現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 今は不穏な空気に包まれているLA、カリフォルニアで、僕が過ごしたハッピーでかけがいのない時間

ここから本文です

今は不穏な空気に包まれているLA、カリフォルニアで、僕が過ごしたハッピーでかけがいのない時間

掲載 3
今は不穏な空気に包まれているLA、カリフォルニアで、僕が過ごしたハッピーでかけがいのない時間

60年前のLAは平和でハッピーだった‼


岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第261回


LAを中心にしたカリフォルニアは、今、不穏な空気に包まれている。デモがあちこちで起き、それに対峙する多くの警官と警察車両が動員されている。

LAが、カリフォルニアが大好きな僕には、このところ連日のようにTVニュースで流されるこうした光景は、とても悲しく、見るに堪えない。

僕が初めてLAに降り立ったのは1964年。61年前のこと。オレンジ色の夕陽に包まれた海も山も街も、美しく暖かく輝いていた。


僕はサンタモニカをベースに1カ月ほど滞在したが、不快に感じたこと、怖いと感じたことなど1度もなかった。

嘘だと思うかもしれないが、ほんとうだ。人々はフレンドリーだし、多くのところで、見知らぬ日本人を温かく迎えてくれた。

サンタモニカの隣りの、ベニスに住んでいた日本の友人をまずは訪ねたが、頼る気はまったくなかった。来た以上は挨拶くらいはしなければ、、と言うことで訪ねた。

彼は僕よりひと回りほど年上で、バイク好きの知り合いから紹介された。優秀な工業デザイナーで、ヤマハYA-1やヤマハYD-1のデザインにも中心人物の一人として関わっていた。

そんな彼が、さらに前に進もうとアメリカに渡り、当時から「アートの町」と言われていたベニスに居を構えた。

彼はまず、サンタモニカに住む50歳くらいの女性を紹介してくれた。「なにか困ったことがあったら彼女に相談しろ。必ずいい答えを出してくれるから、、」ということだった。


とても明るく親切な女性で、拙い英語しか話せない僕に、嫌な顔ひとつせずに接してくれ、話を聞こうとしてくれた。

彼女はNASAで要職についていた最愛のご主人を、半年ほど前に亡くされたばかり、、と、友人から聞いたが、同時に「もう立ち直っていると思うよ!」とも言われた。

僕の英語力ではお悔やみを言いたくても、うまく言う術がなかった。なので、友人に代弁してもらったのだが、「ありがとう! でも、もう大丈夫よ!」と、笑顔で返してくれた。

彼女はサンタモニカ ピアから近い一軒家に住んでいた。そこで毎週のように、週末の夜のパーティーが開かれ、僕も呼ばれた。

日本でもパーティーには時々顔を出していたが、あまりパーティー好きとは言えなかった。

でも、彼女の家でのパーティーはすぐ好きになった。集まる人達は特に着飾るでもなく、ほとんど普段着のまま。それに招待されていない人でも、彼女は笑顔で迎え入れた。


そして、知らない人たちがすぐ笑顔で話し始め、楽しそうに踊り出す。彼女の家のパーティーに参加した人達はみんな、以前からの知り合いのように、なんの壁も無い友達になる。

日本人は僕一人だったが、壁はまったく感じなかった。GFを紹介してくれて、「彼女と踊って!」と言ってくれた人も何人もいた。

「僕、ダンス下手なんです」、、と言っても、「大丈夫だよ。音楽に合わせて、身体を動かしていればいいんだから、、」と、背中を押す。女性も、「さあ、踊りましょう!」とニコニコしている。

そんなやりとりをしていると、パーティーのホストの彼女が来て、僕を紹介し、彼や彼女たちを紹介してくれる。

すると、電話番号を書いたメモを渡してくれて、「オレの家にも遊びにおいでよ。親父やお袋も歓迎すると思うよ!」と誘ってくれる人もいた。

このパーティーで、僕はサンタモニカに多くの友人ができた。そして、彼ら、彼女らの家でのパーティーやピクニックに誘われた。


「サンタモニカの人たちって、なんて優しくて親切な人たちばかりなんだろう、、」。僕は、ちょっと信じられない思いだった。

そんなこともあって、僕のサンタモニカ通いは始まった。前にも話したが、カリフォルニアやアリゾナの沙漠が好きなことも加わって、多い時は年に3~4回は行った。

僕に多くをくれたサンタモニカの女性を、僕は東京に招待した。僕の家に泊ってもらい、東京を案内した。

幸い、父が英語に堪能で、よく時間をとって付き合ってくれたので、彼女も、大いに東京を楽しんだはずだ。

LAに行けば足は当然クルマ / レンタカーということになる。僕が初めて行った時に借りたのはマスタング 2ドア HT。ほんとうに乗りたかったのはV8のコンバーチブルだったが、僕の財布では到底届かなかった。

この時が、初めての海外での運転だったが、なぜか、まるで不安もなかったし、緊張もしなかった。


モーテルの近くのレンタカー屋で借りたが、僕の財布で借りられるのは6気筒のマスタングHTで精一杯だったのだ。

でも、お気に入りのイエローのボディカラーもあったし、「マスタングでLAを走れる夢」が叶っただけで大満足!

6気筒 2.8ℓエンジンは 120馬力で、ATも3速。アメリカ車らしい豪快な走りは望むべくもなかった。それでも、日本の小型車より当然ガソリン消費は多い。なので、ガソリン代が心配だった。

だが、当時のアメリカのガソリン価格は「1ガロン/30セント」ほど。日本円で1リッター/15~20円程度だった。これは助かった。

ちなみに日本のガソリン代はといえば、たしか、1リッター/50円程度だったと思う。

細い3本スポークと細いグリップの華奢な、、でも、オシャレなハンドルはパワーアシスト付き。とても軽い。


1959年当時には、僕のGF(1962年に結婚)の家には、すでにビュイックが、次いでオールズモビルがあり、僕もよく運転させてもらっていた。なので、アメリカ車の運転感覚は十分身についていた。

生まれて初めての右側通行にも、すぐ馴染んだ。右側通行を意識しながらの運転は2日間くらいだけだったと思う。

また、当時のLAはドライバーのマナーもよく、街中の道路では、ほとんどのクルマが制限速度を守っていた。

車間距離もゆったりしていたし、ルールも守っていた。だから、初めての右側通行でも、怖いと感じたことは皆無に近かった。

「あそこには行かない方がいいよ」と注意された場所も何箇所かあったが、それを守ったので、危険なめに遭ったこともなかった。

とにかく、LAは僕にとって天国だった。そんなLAが、カリフォルニアが、、今は不法入国者問題で大揺れしている。


多くの警官が、警察車両がバリケードを張り、直接的な行動は起こしていないが、州兵までも動員されている。当然、こうした混乱に乗じた略奪や破壊行為も起こっている。

TVには、とかくセンセーショナルな映像が映し出されることが多いが、LA通の友人から「実際にはそれほどひどくはないよ」と聞きホッとしている。

でも、ドジャースの試合を、大谷の活躍を観に行った人、行こうとしている人達等、旅行者等は、かなりの影響を受けているようだ。

不法入国者の問題は尾を引きそうだが、いずれにしても、僕が大好きだった、天国だと思っていたLAに、カリフォルニアに、早く平穏が戻ってほしい。

若い頃に知り合い、僕に多くのハッピーな思い出を残してくれたLAの友人も、当然高齢になっているし、亡くなった人も多い。

LAではなくニューポートビーチの住人だが、家族ぐるみで付き合っていた「一生の友」ご夫妻も今は亡い。


でも、LAが、カリフォルニアが、与えてくれた、ハッピーでかけがいのない時間が、僕の心から消えることはない。

溝呂木さんには、大好きだったサンタモニカビーチの絵を描いて頂くことにした。

底抜けに明るく平和なビーチに象徴されるような日々が、LAにカリフォルニアに、1日でも早く戻ってくることを願って止まない。


こちらの記事も如何ですか?

● MGAのシンプルで美しいデザインは憧れの年上の女性のような妖しい魅力で僕の心を揺さぶった
● 歴史に名を遺す名車が綺羅星のごとく誕生した1960年代の日本車事情とは?
● シンプルだけど安っぽくはない。「テスラ モデル3」は万人向けではないけれど素晴らしいEV車だ

文:LEON
【キャンペーン】第2・4金土日は7円/L引き!ガソリン・軽油をお得に給油!(要マイカー登録&特定情報の入力)

こんな記事も読まれています

愛車の履歴書──Vol73. 永島敏行さん(前編)
愛車の履歴書──Vol73. 永島敏行さん(前編)
GQ JAPAN
ハコスカにケンメリに……スカイラインには名車が多すぎる件
ハコスカにケンメリに……スカイラインには名車が多すぎる件
ベストカーWeb
【試乗リポート】アウディの大本命「Q6 e-tron」。EV食わず嫌いの方もぜひお試しあれ!
【試乗リポート】アウディの大本命「Q6 e-tron」。EV食わず嫌いの方もぜひお試しあれ!
LEON
2025年のプジョーとは?新型「プジョー 3008」はヒットの予感
2025年のプジョーとは?新型「プジョー 3008」はヒットの予感
AutoBild Japan
リック・オウエンスが語る、パリの回顧展と30余年の歩み──「誘惑し、堕落させなくてはならない人たちがまだいる」
リック・オウエンスが語る、パリの回顧展と30余年の歩み──「誘惑し、堕落させなくてはならない人たちがまだいる」
GQ JAPAN
少年の心を鷲づかみにしたカウンタックにヨーロッパにストラトス! 実際に乗ってみたら「マジか……」なスーパーカーたち
少年の心を鷲づかみにしたカウンタックにヨーロッパにストラトス! 実際に乗ってみたら「マジか……」なスーパーカーたち
WEB CARTOP
【海外出張旅】ホテルの窓から充電ケーブル ドイツで乗り回したソウルレッドのCX-60PHEV
【海外出張旅】ホテルの窓から充電ケーブル ドイツで乗り回したソウルレッドのCX-60PHEV
Auto Prove
カーデザインの巨匠が描いたルックスも魅力的! 乗るだけで「豊かな気分」になれるフィアット初代「パンダ」はなぜ人気?
カーデザインの巨匠が描いたルックスも魅力的! 乗るだけで「豊かな気分」になれるフィアット初代「パンダ」はなぜ人気?
VAGUE
【どんだけー】サイバートラックも!アンビリーバボーなほど超リッチなドバイ警察のパトカー!信じられない程豪華な特殊部隊用車両の存在理由とは?
【どんだけー】サイバートラックも!アンビリーバボーなほど超リッチなドバイ警察のパトカー!信じられない程豪華な特殊部隊用車両の存在理由とは?
AutoBild Japan
ベントレー 次世代車コンセプト『EX 15』発表 最上級リムジン、ミュルザンヌ後継か
ベントレー 次世代車コンセプト『EX 15』発表 最上級リムジン、ミュルザンヌ後継か
AUTOCAR JAPAN
ケンメリと兄弟なのに、その愛称は「ブタケツ」。ヤンチャな漢たちから愛された、憧れの高級クーペ
ケンメリと兄弟なのに、その愛称は「ブタケツ」。ヤンチャな漢たちから愛された、憧れの高級クーペ
月刊自家用車WEB
後ろ向きに跳ね上がる「バンザイドア」がアイコン! かの奥山清行が送り出した「kode57」は日本の誇りだった
後ろ向きに跳ね上がる「バンザイドア」がアイコン! かの奥山清行が送り出した「kode57」は日本の誇りだった
WEB CARTOP
いかついクルマは好きですか? 進化型「GRカローラ」がクルマ好きを虜にする理由【瀬イオナの試乗レビュー】
いかついクルマは好きですか? 進化型「GRカローラ」がクルマ好きを虜にする理由【瀬イオナの試乗レビュー】
くるくら
今こそ乗りたい反撃のクルマ!
今こそ乗りたい反撃のクルマ!
グーネット
【アルフィスタ必読】思い出したのはアルファスッド!アルファ・ロメオ・ジュニアはその気にさせるディテール満載
【アルフィスタ必読】思い出したのはアルファスッド!アルファ・ロメオ・ジュニアはその気にさせるディテール満載
AUTOCAR JAPAN
【Forever ALPINA】BMWアルピナ最終モデル、B3 GTは世界最良の快速ツーリングカーでありビスポークモデル。すべてが最高である!
【Forever ALPINA】BMWアルピナ最終モデル、B3 GTは世界最良の快速ツーリングカーでありビスポークモデル。すべてが最高である!
カー・アンド・ドライバー
2028年完成予定のベントレーレジデンス・マイアミのペントハウスを公開
2028年完成予定のベントレーレジデンス・マイアミのペントハウスを公開
OPENERS
オーナーだけしか味わえない至福の時間! ランボルギーニが開催する3日間の贅沢ツーリングに参加してみた
オーナーだけしか味わえない至福の時間! ランボルギーニが開催する3日間の贅沢ツーリングに参加してみた
WEB CARTOP

みんなのコメント

3件
  • zuq********
    30年ほど前にサンフランシスコに住んでいましたが、楽しみの休暇はモーテルを泊まりながらのロングドライブですね。西海岸から内陸のグランドキャニオン、モニュメントバレーやヨセミテ公園は良く行きました。アメリカの魅力はあの広大な大自然と乾燥した空気、時間が止まったような田舎の雰囲気だと思います。日本に帰国する前にサンフランシスコからニューヨークまで車で走ったのは一生の思い出ですね。
  • ega********
    私は少し後の1978年に初めてロスに行きました。私はサンタモニカではなくもっと南のラグーナビーチに少し住んでたのですが、本当に夢で描いてたカリフォルニアそのものがそこにはありました。アート関係のお店も沢山ありダウンタウンでは何時も顔を出してました。最後に訪れたのがもう25年位経つんですが、あの辺りは多分そんなに変わってないと思います。また行きたいです
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2480 . 0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

880 . 0万円 1580 . 0万円

中古車を検索
フェラーリ カリフォルニアの買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2480 . 0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

880 . 0万円 1580 . 0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村