■「日本の自動車関連税は高い!」は本当か?
クルマは、所有すれば自動車税に重量税、走行すればガソリン税など、なにかと税金がかかるイメージです。
しかし、果たして本当に日本の自動車関連税は高いのでしょうか。そして、自動車愛好家は自動車関連税に対してどのように考えるべきなのでしょうか。
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2021年7月現在、自動車関連税には、自動車税および軽自動車税や自動車重量税といった「車体課税」と、揮発油税などの「燃料課税」があり、実際には消費一般に対して広く公平に課される税である「消費税」も、自動車の購入や使用に関わってきます。
税金には、「中立公正な課税」という基本原則があります。
ここでいう「中立公正」とは、国民全員に対して同等の税額を課すという意味ではなく、所得に応じて適切な課税をするという意味とされています。
また、「受益者負担」という原則もあります。
これは、市場経済において、その利益を受ける者がそれに必要な負担を請け負うというもので、簡単にいえば、道路の維持整備に必要な費用は、道路を利用する自動車オーナーが支払うべきという考え方です。
自動車税や軽自動車税は、クルマという高額品を購入することができるという点に担税力(=税を支払う能力)があるとして、所得の多い国民から税徴収をするという「中立公正な課税」という側面と、実際に道路を利用する自動車オーナーがその維持整備に関する費用を負担するという「受益者負担」というふたつの側面があります。
このふたつの基本原則から発生する税金は、日々公共サービスを享受している以上受け入れるべきものであるでしょう。しかし、実際にはさまざまな問題があるのも事実です。
自動車重量税や揮発油税は、重量の多いクルマほど道路を損傷する可能性が高いことや、ガソリンを多く使用するクルマのほうが環境に与える影響が大きいことから、「受益者負担」の原則に則った税とされてきました。
しかし、実際には2009年に法改正で、自動車重量税や揮発油税などは一般財源化されたことで、道路関連に限定されずに使用できることとなりました。つまり、前述の「受益者負担」の原則から離れています。
いわゆる「二重課税」も問題視されることが多くあります。例えば、ガソリンを購入する際、ガソリン本体の価格に揮発油税を課税し、さらにその金額に消費税を課税するというものです。
「二重課税」そのものは違法ではありませんが、当初の想定を超える課税につながる恐れがあることから、経済発展を阻害するものとして極力排除すべきものとされています。
また、とくに自動車愛好家から不興を買っているのが、自動車税や自動車重量税の13年経過後の重課です。
自家用車であれば、登録から13年経過すると自動車税や自動車重量税が概ね10%割増となります。18年経過すると、さらに割増となる二段階での重課制度となっています。
これも、基本的には「古いクルマほど環境に与える影響が大きい」ことから「受益者負担」の原則に沿った課税制度ですが、「古い物を大切に使うことは悪いことなのか?」と批判されることも少なくありません。
さて、ここまで日本の自動車税制について見てきましたが、いくら詳しく解説をされようとも「高いものは高い」と感じる人も少なくないでしょう。
日本の自動車税制を批判する際には、諸外国との比較が挙げられることが多くあります。
日本自動車工業会(自工会)の発表によると、例えば、「排気量1.8リッター・カタログ燃費15.8km/L(JC08モード)・車体価格180万円」の乗用車の保有に関する車体課税(日本の場合「自動車税」と「自動車重量税」)は、米国の約31倍とされています。
米国は諸外国から見ても極端に自動車関連税が安いこともありますが、ドイツと比べても約2.8倍、イギリスと比べても約2.4倍となるなど、やはり日本が高い水準であることがわかります。
ただ、これはあくまで車体課税に関した数値です。より視点を広げると、ドイツやイギリスは日本と比べて消費税(付加価値税)が高く、日々の生活に関する税負担は多くの場合、より大きいとされています。
また、国税庁の調査によると、年収500万円の所得税および住民税負担率を見ると、日本はドイツの2分の1以下、イギリスの4分の1以下となっています。
アメリカは日本よりも住民税負担率が若干低いですが、医療費が非常に高いなど、社会保障に関する公共サービスが日本とは大きく異なります。
自動車税が半分になる代わりに、消費税が倍になったり、所得税が増えたり、医療費が高額になったりするといわれたら、手放しで喜べる人はまずいないでしょう。
もちろん、現在の制度に甘んじることなく、より良い方向を主張するのは重要なことです。ただし自己中心的な主張は建設的ではありません。
自動車税制に疑問を感じる人の多くは、おそらく自動車愛好家なのではないかと思います。ただ、自動車愛好家だからこそ、建設的な議論となるように広い視野を持った主張が必要です。
■愛好家だからこそ感じる「13年重課」の意味
さて、ここからは極めて私的な意見を述べたいと思います。筆者(PeacockBlue K.K. 瓜生洋明)の周囲にも自動車愛好家は多く、いわゆる「旧車」や「クラシックカー」を愛する人も少なくありません。
そうした愛好家の多くは、上述の「13年重課」に疑問を呈しています。
重課とは反対に、30年以上経過したクルマの税金を優遇する、ドイツの「ヒストリックカー税制」を引き合いに出し、自動車文化の育成を阻む悪法だと弁ずる人もひとりやふたりでありません。
ただ、これは上述の「自己中心的」意見の典型例だと筆者は感じます。
当然、旧車やクラシックカーの愛好家からすれば、税制優遇が受けられるのはうれしいことに違いありません。
しかし、一部の愛好家だけを優遇するような制度は、それこそ租税の基本原則から外れる悪法だといわざるを得ません。
日本のGDPのおよそ1割を占めるとされる自動車産業を振興するためには、新車購入をうながすことが必須です。自動車産業の振興は、ひいては日本経済の振興につながります。
「古いものを大切に使うことが悪いのか?」、「日本の美徳である『もったいない』精神はどこへいった」という批判も見られますが、マクロ経済の話と個人の思想信条の話は分けて考えなければなりません。
旧車やクラシックカーの所有や走行そのものが、法律で制限されているなら大きな問題ですが、そうではありません。
新車を購入して経済発展に寄与するか、古いクルマに乗り続けることで税金を多く払い経済に寄与するかの選択肢を与えられていると、考えることもできるのです。
筆者自身も13年重課に該当するクルマを所有しています。さらにいえば、排気量6.75リッターのエンジンを搭載しているため、自動車税も最高額に達します。
これだけの排気量のエンジンのため、当然重量も2.7トンを超え、燃費もリッター5km/L走れば良い方です。
普段は新車で購入したハイブリッドカーを使用することが多いのですが、それと比べると、道路や自然環境に与える負担の大きさ、そして維持に関する費用は、まさに天と地ほどの差があります。
ただ、それでもそのクルマを所有しているのは、筆者がそのクルマを好きだからにほかなりません。決して万人受けするクルマではありませんが、あくまで筆者の趣味の話なので、それで良いと思っています。
他人の趣味に口をだすのが野暮なように、自分の趣味を必要以上に他人に理解してもらおうとするのも、無粋なことだと思います。13年重課の廃止を自動車愛好家自身が訴えるのは、個人的にそうした印象を受けるのです。
筆者個人の懐事情からすれば、毎年12万7600円という自動車税は決して楽な負担ではありません。ただ、税収を一定にすることを前提に考えると、筆者がこのクルマを楽しむために、誰かに重課分の1万6600円を負担してもらうことは、どう考えても間違っています。
むしろ、気持ちよく重課分を支払い、精一杯趣味のクルマを楽しむのが、自動車愛好家の務めなのではないかと考えます。
※ ※ ※
税制については、多くの意見があってしかるべきです。ただ、ひとりの自動車愛好家としては、現在の自動車税制をよく理解し、広い視点で建設的な議論をすることが重要なのではないでしょうか。
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みんなのコメント
13年以上のクルマに重課税?なら新車にも減税の意味は?
海外と比較?まず、高速道路は有料な国でも日本の1/5以下。
海外だと、生活必需品は大概減税〜無税。
海外の方が給料が高い。
新車購入すれば減税ってのもおかしいんじゃないの。経済発展に寄与って、他に方法がないのがバカ政府ってことなんじゃないの。