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4.0Lフラット6の走る芸術品 セオン・デザイン911へ試乗 964を徹底レストモッド 後編

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4.0Lフラット6の走る芸術品 セオン・デザイン911へ試乗 964を徹底レストモッド 後編

手強い印象なしに一般道を爽快に駆け回れる

アイドリング時のシリアスさに圧倒されたが、杞憂だった。セオン・デザイン 911「CHI001」のクラッチペダルは軽く、ステアリングには電動アシストが実装されている。

【画像】フラット6の走る芸術品 セオン・デザイン911 クールなレストモッド事例は他にも 全146枚

エンジンの燃焼はモトロニック・マネージメント・システムが調律し、敏感ではあるがマナーは良い。8800rpmを手中に収める往年の3.0 RSRほど、必死になる必要はない。

確かにノイズは騒がしいものの、現代基準でも鋭く吹け上がるフラット6は滑らかにスピードを乗せていく。ギクシャクするような難しさも感じない。

6速MTは集中せずに変速できる。少しレバーの動きは軽すぎるようだが、ピタリと正確。ゲートを間違う可能性は低そうだ。

郊外の道を、特に手強い印象を受けることなく爽快に駆け回れる。セオン・デザイン社のレストモッドによって、964世代では叶えられなかった精度と機敏さを獲得している。

この操縦性を実現させているのが、最新のポルシェ・カレラカップ・レーサーと同じトラクティブ社のダンパー。5段階に減衰力を調整できる。

CHI001は、964の911 カレラRSより車高が10mm低い。そのぶんストロークも制限されるが、最もソフトなモードを選択していれば、軽量化されたボディは英国の傷んだ路面を滑らかにこなす。正確なステアリングホイールで、狙ったラインへ導ける。

シャシーバランスもニュートラル。とはいえ、フラット6がリアアクスルより後ろ側に載っていることも、疑いようはない。

伊達ではない405psと48.3kg-m

ダンパーを1番硬くすると、CHI001はステアリングホイールとアクセルペダルの動きへ一層機敏に反応する。そのかわり、乗り心地にも小さくない影響が出る。攻め込むような場面でも、公道なら選ぶ必要はないだろう。

サスペンションはモードによる変化幅が広く、状況に応じて最適な引き締まり具合を選べる。最新の911 GT3より、お買い物にも使いやすいように思う。

程なくして、操る自信が高まっていく。ドライブトレインのことも理解していく。エンジンやエグゾーストは、高音域で泣け叫ぶようなサウンドではないが、明確に共鳴する吸気音がそれを補う。

レッドゾーンめがけて、パワーが容赦なく高まる。トルク感も半端ない。高回転域までの勢いは新しいBMW M3のようで、405psと48.3kg-mは伊達ではない。

シフトアップすると、中回転域から再び同じくらい強力に加速する。攻撃的に軽いボディを押し進める。これほどの興奮を誘いながらも、乱れる様子はない。シャシーは適度に落ち着いていて、ボディサイズは小柄。公道で思い切り楽しめる。

タイヤは、964当時と比べれば遥かに太い。フロントは幅225と控えめに聞こえるが、オリジナルではリアタイヤの幅だった。太すぎることはなく、ワダチで進路が惑わされることもない。

ニュートラルなシャシーバランスで、グリップやトラクションの限界を探ることも可能としている。もう少し限界領域が低くても良いように感じるが、安全性と、エンジンの能力をフルに味わうためには必要な能力ではある。

独自の経験と愛情で完成された極上の911

ハイスピードで連続するコーナーへ侵入し、頂点付近に峰があるような場面では、CHI001は瞬間的に暴れる。すぐに落ち着きを取り戻すけれど。苦もなく高速域へドライバーをいざなうものの、ベースが30年前の911だということを思い出させる。

最新の911なら、何事もなかったように通過するだろう。でも、筆者はCHI001の振る舞いも嫌いではない。むしろ、かなり好きだ。

ステアリングホイールのレシオは、もう少しクイックでも良いかもしれない。フラットにコーナーへ進入していくが、旋回中はオリジナルの964と同様に感触が若干悪化する場面も感取された。気になったのはその程度。

さて、これほど素晴らしい仕上がりのレストモッド964のお値段は、英国で38万ポンド(約6270万円)から。セオン・デザイン社としてはベーシックな内容での数字で、安くはない。しかし、カリフォルニアのシンガー社が手掛けるクラシック911よりは安い。

この半分の予算があれば、見事なコンディションの964型911 RSをクラシックカー市場で探すことも可能ではある。あるいは996型などの911 GT3を選べば、CHI001以上の動的能力を堪能することもできなくはない。

とはいえ、セオン・デザインの911にも強く惹かれる。そもそも、レストモッドはコストを直視した合理的なアイデアではない。ダークパープルのCHI001は、独自の経験と深い愛情によって仕上げられた、極上の911といえる。いうなれば、走る芸術作品なのだ。

セオン・デザイン911「CHI001」(南米仕様)のスペック

英国価格:38万ポンド(約6270万円)以上
全長:4245mm(オリジナル964型)
全幅:1660mm(オリジナル964型)
全高:1310mm(オリジナル964型)
最高速度:265km/h(予想)
0-100km/h加速:4.2秒(予想)
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:1164kg
パワートレイン:水平対向6気筒4000cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:405ps/7100rpm
最大トルク:48.3kg-m/6100rpm
ギアボックス:6速マニュアル

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