現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【第7回】サイトウサトシのタイヤノハナシ~ハイドロプレーニングのハナシ~

ここから本文です

【第7回】サイトウサトシのタイヤノハナシ~ハイドロプレーニングのハナシ~

掲載
【第7回】サイトウサトシのタイヤノハナシ~ハイドロプレーニングのハナシ~

ウェットブレーキで7回転半スピンした話

昔は、さまざまな自動車雑誌が独自に日本自動車研究所(通称:谷田部〈ヤタベ〉)のテストコースを借りて、加速や最高速などのテストを頻繁に行っていました。

静かな「タイヤ革命」進行中? 内蔵センサー+先進ソフトウェアで危険回避へ

テストコースは、日中は自動車メーカーやバイクメーカーが占有しているので、自動車雑誌のテストはたいてい早朝か深夜でした。『谷田部5時―7時』といえば、早朝5時から7時までコースを占有という意味で、その時間にテストや計測をするわけです。ちなみに5時―7時だと4時30分からコースに入れ、7時30分までに撤収というのが通例で、実質3時間近く使うことができました。

よく使っていたのはバンクのある高速周回路と、総合試験路と呼ばれる長さ約1km、幅30mくらいの平坦なコース。総合試験路には1kmの直線路に続けて、200mほどのブレーキ路がありました。

その日はなぜかブレーキ路が水で濡れていたのです。そこに180km/hで飛び込んで7回転半の大スピンをやらかしたのが、サイトウの最初のハイドロプレーニング体験でした。

ブレーキコース手前でブレーキをかけ始めているのですが、ABSもなかったころ。グリップのいい路面にフロントの左右どちらか1輪が乗ったらしく、いきなり車の向きがスーッと変わったと思ったら、そのままスピン。

「これはやっちまったなあ……」とクラッシュを覚悟していたのですが、運のいいことに引っかかるものがなく、スピンの方向は慣性の法則どおり。走ってきた方向の延長線上を真っ直ぐコマのようにスピンしながら進んでいったのでした。あまりきれいにスピンするものだから、面白くなってスピンの回数を数えていたら7回転半だったという……。

こんな極端な体験はあまりないかもしれませんが、かなり多くの読者の方がハイドロプレーニングでドキッとした体験はあるのではないでしょうか。雨の高速道路を走っていて、いきなりステアリングが軽くなって、抵抗がなくなったようにツツーッと滑っていくアレ。アクアプレーニングも同じ現象です。

キモはタイヤ溝の深さと路面の水深

ハイドロプレーニングは、路面とタイヤの間に水の層ができ、タイヤが路面から浮いてしまうことで起こります。タイヤが路面から浮くにはある程度の速度が必要なので、高速道路や自動車専用道路で体験することが多いのはそのためです。

では、いったい何km/h出すとハイドロプレーニングが起こるのでしょうか。これについてはNASAが面白い公式を発表しています。

『V=63√P』というものです。Vが速度、Pが空気圧です。

空気圧が2.0kg/cm2の場合だとハイドロプレーニングが起きる車速は63√2≒89km/h、空気圧が3.0kg/cm2なら≒109km/hとなります。

ちなみにこれには前提条件があって、水深がタイヤの溝よりも深い場合となっています。乗用車用タイヤ溝は新品でおよそ8~10mmと思っていてください。ですから新しいタイヤでも、水深が8~10mmくらいになると簡単にハイドロプレーニングが起きてしまうということになります。

もっとも水深10mmというのは相当な大雨で、雨の状況でいうと、夕立などでときどき前が見えなくなるほど激しい雨と考えていいと思います。ただし、タイヤが摩耗して溝が浅くなって、残溝4mmとか3mmになると、それほど激しい雨でなくても、ちょっと水はけの悪い路面だとその程度の水深になってしまいます。

慌てず待つのが最善の対処

タイヤの残溝の違いによるハイドロプレーニングの様子を比較したことがあります。その時は、新品タイヤと残溝2mmまで削ったタイヤでのブレーキ比較をしました。新品タイヤは排水性が高く、水がタイヤの溝を通ってきれいに後ろに排水されますが、残溝2mmのタイヤは、排水しきれない水をタイヤの前に押し出してしまい、さらに止まりにくくなっていることが確認できました。

タイヤが摩耗して排水性能が悪くなると、簡単にハイドロプレーニングが起きるようになってしまうわけです。

対処法はありません。水深と自分のタイヤの残溝を考えながら、車速を選ぶのが最も良い方法だと思います。水深の深い路面に入ると強い水の抵抗感がありますから、それを感じたら車速を落とすのがいいと思います。もしタイヤが摩耗していて、残溝4mm以下になっていたら、特に車速には注意が必要です。

先ほどの実験の際は、80km/hからのフルブレーキで行いましたが、高速道路を走行中にハイドロプレーニングが起こったからといって、フルブレーキをかけると後続車に追突される危険性が高くなります。

また、むやみにハンドルを切ると、タイヤが路面に接地した瞬間にハンドルを切っている方向にクルマがすっ飛んで行きますので、ステアリングは真っ直ぐ保持するのが基本です。

水の抵抗は案外大きいので、ハイドロプレーニングが起こっても慌てず、ステアリングを切らず、アクセルを戻して待っていれば、間もなくハイドロプレーニングは収まります。とんでもないスピードで走っていない限りは7回転半のスピンなんてしません。

まだ雨の話題には少し早いかもしれませんが、最近は春から夏にかけて、まるで亜熱帯のようにスコールのような激しい雨が頻繁に降るようになってきているので、くれぐれも気を付けてください。またタイヤが摩耗している方は、梅雨前のタイヤ交換をおすすめします。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

「空母化」進む海自の巨艦が偉業達成! 航空機の無事故着艦が“大台“に到達 艦載機を並べて記念撮影も
「空母化」進む海自の巨艦が偉業達成! 航空機の無事故着艦が“大台“に到達 艦載機を並べて記念撮影も
乗りものニュース
多様なスタイルに合わせやすくデイリーユースにぴったり! 機能性とファッション性を兼備した「防水スニーカー」の実力とは
多様なスタイルに合わせやすくデイリーユースにぴったり! 機能性とファッション性を兼備した「防水スニーカー」の実力とは
VAGUE
新車152万円! トヨタ最新「プロボックス」が話題に!「コスパ最強すぎ!」「走りの“GR仕様”欲しい…」の反響続々! “使い勝手”極めた「商用バンの皇帝」どんなモデルに!
新車152万円! トヨタ最新「プロボックス」が話題に!「コスパ最強すぎ!」「走りの“GR仕様”欲しい…」の反響続々! “使い勝手”極めた「商用バンの皇帝」どんなモデルに!
くるまのニュース
「カスタム感イイ」「無印はおあずけ」最新中古相場もわかる! カワサキの人気ヘリテイジ800cc【2019モデル】
「カスタム感イイ」「無印はおあずけ」最新中古相場もわかる! カワサキの人気ヘリテイジ800cc【2019モデル】
WEBヤングマシン
クルマ界のMZ世代!? 2000年登場のクルマがイケイケで傑作だらけな件
クルマ界のMZ世代!? 2000年登場のクルマがイケイケで傑作だらけな件
ベストカーWeb
R34型スカイラインGT-Rかと思いきや…中身は「25GTターボ」!「イジりだすとキリがないです」
R34型スカイラインGT-Rかと思いきや…中身は「25GTターボ」!「イジりだすとキリがないです」
Auto Messe Web
「本当に必要なのか」 四国新幹線、悲願の実現に黄信号? 岡山市長は血気盛んも、県は慎重! 徳島はバス優位…1.6兆円かける意味はあるのか
「本当に必要なのか」 四国新幹線、悲願の実現に黄信号? 岡山市長は血気盛んも、県は慎重! 徳島はバス優位…1.6兆円かける意味はあるのか
Merkmal
ヤマハ「シグナス グリファス」【1分で読める 原付二種解説 2025年現行モデル】
ヤマハ「シグナス グリファス」【1分で読める 原付二種解説 2025年現行モデル】
webオートバイ
車内のデッドスペースを収納に!仕事にも遊びにも使えるキャリアバー セイワ
車内のデッドスペースを収納に!仕事にも遊びにも使えるキャリアバー セイワ
グーネット
マツダの国内向けバッテリーEV テスラ「スーパーチャージャー」で充電可能に
マツダの国内向けバッテリーEV テスラ「スーパーチャージャー」で充電可能に
グーネット
ルノー「カングー」夏を彩る鮮やかオレンジ!6速MTも選べる特別仕様
ルノー「カングー」夏を彩る鮮やかオレンジ!6速MTも選べる特別仕様
グーネット
ダイハツ 「ムーヴ」130万円台からの低価格で遂に復活!モデル初のスライドドア採用
ダイハツ 「ムーヴ」130万円台からの低価格で遂に復活!モデル初のスライドドア採用
グーネット
ベンツが狙い目!? やっぱり手っ取り早いのは舶来品!? 周りから小金持ちに見える輸入車たち
ベンツが狙い目!? やっぱり手っ取り早いのは舶来品!? 周りから小金持ちに見える輸入車たち
ベストカーWeb
三菱が「画期的“ビッグセダン”」を実車公開! 堂々「3ナンバーボディ」×V6エンジン搭載! すごすぎる“制御技術”搭載で大ヒットした「ディアマンテ」は今も技術が活きる1台
三菱が「画期的“ビッグセダン”」を実車公開! 堂々「3ナンバーボディ」×V6エンジン搭載! すごすぎる“制御技術”搭載で大ヒットした「ディアマンテ」は今も技術が活きる1台
くるまのニュース
まもなく日本で販売!? イタリア生まれのハンドメイドバイク「ビモータの最新作」が気になる! “スーパースポーツ”と“ツアラーバイク”はどんな仕上がり?
まもなく日本で販売!? イタリア生まれのハンドメイドバイク「ビモータの最新作」が気になる! “スーパースポーツ”と“ツアラーバイク”はどんな仕上がり?
VAGUE
京都大学自動車部ほか5校が全国大会出場権ゲット!GR86で争われた「Formula Gymkhana」2025シーズン開幕戦は逆転に次ぐ逆転の大激戦
京都大学自動車部ほか5校が全国大会出場権ゲット!GR86で争われた「Formula Gymkhana」2025シーズン開幕戦は逆転に次ぐ逆転の大激戦
WEB CARTOP
トム・クルーズ、『ミッション:インポッシブル』最終作のプレスツアーでロレックス デイトナ プラチナモデルを着用!
トム・クルーズ、『ミッション:インポッシブル』最終作のプレスツアーでロレックス デイトナ プラチナモデルを着用!
GQ JAPAN
VTECの咆哮が胸を打つ! ホンダ「S2000」の伝説のCMに込められた“走りの哲学”と名曲の力とは
VTECの咆哮が胸を打つ! ホンダ「S2000」の伝説のCMに込められた“走りの哲学”と名曲の力とは
VAGUE

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村