クラシック・モデルの整備やレストアなどを手掛ける「ヤナセ クラシックカー センター」で披露されたメルセデス・ベンツ「190SL」に迫る! 約3年にわたる徹底したレストアによって、完成したクラシック・メルセデスはいかに?
ヤナセ クラシックカー センターとは?
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「ヤナセ クラシックカー センターが3年前からレストアしていた、1958年のメルセデス・ベンツ190SLがついに完成した」という知らせを受けて、第三京浜の港北インターからクルマで5分、神奈川県横浜市都筑区にある同センターまで見学に行ってきた。
建物の前には、いわゆるヤング・タイマーのW124(中型セダン)が数台、1970~1980年代の四角いSLが1台、メンテナンスの順番待ち、という感じで並んでいる。建物のなかに入ると、リフトに載せられたW124のワゴン、隣にW123のセダンがボンネットを開いて整備中だったりして、さらにその奥に、ジャジャーン! 新車のような輝きを放つ190SLがわれわれを待っていた。
190SLのレストアの話に入る前に、ヤナセ クラシックカー センターについて簡単に触れておきましょう。ここは、板金・塗装、輸入車のパーツを扱う、株式会社ヤナセオートシステムズというヤナセのグループ会社が、往年の名車を修復・復元する部署として、2018年4月に新設した。
同年6月に開所式を行い、クラシックカー先進国ともいえるドイツに本社を置く第三者検査機関のテュフ ラインランド ジャパン株式会社から「クラシックカーガレージ認証」を取得している。レストアに必要な知識、経験は勿論のこと、設備、作業環境、技術、接客、法令遵守など、150以上の項目を監査し、基準をクリアしている、というお墨付きをもらっている。「第三者機関が認めた工場で、正しいレストアをしていく」というコンセプトだからだ。
同センターの片岡浩一部長によると、「もともとこの工場は、ヤナセの関連会社で、メルセデス・ベンツの輸入会社のウエスタン自動車株式会社の施設だったんです。私もウエスタン自動車に入社したのですが、入社以来ずっと新車整備に携わっているメカニックもいます。ヤナセは60歳定年ですが、それ以降もメカニックを務めている社員もいて、彼らがいるあいだにクラシックカー センターを立ち上げて、古いクルマの技術継承をしていかなければいけない、ということもあり設立に至った」という。
ヤナセ(ウエスタン自動車)がダイムラー・ベンツ社の日本代理権を獲得したのは1954年。それから、1987年に輸入権がメルセデス・ベンツの日本法人に移行するまで、高度経済成長を迎え、バブル期へと向かう、日本がよき時代のとき、ベンツといえばヤナセ、ヤナセといえばベンツだった。現在、日本全国からこの当時のメルセデスが集まってくるのも、入庫車の8割がメルセデスというのもむべなるかな。
「外装だけきれいにして飾っておくのを希望されるお客さまもいらっしゃるのですが、優秀なメカニックがたくさんいるので、“乗って楽しむクラシックカー”を提供していきたい」と、片岡さん。
オーナーのこだわりを忠実に
さて、本題の190SLだけれど、2018年11月頃、この個体のオーナーから「ヤナセさんの思い通りのレストアをしてほしい」という問い合わせがあった。そのお客さん、(ヤナセのひとは「お客さま」と呼ぶのですけれど)との打ち合わせも含めて、この個体を担当したのが板金・塗装のメカニック、深田靖(ふかた・やすし)さんだ。
190SLは1956年にヤナセ本社で開催された展示会の写真にも写っていたが、1958年のこの個体はアメリカからの並行輸入車を、オーナーが日本で購入したものだった。まずまずのコンディションで、ちゃんと走ることもできたけれど、「当時の純正のシルバーで、内装は赤。コンクールに出せるくらいきれいにしたい」とオーナーは思っていた。そこで、持ち込まれたときのボディ色のクリーム色のペイントはほとんどはがし、バッテリーの下のフロア等、穴があいていたところを板金で修復したあと、往時のシルバーを再現して塗り直した。
パーツについては、本家「メルセデス・ベンツ社」にも問い合わせた。ブレーキ等は純正があるというところが、さすがメルセデスだけれど、ない場合は、ドイツのクラシック・メルセデス専門店から取り寄せた。真っ赤な内装は、ドイツから取り寄せた新品で、シート表皮は300SL“ガルウィング”の赤に近い革を選んだ。
一見、オリジナルに忠実だけれど、長身のオーナーに合わせて、シート座面はやや低めにあつらえてある。ラジオは鳴らなかったためスピーカーだけ載せ換え、ブルートゥースで好きな音楽を聴けるように、運転席と助手席のあいだに設けられた赤い小さなコンソール・ボックスのなかにはブルートゥース用のコントロールスイッチとUSBジャックが備えられている。この赤いボックスは木製で、深田さんが手づくりした。
幌はファブリックを張り替えている。パンパンに張ったほうがカッコいいけれど、開閉するときにうまくいかなくなる。さりとて、ゆるすぎると、今度はトップが垂れる。どのくらいで妥協するか、その判断がむずかしかったそうだ。
後編では、レストアの苦労などをリポートする。
文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)
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