した4つ以外にも、長期間エンジンオイルを交換していないクルマで安易にフラッシングを行うのは避けたい。エンジン内部に堆積したスラッジが大きな塊のまま剥がれ落ち、油路を詰まらせることで潤滑不良や油圧低下を招くおそれがあるためだ。
また、「いつもガソリンは満タンでなければ不安」という人もいるが、燃料を満載すれば車両重量が増え、わずかながら燃費に影響する。さらに、給油時に口元まで継ぎ足す「継ぎ足し給油」は、蒸発ガスを処理するチャコールキャニスターにガソリンが流れ込み、故障の原因になることもある。
愛車を長く快適に乗り続けるためには、都市伝説のようなカーケアではなく、メーカーが推奨する正しいメンテナンス方法を実践することが何より重要である。
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