荒木飛呂彦の漫画を実写化する劇場版最新作『岸辺露伴は動かない 懺悔室』が、5月23日(金)に公開される。主人公を演じる高橋一生がイタリア・ヴェネツィアでの1カ月間にわたる撮影を振り返った。
荒木飛呂彦の大人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズ第4部「ダイヤモンドは砕けない」(1992~95)に登場する漫画家・岸辺露伴。彼を主人公に据えたスタンドアローン作品が「岸辺露伴は動かない」だ。1997年に読切作品として「懺悔室」が発表。当時はシリーズ化の予定はなく、1999年刊行の「死刑執行中脱獄進行中 荒木飛呂彦短編集」に収録され、とある漫画好きの青年が手に取る。20余年後、自身が岸辺露伴その人を5年にわたって演じ続けることなど知らずに──。
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スタジオの一室に設けられた取材スペースで、高橋一生はゆっくりと当時を思い出していた。「岸辺露伴の取材旅行、というインパクトがいまも脳内に残っています。シリーズ化されるのは2008年発表の『六壁坂』からですが、露伴が金田一耕助のように蚊帳の外から自分の知らないところで起きている他者の業を見つめ、その人たちに対してではなく自分なりの落とし前を付けて去っていくフォーマットは、今作で既に確立されていたのではないでしょうか」
高橋にとっても、シリーズにおいても“原点”となるファーストエピソード。約5年の経験値を携えて「懺悔室」の映画化に挑み、イタリア・ヴェネツィアでの1カ月間にわたる撮影に身を投じた高橋を待っていたのは、自身と露伴との予想を超える“同化”だった。
「これまで、ドラマ第1期ではリアリティ路線、動きが増えた第2期ではデフォルメと、エピソードに合わせてお芝居のアプローチを変えてきました。そんななか今回は、自分が演じる露伴としての根本的な原点回帰になるだろう──と台本から感じてはいましたが、実際自分がヴェネツィアを訪れたとき、“それ以上”の露伴の動きが自然と出たのです。不本意な形で“幸運が降りかかってくる”という事態に対して露伴はどのように感じるか、“きっとこう思うはず”という想定を超えて頭に来てしまい、それがそのままお芝居として表出されました。直前までそんなお芝居をするつもりはなかったため面白い体験でしたし、自分は露伴を露伴たらしめている本質の部分を確固たるものとして掴んでいられたのだ、と思えた嬉しい日になりました」
役と自身が一体化する、忘我の境地に達した高橋。「映画1本ぶん使って、“岸辺露伴とはこういう人間”を再定義できた気がします。それを迷いなく出せたことは、僕にとっては成果でした。自分が露伴に同一化していた部分はもちろんありますが、露伴自体が僕に近しいものになった側面もあると思うのです」と相互作用によるものと分析する。
「僕自身、5年目の自分だったらそこまで怒っただろうかと思います。人に左右されたり、“あなたは幸運だよね”と言われたりすることに対して“それは僕が決めることだ”と憤ってしまう精神が生理的な反応として出たのは、僕自身が常日頃から露伴を感じて生きていたからだとも思いますから」
原作ファンや実写版を観続けてきた者なら、この高橋の発言に大いに納得することだろう。「だが断る」や「だから気に入った」といった名ゼリフに代表されるように、岸辺露伴は他者や世間のルールに縛られることを嫌い、自身の信念に沿って行動する人物だ。そのパーソナリティが脊髄反射的に出てしまうあたり、もはや高橋一生=岸辺露伴と言って差し支えないほど両者は分かちがたく結びついている。
「今回は『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』のように露伴自身のルーツに触れて、いつのまにか自分から伸びていた導火線に火がついており、彼が決着をつけないといけない話ではありません。自分由来のものではない火の粉をかぶりに行って払う物語のため、ことさら露伴が露伴らしくあることの面白さを大事にしたいと思っていました」
『岸辺露伴は動かない』というタイトルには、傍観者である立ち位置と共に、彼自身の揺るがなさも込められているのではないか──と高橋は推察する。そうした意味でも『懺悔室』は原点回帰的な意味合いを持つが、高橋がここまで“露伴らしさ”を獲得できたのには、原作と実写の“幸福”な往復書簡的関係も大きく寄与していた。高橋が原作に影響を受けているように、原作もまた実写版の要素を取り入れて進化し続けているのだ。5月に発表されたばかりの新作エピソード「ブルスケッタ」にもその要素は見られ、高橋はいちファンとして「本当に得難い体験」と恐縮しつつも歓迎。「自分自身、思っていたよりも露伴でした。今回の旅で、ことさら実感しました」と微笑む姿からは、安堵を超えた確固たる自信が感じられる。
現に、高橋一生のジョジョフリークぶりは凄まじい。『岸辺露伴は動かない 懺悔室』の舞台となるイタリアは、同作はもちろん「岸辺露伴は動かない グッチへ行く」や第2部「戦闘潮流」第5部「黄金の風」等々、原作とゆかりある場所。いわば聖地に足を踏み入れた高橋は、撮影開始前に約2日間かけてヴェネツィアの各所を探訪。「夜の街を歩いていると昼の顔とは明らかに違う“何か”が見えてきて、かの地の独特な風土と風景に触れて“これが荒木先生が感じていたものか”と得心しました」という感想は、まさにファン心理そのもの。原作読者にとって楽しみの一つである「ポップコーンキャッチ」シーン撮影時は自身の出番はなかったものの、「どうしても見たかった」とお忍びで現場を見学。「目の前で行われていることがジョジョの世界でしかなく、“素晴らしい!”とこっそり写真を撮りまくっていたらスタッフの方に見つかって止められてしまい、仕方なく帽子を取って正体を明かしました」というエピソードが何とも愛おしい。
さらに高橋は、原作ファンに目配せするようなある仕掛けを施したと教えてくれた。『岸辺露伴は動かない』シリーズは、『ジョジョの奇妙な冒険』アニメシリーズも手がける脚本家・小林靖子を起用しており、屈指のジョジョ通である彼女の手腕がいかんなく発揮されている。『懺悔室』でいえば、物語の約半分はオリジナル展開。短編である原作を拡張する仕様になっており、高橋は「実写としての世界観としても、ジョジョとしての世界観としても統一化されており、露伴の行動理念としても正解が描かれていて原作を逸脱しない。物語自体ともテンション感としても整合性が取れていますし、さすが小林さん!と言いたくなる凄まじい説得力でした」と敬意を表しつつ、さらなるエッセンスを付加。それは、原作→映画オリジナルと展開するポイントに“わかる人ならわかる”マーキングをすることだった。
「『懺悔室』の原作漫画で露伴が最後にしているポーズを、“原作の物語はここまででした”という意図で入れています。荒木先生の漫画の力をお借りして“ここから話は続きます”という繋がりを作れることが、本シリーズのフォーマットならではの面白さだと僕は感じています。原作を読んでいる方々には面白がってもらえるのではないでしょうか。僕が勝手にやり始めたことですが、すぐに察して採り入れてくれた渡辺一貴監督に感謝しています」
高橋によれば、他にもこうした遊び心が全編にちりばめられているそう。「事件に考えた計算ずくの行為ではなく、その場でぱっと浮かんで打算なしにやってしまったことなのが自分でも面白く感じています。5年分の蓄積もありますが、振り返ってみるとドラマ第1期の当初から行っていたことでもあり、間違いなくこのチームだからこそできたものです」
先述したように、『岸辺露伴は動かない』シリーズの原作漫画、そして小説はいまなお更新されて続けている。『ジョジョの奇妙な冒険』本編の最新シーズンとなる第9部「The JOJOLands」にも岸辺露伴は登場しており、この先の“一生露伴”の新作にも期待が高まるところ。岸辺露伴は動かず、往復書簡は終わらないのだ。
『岸辺露伴は動かない 懺悔室』荒木飛呂彦の人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズのスピンオフ「岸辺露伴は動かない」を高橋一生主演で実写化したテレビドラマの映画版最新作。原作漫画「岸辺露伴は動かない」シリーズの最初の作品「懺悔室」を基に、映画オリジナルエピソードを加えながら、邦画初となる全編ヴェネツィアロケで映画化した。
2025年製作/110分/日本
配給:アスミック・エース
劇場公開日:5月23日
高橋一生(たかはし いっせい)1980年生まれ、東京都出身。テレビドラマ・映画・舞台と幅広く活躍。舞台『天保十二年のシェイクスピア』で第45回菊田一夫演劇賞、NODA・MAP『フェイクスピア』で第29回読売演劇大賞最優秀男優賞を受賞。近年の主な出演作にドラマ『おんな城主 直虎』『雪国-SNOW COUNTRY-』『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の憂鬱』、映画『ロマンスドール』『スパイの妻』『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』など多数。連続ドラマW『1972 渚の螢火』(WOWOW)が今秋放送予定。
写真・長友善行
スタイリング・秋山貴紀(A Inc.)
ヘアメイク: 田中真維(MARVEE)
文・SYO
編集・神谷 晃 AKIRA KAMIYA(GQ)
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