先入観を塗り替えるSUV ランドローバー・ディフェンダー 90（最終回） 長期テスト

積算7171km　条件付きでオススメSUVの1台

都市部に住む現代人にとって、新しいランドローバー・ディフェンダー 90が理想的なクルマだとはいいにくい。それでも、いくつかの弱点を受け入れるという前提で、筆者はオススメしたいSUVの1台に並べたい。

決して悪いクルマではない。極めて有能で、過酷な条件でなくても、その実力には唸らされるものがある。

オフロードでもオンロードと同様に快適に運転でき、長距離クルージングも安楽。長期テストでの平均燃費は10.7km/Lで、車格を考えればディーゼルなら経済的。車内パッケージングも優れている。

すべての点で、初代ディフェンダーの弱みを克服している。とはいえ、不満がないわけではない。

大きなボディサイズは、現代基準では手に余る。フォルクスワーゲン・ゴルフのユーザーが見ても小さいと感じるほど、90の荷室は限定的で、英国でも価格はかなり高いと感じる。

リアシートは完全にフラットにならず、大型犬をゲージに入れて、一緒に自動車旅行することも難しい。ボディの長い110なら、専用アイテムが用意されているのだけれど。

実際、英国の読者には、ディフェンダー 90を検討したものの諦めたという人が少なくない。それでも筆者は、すっかりこのクルマが気に入ってしまった。長期テストは今回が最終レポートとなるが、とても寂しいと感じている。

素晴らしい印象の3.0L 直6ディーゼル

ディフェンダー 90には唯一の個性があり、派手さはないものの存在感があり、すべてのクルマ移動を特別なものにしてくれる。完璧とまではいえないものの、乗るたびに幸せな気持ちになった。

この魅力は、英国編集部のマット・プライヤーが、クラシカルな要素とオフロード的な機能をモダンなディフェンダーに融合させた、巧みなオプション選択も影響している。ハイエンドのHSEグレードの価格は、更に15％ほど増していたが。

スチールホイールという選択は、英国の読者の間では賛否が別れた。筆者がカウントした限り、アルミホイールを好む人が多いようだが、筆者は嫌いではない。

ちなみに、現在のランドローバーは生産が追いついておらず、より価格の高いモデルを優先的に販売するように動いている。ノンコストで選択できるスチールホイールは、英国では今のところ選択できないらしい。

筆者なら追加料金を払ってでも、装着させたいところ。少数派だとは思うけれど。

長期テストのディフェンダー 90で素晴らしい印象を残してくれたのが、3.0L 直列6気筒のディーゼルターボ・エンジン。2.2tの車重があるSUVに、0-100km/h加速8.0秒という動力性能を与えてくれる。

瞬発力だけでなく、混雑した市街地から田園が広がる郊外まで、スムーズに生み出される豊かなトルクにはいつも感心させられた。むしろ、この能力の方を評価したい。

先入観を塗り替えた長距離旅行

気になった点は、発進時に一呼吸置くこと。これは従来からのランドローバーの特徴ともいえるもので、あえて設定されているのだろう。交差点からの合流などで、少々気を揉むことはあるかもしれない。

とはいえ、長距離移動をメインにするなら、ディーゼルターボという選択は理にかなっている。長期テストの期間中は、別の編集部員がフランスのブガッティ本社と、グレートブリテン島の西端、コーンウォールまで足を伸ばしている。

筆者も、西部のウェールズ地方まで走らせた。各自が旅から帰ってくると、全員がディフェンダー 90を褒め称えた。快適で静かで、狭い車線でも運転しやすいと。

良くない先入観を塗り替えてくれた。ブロックパターンの大きい、オールテレーン・タイヤを履くオフローダーとしては、異例といっていいだろう。

同時に、片道5km程度の通勤にも利用した。ルーフアンテナが高さ制限のプレートに当たるくらい、狭い立体駐車場へ停める毎日だったから、このクルマに適した乗り方ではなかったといえる。

だが、パーキングセンサーとカメラが装備され、全長が約4.5m、全幅と全高が約2mづつあるディフェンダー90ながら、想像以上に駐車は容易だった。過去に運転した同サイズのSUVは、ここまで扱いやすくなかったと記憶している。

ドライビングポジションは高く、前方視界は良好。市街地の運転も落ち着いてできる点は、ストロングポイントといっていい。

日常をより良くするディフェンダー 90

大きいものから小さいものまで、弱点は存在する。それでも、ランドローバー・ディフェンダー 90は筆者の暮らしにフィットし、日常をより良いものにしてくれた。

確かに価格は安くない。だが、納車待ちのリストが2023年に向けて更に増えたとしても、まったく不思議ではない。

セカンドオピニオン

これほど安楽に悪路を走破できるオフローダーは、ディフェンダー以外に思い浮かばない。それ以上に、長距離の高速道路を快適に運転できることへ、深い感銘を受けた。

長期テストのディフェンダー 90はオンロードに最適化させた仕様ではなかった。それでもとても静かで、外界から隔離され、非常に居心地は良かった。　Matt Prior（マット・プライヤー）

テストデータ

気に入っているトコロ

控えめなスペック：シック過ぎる仕立ては好みではないけれど、このくらいが丁度いい。どこへでも向かえるような見た目のクルマの運転は、市街地でも楽しいものだった。

ボディに見合ったディーゼル：近年の人気は下火ながら、やはりディーゼルエンジンは比較的クリーンで効率的だ。

リアシート：乗降性は良くないものの、1度座ってしまえば快適。空間も広い。

気に入らないトコロ

英国価格：パッケージングや装備は素晴らしい。しかし、価格もプレミアム級だ。

手狭な荷室：ディフェンダー 90の場合、荷室容量は397L。ちょっとした荷物でも、サイドヒンジのテールゲートに当たってしまう。

走行距離

テスト開始時積算距離：848km
テスト終了時積算距離：7171km

価格

モデル名：ランドローバー・ディフェンダー 90 3.0インジニウムD250 MHEV HSE（英国仕様）
開始時の価格：5万8875ポンド（約983万円）
現行の価格：5万8875ポンド（約983万円）
テスト車の価格：6万4485ポンド（約1076万円）

オプション装備

カントリー・パッケージ（マッドフラップ、荷室パーティション、スカッフプレート、ホイールアーチ・プトレクション、ポータブル・リンス・システム）：1585ポンド（約24万6000円）
オフロード・パッケージ（アクティブ・トルクベクタリング付き電子制御デフ、オフロードタイヤ、電源ソケット）：1450ポンド（約22万5000円）
ホワイト・コントラストルーフ：900ポンド（約14万円）
タスマン・ブルー塗装：895ポンド（約13万9000円）
デタッチャブル牽引バー：780ポンド（約12万円）

燃費＆航続距離

公称燃費：11.0km/L
タンク容量：89L
平均燃費：10.7km/L
最高燃費：11.0km/L
最低燃費：9.4km/L
航続可能距離：947km

長期テスト車のスペック

全長：4323mm
全幅：1996mm
全高：1974mm
最高速度：188km/h
0-100km/h加速：8.0秒
車両重量：2228kg
パワートレイン：直列6気筒2997ccターボチャージャー
使用燃料：軽油
最高出力：249ps/4000rpm
最大トルク：57.9kg-m/1250-2500rpm
ギアボックス：8速オートマティック
トランク容量：397L
ホイールサイズ：18インチ
タイヤ：275/65 ZR18

メンテナンス＆ランニングコスト

リース価格：588.5ポンド/月（約9万8000円/月）
CO2 排出量：238g/km
メンテナンスコスト：なし
その他コスト：48ポンド（約7400円／パンク修理）
燃料コスト：958.7ポンド（約16万円／軽油）
燃料含めたランニングコスト：1006.7ポンド（約16万8000円）
1マイル当りコスト：0.26ポンド（約43円）
不具合：なし

Comments

日本は90のディーゼルが買えません。ガソリンはなんか微妙なエンジンなので、本当に導入してほしいです。

しかし、中古車のプレミアム価格すごいな笑
1年待ち程度だし結構故障もありますから新車がおすすめです
私は細かいの複数回と大物が１回ありました