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911 ターボS/コルベット Z06/ジャガー Fタイプ SVR/ホンダ NSXが激突。その結果は?【Playback GENROQ 2017】

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911 ターボS/コルベット Z06/ジャガー Fタイプ SVR/ホンダ NSXが激突。その結果は?【Playback GENROQ 2017】

PORSCHE 911 TURBO S / CHEVROLET CORVETTE Z06 / JAGUAR F-TYPE SVR / HONDA NSX

ポルシェ911 ターボS/シボレー コルベット Z06/ジャガー Fタイプ SVR/

911 ターボS/コルベット Z06/ジャガー Fタイプ SVR/ホンダ NSXが激突。その結果は?【Playback GENROQ 2017】

ホンダ NSX

4ヵ国のリアルスポーツによる選手権開催!

見せかけだけではない“本物”のスポーツ性能。それこそが“リアルスポーツカー”の条件となる。今回、GENROQ OF THE YEAR2016-2017で特に高評価だった4ヵ国のリアルスポーツカーを中心に集めた。日独英米4車の個性を探るリアルスポーツ選手権の開催だ!

常用域でのおもてなしは超一流のNSX

ゴールデンウィークのはじめに富士スピードウェイで開催された「モーターファンフェスタ2017」は晴天に恵まれ、多くの来場者で盛況だった。国産/輸入車、新車/旧車、そしてチューニングカーからレーシングカーまで集結し、“動くオートサロン”のようだった。私は本誌が主催するスーパーカー同乗試乗のドライバーを担当したが、多くのお客さんの笑顔に接することができた。そう、スーパースポーツカーは、永遠の憧れであり、乗る人に感動を与えてくれる究極のクルマ。そのことを、再認識させられた。

そして翌日、その中からドイツ、アメリカ、イギリス、日本を代表するスポーツカー4台を連れ出し、改めて公道で各車の“主義主張”を探った。題して「リアルスポーツ・ワールドカップ」。国対抗となれば、自ずとナショナリズムが働くのは当然の心境。という訳で、まずは日本代表のホンダ NSXから試乗した。

ルックスの存在感はライバルたちにまったく引けを取らない。というより、コンサバなスタイルかもしれないが、素直にカッコ良いと思える。そして運転席に収まると、スーパーカーとは思えないほどの視認性の良さに感心する。ただでさえ気を遣うスポーツカー、この安心感は大きい。エンジンスタートスイッチを押してもエンジン音はせず、Dレンジに入れるとそのままスルスルとEVモードで走り出す。咆哮のないスポーツカー、これまた新しい感覚である。

静粛性が高く、乗り心地も良く、ドアミラーの死角も少なく快適そのもの。アクセルを踏み込むとモーター駆動ならではのトルクによる加速感が独特だ。のんびりツーリングする分にはなんら不満も覚えない。

が、しかし。静粛性と快適性のみを求めるならわざわざこんな高価なスポーツカーをチョイスする必要はない。リアルスポーツに求めるのはある種の非日常性だ。残念ながら、この領域においては、NSXの個性は未熟であると言わざるを得ない。

常用域ではきわめて日本的な心遣いと快適性を披露していたが、スポーツ領域になると、英語は堪能だが日本語での完全なコミュニケーションに不安の残る“帰国子女感”が色濃くでる。スポーツ領域ではややラフなアメリカンな雰囲気だ。

たとえば、せっかく3モーターハイブリッドという唯一無二のパワーユニットを搭載しているのに、パワーの割に速さを体感できないのがもったいない。モーターによるフラットトルクや静かさが、かえってドライバーの感覚を麻痺させてしまっているのかもしれない。

また、ハイスピード域になると、4WDと思えない予測不能のトリッキーな動きも見せる。言葉の壁の如く、ドライバーの操作に対してクルマの挙動が意に反して予測しにくい。常用域で明確な新しさや主張があるだけに、“日本ブランドらしい”リアルスポーツとして熟成して欲しいと切に願う。

すべての領域で安心感のある911 ターボS

ライバルの中でその対極とも言えるのが、ポルシェ911 ターボSだ。4台が並んだ姿を見ると、ファニーフェイスとも思えるフロントマスク。少しずつ変わりつつもずっと受け継がれてきたものは、外観のデザインだけじゃない。室内に乗り込んでも、相変わらず色気もなければ愛想もない。だが、実用主義というか、一途にパフォーマンスを向上させるという姿勢には恐れ入る。

ドイツ車至上主義でもなければ濃いポルシェファンでもない。でもやはりこのクラスのベンチマークとして認めざるを得ない安心感・安定感がポルシェにはあるのだ。

何故そう感じるか。色んなモデルと乗り比べるほどに、微に入り細を穿き、計算し尽くされたとしか思えない“こだわり”があるのだ。

たとえば、NSXから乗り換えると、まずペダルレイアウトの違いを感じる。アクセルペダルとブレーキペダルの間隔が狭く、踏み替えがしやすい。ブレーキペダルの位置は高く、街乗りでは若干アクセルペダルとの高さの違いに戸惑うかもしれない。だが、おそらくは日常とスポーツドライビング時のストロークコントロールや踏力コントロールのしやすさまで考えてのことだろう。今まで何度となくポルシェに乗っても、そこまで深く考えたことはなかったが、実際、操作性に優れる。

そして、ペダルに限らず、すべての操作系にこのような独自の「方程式」があるのでは、と思わせるような精密・精巧な造りが、ドライブする身にとって、スポーツカーの気持ち良さにつながるのだろう。

FRで大トルクを受け止めるストイックなZ06

さて、続いてはアメリカ代表のシボレー コルベット Z06だ。始めにお断りしておくと残念ながら、試乗車は万全な状態とは言えなかった。だが、キャラクターを探ることはできる。まず伝統的なスタイリングが特徴的だ。一見して、“アメ車”とわかるマッチョなデザインに根強いファンがいるのも納得だ。

運転席に座ると、理想的なドライビングポジションをしっかりと取れるのだが、どこか、ふんぞり返って乗るアメリカンバイクを思い起こさせるような雰囲気がある。鮮明なデジタルのメーター類が目に飛び込んでくるが、いざ動き始めると、ヘッドアップディスプレイの見やすさにも感心する。

それにしても、前日のモーターファンフェスタでのジムカーナ同乗試乗で見事なまでにタイヤが砂利を拾い、ゴツゴツとした乗り心地になっていた。足元に履くのは、ミシュラン・パイロットスーパースポーツ。フロント285/30ZR19、リヤ335/25ZR20のハイパフォーマンスタイヤだ。だがジムカーナ同乗試乗では、他のクルマもほぼ走行条件は一緒。ということは、いかにZ06がハイグリップなタイヤを装着しているか改めて再確認した次第だ。

スペックを見てみると、他の3台が4WDなのに対して、Z06だけはFRの二輪駆動だ。しかも、最高出力485kW(659ps)、最大トルク881Nmと、4台の中でもっともハイスペックなパワーユニットを搭載するにも関わらずだ。ちなみに他の3台も580ps前後のパワーを発揮している。さすがにこれだけのパワーを受け止めるには4つのタイヤを効率的に使わないと、ということだろう。しかしながら、コルベットはFRにこだわる。自ずとタイヤへの依存は高くならざるを得ない。

サーキットを全開で走ると、ラインを1本外したらコースが足りなくなるかも、というようなかなり危うい雰囲気が漂うが、昨今のZ06は、かのニュルブルクリンクで開発しているので、アメリカンテイストではあっても、欧州車に負けないハンドリングを備える。その一方、一般道では、通常1500rpm付近にタコメーターの針が留まり、トルクでスルスルと走らせる。

アクセルを踏み込めば回転の上昇に従って咆哮を轟かせ、怒涛の加速を見せる。どちらかといえばトルクが魅力的なリアルスポーツと言える。唯一のOHVエンジンを搭載するのもこだわりのひとつだろう。4台中もっともハイパワーのリアルスポーツで、しかもルーフを外せばオープンエアも楽しめる。それでいて価格はもっとも安い。コストパフォーマンスの良さも大きな魅力だ。

まるでジキルとハイドの二面性を持つSVR

そして最後の1台はジャガー Fタイプ SVRだ。明確なキャラクターとスポーツカーとしての完成度の高さ(速さではない)は、ポルシェと真っ向勝負できる数少ないクルマかもしれない。

走りの印象として、とにかく軽さを感じる。ところが面白いことに、後で調べたら実は4台の中で車重はもっとも重かった。SVOのチューニングの妙を感じる。

サーキットで走ると、ステアリングを切った時の初期の応答性の高さに驚くが、一般道だとこれがちょうど良い。車速も操舵スピードも落ち、舵角も少ないシーンが多いからだろう。サーキットを走る実力はありながら、あくまで「ワインディングでちょうど良い」ところにあらゆるセッティングを合わせ込んでいるのだ。箱根を走っていても、イギリスのカントリーロードをイメージさせるような雰囲気がある。

また、どちらかと言えばラグジュアリーなイメージの強かったジャガーだが、最近「DNAはスポーツカーだ!」という主義主張が強くなった。

またその演出も非常にうまい。

たとえば、ワインディングでシフトスケジュールをスポーツモードにするだけでもリズミカルな走りが助長される。さらに、走行モードをダイナミックモードにすれば、アクセルレスポンスは高まり、アクセルオフではエキゾーストからパンパンと轟音を奏で、フットワークもよりシャープさを増す。

普通に走っていると上品だが、スポーツシーンでは違った表情を見せる。そんな二面性もFタイプ SVRならではの個性といえるだろう。

どのクルマも改めて“お国柄”を意識しながら主張を探ってみると、魅力や特徴がより明確となり興味深かった。またグローバル化が進む現在においても、やはり自国の道路状況や国民性、ブランドポリシーといった大事な“個性”がリアルスポーツには宿っていると強く感じた。

REPORT/佐藤久実(Kumi SATO)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)

【SPECIFICATIONS】※GENROQ 2017年7月号掲載時データ

ホンダ NSX

ボディスペック:全長4490 全幅1940 全高1215mm
ホイールベース:2630mm
車両重量:1780kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHCツインターボ+3モーター
総排気量:3492cc
最高出力:427kW(581ps)※
最大トルク:646Nm(65.9kgm)※
トランスミッション:9速DCT
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後ウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ディスク径:前381 後356mm
タイヤサイズ:前245/35ZR19 後305/30ZR20
最高速度:306km/h(非公式)
0-100km/h加速:3.0秒(非公式)
車両本体価格(税込):2370万円
※電気モーターの出力を含むシステム出力

ポルシェ911 ターボS

ボディスペック:全長4507 全幅1880 全高1297mm
ホイールベース:2450mm
車両重量:1600kg
エンジンタイプ:水平対向6気筒DOHCツインターボ
総排気量:3800cc
最高出力:427kW(580ps)/6750rpm
最大トルク:750Nm(76.5kgm)/2250-4000rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ディスク径:前410 後390mm
タイヤサイズ:前245/35ZR20 後305/30ZR20
最高速度:330km/h
0-100km/h加速:2.9秒
車両本体価格(税込):2630万円

シボレー コルベット Z06

ボディスペック:全長4515 全幅1970 全高1230mm
ホイールベース:2710mm
車両重量:1610kg
エンジンタイプ:V型8気筒OHVスーパーチャージャー
総排気量:6153cc
最高出力:485kW(659ps)/6400rpm
最大トルク:881Nm(89.8kgm)/3600rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ディスク径:前394(オプション装着車) 後388mm(オプション装着車)
タイヤサイズ:前P285/30ZR19 後P335/25ZR20
最高速度:未公表
0-100km/h加速:未公表(0-60mph:2.95秒)
車両本体価格(税込):1485万円

ジャガー Fタイプ SVR

ボディスペック:全長4475 全幅1925 全高1315mm
ホイールベース:2620mm
車両重量:1840kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCスーパーチャージャー
総排気量:4999cc
最高出力:423kW(575ps)/6500rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgm)/3500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ディスク径:前380 後376mm
タイヤサイズ:前265/35ZR20 後305/30ZR20
最高速度:322km/h
0-100km/h加速:3.7秒
車両本体価格(税込):1815万円

※GENROQ 2017年 7月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

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