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フェラーリ製V8ツインターボ マセラティ・レヴァンテ・トロフェオに試乗 590psのテノール

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フェラーリ製V8ツインターボ マセラティ・レヴァンテ・トロフェオに試乗 590psのテノール

590psを生むフェラーリ製V8エンジン

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

【画像】トロフェオとグランルッソ&スポーツ 全55枚

レヴァンテの中でも最も悪そうで、異常までに速いモデルが登場した。ハイエンド・ハイパフォーマンスSUVの需要は増える一方で、SUV参入には遅れ気味だったマセラティも市場の期待にこたえるのは時間の問題だったといえる。ライバルは、ポルシェ・カイエン・クーペ・ターボやレンジローバー・スポーツSVRなどツワモノ揃い。

レヴァンテ・トロフェオを簡単に説明するなら、フェラーリ譲りのエンジンが搭載されたマセラティ製SUV。フィアット・グループの資産を活用し、アルファ・ロメオのQ4と呼ばれる4輪駆動システムとトランスミッションが組み合わされる。そこにマセラティ独自のエンジニアリングを組み合わせ、世界最速のSUVの1台が誕生することになった。

エンジンはマラネロ製の3.8L V型8気筒ユニットで、レヴァンテGTSにも採用されているもの。そこにマセラティ製のカムシャフトとバルブ、シリンダーヘッド、ピストン、コンロッドなどが組み込まれている。2基のツイン・スクロールターボを結合し、独自のエンジン・マネージメントシステムで制御。最高出力は590ps/6250rpmで、最大トルクは74.8kg-m/2500−5000rpmを発生する。

増強されたパワーを受け止めるために、シャシー周りもアップグレード。サスペンションは車高を35mm下げることができる、エアロ2モードが追加されたエアサスペンションとなる。ドライビングモードの「コルサ(レース)」の設定も新しくなり、スプリングとダンパーの設定は引き締められ、20%ほどレートが高くなっている。同時にESPの制御は緩くなり、スロットルレスポンスは一層シャープに味付け。8速ATの変速タイミングも変更された。

軽量化に努めるも車重は2170kg

4輪駆動システムを搭載するが、GTSと同様に、Q4は基本的には後輪駆動。スリップを検知した時に限り150ミリ秒という短時間で、フロントタイヤへもトルクを伝えるように切り替わる。トルク分配割合は最大で50:50となる。トロフェオを正真正銘のドライバーズカーたらしめるべく、リアアスクルには機械式のリミテッド・スリップデフも搭載。ちなみにコルサモードでは、後輪駆動状態をより長く維持するように設定されている。

これら磨き上げられたドライブトレインを最大限活かすため、ESPも最新世代のものに書き換えられた。車両前後の傾きのピッチ軸、左右のヨー軸に加えて、ステアリングホイールの舵角、路面速度、スロットルアングルやATの段数などを総合的に判断し、クルマがグリップオフする前に、事前にコンピューターが考え、構えてくれるとのこと。

そのほか、22インチの鍛造アルミホイールに、コンチネンタル製のタイヤを採用。フロントの幅は265、リアは295というスーパーカーサイズだ。そのほかにもエクステリアでは、ボンネットにえぐられたエアベントに、1Fから発想を得たというカーボンファイバー製のリアディフューザー、フロントバンパーにくり抜かれたエアベントなどが凄みを効かせる。さほど空力的に優れているようには見えないけれど。カーボンファイバー製のパーツを多用し軽量化にも努めているが、レヴァンテ・トロフェオの車重は2170kgと、軽くはない。

車内によじ登ると、1対の彫りの深いスポーツシートが目に飛び込んでくる。ヘッドレストにはトロフェオのロゴが赤く刺繍されている。インテリアの化粧パネルなど、カーボンファイバーが多様されているが、上品な織り目が美しい。シートやダッシュボードには一級品の柔らかなレザーが張られ高級感に溢れるが、目を凝らすと安っぽいプラスティック製のパーツも見えてくる。12万4900ポンド(1623万円)もするのに。

右足を動かすのが楽しくなるサウンド

レヴァンテはATのみだが、フェラーリが開発したエンジンの素晴らしさは目減りすることはない。0-100km/h加速はローンチコントロールを用いれば3.9秒でこなし、パフォーマンスは充分。エグゾーストノイズも思わず笑顔が溢れる響きだ。

赤く結晶塗装されたカムカバーはイタリア製エンジンの伝統。スポーツエグゾーストはスポーツモードを選択するとバイパスバルブが開き、白眉の音響を生み出す。レンジローバー・スポーツやジャガーFペースSVRで得られるような、派手な轟音を聞くことはできない。だが、回転数を上げるほどに咆哮は大きくなり、アクセル操作に合わせて破裂音や雷鳴のような唸りを鳴らす。素晴らしいボリュームのテノールに、右足を動かすのが楽しくなる。

ピークトルクの発生は2500rpmからだが、それ以下の回転数でもかなり力強い。ターボラグもほとんどなく、トルクカーブはフラット。レブリミットの1000rpmくらい手前での回転上昇は一層鋭く、V8エンジンの刺激は最高潮に達する。つまり狭い旧市街地の道でも扱いやすく、ポルシェ・カイエン・クーペ・ターボ並みに速い。

トランスミッションはおなじみのZF製8速AT。オートモードではスムーズでキビキビとした変速を披露するし、ステアリングコラムに固定されたパドルを弾けば、150ミリ秒という瞬間技で変速を決めてくれる。

活発に路面を蹴り進む運転の楽しさ

より積極的な設定を得たドライブモードの「コルサ」を選んでいても、脚周りはイタリアの傷んだ路面をうまく処理してくれ、カイエンのスポーツ+モードより我慢いらず。スチールコイルではドイツ製のライバルモデルよりも処理で劣るのかもしれないが、エアスプリングの生む親しみやすさは悪くない。

車体は大きく、最終的にはボディ・マスを実感させられるが、活発に路面を蹴り進むトロフェオの運転は驚くほど楽しい。ESPは知覚できないうちに4輪それぞれを個別にブレーキングさせ、アンダーステアを抑え込み、クルマの向きを変えていく。加えてスカイフック・アダプティブダンパーは路面と呼吸を合わせるかのように、ボディの揺れを抑える。

限界近くまで攻め込んでいくと、大きな起伏では、イン側のタイヤがやや浮き上がるような印象もあるし、ボディロールに伴い外側のリアタイヤへ荷重が高まってしまう。しかし湿った低速コーナーでスロットル操作を積極的に行えば、テールアウトさせることも可能だ。

そこまで気張らなければ、変速も軽やかに潤沢なトルクをシームレスにタイヤへ伝え、コーナーを素早く交わしていく。コーナリング途中でのライン変更は余り好まないクルマがゆえに、進入時の操作やスピードは適正である必要はある。しかし、高い満足感が得られるだろう。

ダイナミクス性能で気になる部分となると、ステアリングだ。クイックで正確性も高いのだが、スポーツモードやコルサモードでの重み付けとフィードバックが、やや人工的な雰囲気がある。コンフォートモードが一番自然なのだった。このコンフォート状態での、静かで柔らかいレヴァンテ・トロフェオは、エアスプリングのしなやかさも加わり、とても快適なクルーザーとなる。

SUVでは唯一の戦闘力と音楽性

その他のパッケージングに大きな変更はない。全体的な品質としてはドイツ勢の後手に回っている感は否めず、プラスティック製パーツやスイッチ類の操作感は、わずかにFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)水準的なところもある。タッチモニター式のインフォテイメント・システムも、最新のベストと比べると、旧世代的に思えてしまう。

それでもインテリアは、いかにもイタリアンな一流品質のレザーで丁寧に仕上げられ、折り目の美しいカーボンファイバーとのコントラストが生む雰囲気は素晴らしい。広々としたレヴァンテの車内に特別感を与えている。ウエストラインはボディ後半に行くにつれて上がり、リアウインドウは小さいため、リアシートは視覚的には薄暗い。選ぶなら、テスト車両のような明るいトリムカラーが良いだろう。

突出した走行性能とプレミアム品質という点では、マセラティ・レヴァンテ・トロフェオはポルシェ・カイエン・クーペ・ターボに及ばないことは認めざるを得ない。だがマセラティの方が当たりが柔らかく、一般道ではずっと親しみやすい。車重と車格は常に意識しておく必要はあるが、驚異的なスピードで大地を移動できることも事実。

そして何よりもマスターピースともいえる、フェラーリ製のエンジンがフロントに宿っている。その本物の戦闘力と音楽性は、それだけで価値がある。完璧とはいえないながらも、大型SUVというカテゴリーでは唯一といえる、強い魅力と個性を備えたクルマこそ、レヴァンテ・トロフェオ。価格は安くないが、このカテゴリーに興味を持つなら、充分検討するに値するクルマだといえるだろう。

マセラティ・レヴァンテ・トロフェオのスペック

価格:12万4900ポンド(1623万円)
全長:5020mm
全幅:1981mm
全高:1698mm
最高速度:304km/h
0-100km/h加速:3.9秒
燃費:4.6−4.8km/L
CO2排出量:258−261g/km
乾燥重量:2170kg
パワートレイン:V型8気筒3799ccツインターボ
使用燃料:ガソリン
最高出力:590ps/6250rpm
最大トルク:74.8kg-m/2500−5000rpm
ギアボックス:8速オートマティック

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