ウェットブレーキで7回転半スピンした話
昔は、さまざまな自動車雑誌が独自に日本自動車研究所(通称:谷田部〈ヤタベ〉)のテストコースを借りて、加速や最高速などのテストを頻繁に行っていました。
静かな「タイヤ革命」進行中? 内蔵センサー+先進ソフトウェアで危険回避へ
テストコースは、日中は自動車メーカーやバイクメーカーが占有しているので、自動車雑誌のテストはたいてい早朝か深夜でした。『谷田部5時―7時』といえば、早朝5時から7時までコースを占有という意味で、その時間にテストや計測をするわけです。ちなみに5時―7時だと4時30分からコースに入れ、7時30分までに撤収というのが通例で、実質3時間近く使うことができました。
よく使っていたのはバンクのある高速周回路と、総合試験路と呼ばれる長さ約1km、幅30mくらいの平坦なコース。総合試験路には1kmの直線路に続けて、200mほどのブレーキ路がありました。
その日はなぜかブレーキ路が水で濡れていたのです。そこに180km/hで飛び込んで7回転半の大スピンをやらかしたのが、サイトウの最初のハイドロプレーニング体験でした。
ブレーキコース手前でブレーキをかけ始めているのですが、ABSもなかったころ。グリップのいい路面にフロントの左右どちらか1輪が乗ったらしく、いきなり車の向きがスーッと変わったと思ったら、そのままスピン。
「これはやっちまったなあ……」とクラッシュを覚悟していたのですが、運のいいことに引っかかるものがなく、スピンの方向は慣性の法則どおり。走ってきた方向の延長線上を真っ直ぐコマのようにスピンしながら進んでいったのでした。あまりきれいにスピンするものだから、面白くなってスピンの回数を数えていたら7回転半だったという……。
こんな極端な体験はあまりないかもしれませんが、かなり多くの読者の方がハイドロプレーニングでドキッとした体験はあるのではないでしょうか。雨の高速道路を走っていて、いきなりステアリングが軽くなって、抵抗がなくなったようにツツーッと滑っていくアレ。アクアプレーニングも同じ現象です。
キモはタイヤ溝の深さと路面の水深
ハイドロプレーニングは、路面とタイヤの間に水の層ができ、タイヤが路面から浮いてしまうことで起こります。タイヤが路面から浮くにはある程度の速度が必要なので、高速道路や自動車専用道路で体験することが多いのはそのためです。
では、いったい何km/h出すとハイドロプレーニングが起こるのでしょうか。これについてはNASAが面白い公式を発表しています。
『V=63√P』というものです。Vが速度、Pが空気圧です。
空気圧が2.0kg/cm2の場合だとハイドロプレーニングが起きる車速は63√2≒89km/h、空気圧が3.0kg/cm2なら≒109km/hとなります。
ちなみにこれには前提条件があって、水深がタイヤの溝よりも深い場合となっています。乗用車用タイヤ溝は新品でおよそ8~10mmと思っていてください。ですから新しいタイヤでも、水深が8~10mmくらいになると簡単にハイドロプレーニングが起きてしまうということになります。
もっとも水深10mmというのは相当な大雨で、雨の状況でいうと、夕立などでときどき前が見えなくなるほど激しい雨と考えていいと思います。ただし、タイヤが摩耗して溝が浅くなって、残溝4mmとか3mmになると、それほど激しい雨でなくても、ちょっと水はけの悪い路面だとその程度の水深になってしまいます。
慌てず待つのが最善の対処
タイヤの残溝の違いによるハイドロプレーニングの様子を比較したことがあります。その時は、新品タイヤと残溝2mmまで削ったタイヤでのブレーキ比較をしました。新品タイヤは排水性が高く、水がタイヤの溝を通ってきれいに後ろに排水されますが、残溝2mmのタイヤは、排水しきれない水をタイヤの前に押し出してしまい、さらに止まりにくくなっていることが確認できました。
タイヤが摩耗して排水性能が悪くなると、簡単にハイドロプレーニングが起きるようになってしまうわけです。
対処法はありません。水深と自分のタイヤの残溝を考えながら、車速を選ぶのが最も良い方法だと思います。水深の深い路面に入ると強い水の抵抗感がありますから、それを感じたら車速を落とすのがいいと思います。もしタイヤが摩耗していて、残溝4mm以下になっていたら、特に車速には注意が必要です。
先ほどの実験の際は、80km/hからのフルブレーキで行いましたが、高速道路を走行中にハイドロプレーニングが起こったからといって、フルブレーキをかけると後続車に追突される危険性が高くなります。
また、むやみにハンドルを切ると、タイヤが路面に接地した瞬間にハンドルを切っている方向にクルマがすっ飛んで行きますので、ステアリングは真っ直ぐ保持するのが基本です。
水の抵抗は案外大きいので、ハイドロプレーニングが起こっても慌てず、ステアリングを切らず、アクセルを戻して待っていれば、間もなくハイドロプレーニングは収まります。とんでもないスピードで走っていない限りは7回転半のスピンなんてしません。
まだ雨の話題には少し早いかもしれませんが、最近は春から夏にかけて、まるで亜熱帯のようにスコールのような激しい雨が頻繁に降るようになってきているので、くれぐれも気を付けてください。またタイヤが摩耗している方は、梅雨前のタイヤ交換をおすすめします。
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