1974年にデビュー以来、コンパクトFF車のベンチマークであり続けるフォルクスワーゲン ゴルフ。日本でも間もなく8代目となる新型が発表されるが、その前に初代から現行型までのゴルフを振り返ってみたい。今回は、6代目ゴルフのデザインについて語ろう。
ワッペングリルから一新、まったく違うフロントグリルに
ゴルフ6は、比較的オーソドックスなデザインといえるかもしれないが、実はゴルフ6の最大の注目点はそのデザインにあった。デビュー時には、フォルクスワーゲンはこの新しいデザインについて、積極的にプロモーションを行なった。
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ゴルフ4以来、フルモデルチェンジのたびにゴルフはデザインが話題になっているが、ゴルフ5では上級モデルに新たにワッペングリルが採用され、ゴルフ6では、そのワッペングリルのニューバージョンが採用される予定だった。ところが開発終盤になってそれがお蔵入りになり、まったく違うフロントグリルが採用されたのである。
このデザイン変更の背景には、やはり経営変革があった。経営改革の一環で、ゴルフ5で問題になっていた欠点を改善した6が生まれたのだが、その改革を象徴するのが、ゴルフ6のデザインだった。
新しいデザインを主導したのは、2007年2月にフォルクスワーゲン グループのデザイン部門トップに就任したワルター・デ・シルヴァだった。1月には新会長のヴィンターコルンが就任しているから、これは経営改革にともなう人事だったといえる。デ・シルヴァは就任するとすぐに、もうほとんど決まっていたと思われる新型ゴルフ6のデザインを修正させた。実際には、公式に就任した日付より前から作業を始めていたといわれるが、ゴルフ6の発表は2008年10月なので、直前でのデザイン変更だった。
実は2006年8月に、ゴルフ6も含めたフォルクスワーゲンの新しい顔になるとして、ワッペングリルのニューバージョンを採用したコンセプトカー「IROC」が発表されていた。そのようなブランド戦略の方向性を外にアピールしたあとでの変更だから、ゴルフ6のデザイン変更はまさしく大変革である。
ゴルフ6の新しいデザインの核心的部分は、横一文字のシンプルなグリルを持つフロントマスクだ。そしてそれも合わせて、ボディ全体に水平基調の直線が多く使われている。このデザインがゴルフのみならず、今後のフォルクスワーゲンの新しいデザインであると説明され、実際その後そうなっていく。
多くのメーカーが「ブランドの顔」を制定するようになる
ゴルフ5で採用されていたワッペングリルは盾型の形状で、これはビートルにルーツを求めたデザインだった。それに対し、デ・シルヴァが制定した水平基調のシンプルなデザインは、ゴルフ1にルーツを求めたものだった。現代のフォルクスワーゲンには、ビートルよりも初代ゴルフのデザインのほうが模範とするのに適していると判断されたのだった。
ジウジアーロがデザインしたゴルフ1の極めてシンプルで虚飾を廃したデザインに、現代のフォルクスワーゲンの原点があると考えたわけである。もちろんビートルの存在こそフォルクスワーゲンの原点だが、ワッペングリルは国民車ビートルの哲学を反映したとは思えないものだった。
ゴルフ4で初代ゴルフへの回帰が強力に行なわれ、それがゴルフ5ではビートルまで持ち出されるようになったが、ゴルフ6で再び初代ゴルフに立ち返ったというわけだ。
この当時、世界のメーカーで、ブランドの顔を制定する動きが目立っていた。同じフォルクスワーゲン グループのアウディでも、ひと足早くシングルフレームグリルという縦長の大きなグリルが採用され、それが今も定着している。実は、それは当時アウディのトップだったデ・シルヴァが主導して、日本人スタッフの和田智とともに採用したものだった。デ・シルヴァは、高級車のアウディにはそれが適していると考えたが、大衆車でもあるフォルクスワーゲンにはシンプルなデザインが適していると判断したわけである。ちなみにシングルフレームグリルがイメージしたのは、戦前のアウトウニオン レーシングカーだった。
そのほか、日本のスバルはスプレッドウインググリルという飛行機をイメージした押し出しの強いグリルを採用したが、これはワッペングリルと同様に定着せず、六角形のヘキサゴングリルを新たに採用した。またいっぽう高級ブランドのレクサスは、アウディに影響されたかのようなインパクトの強い鼓型のスピンドルグリルを採用し、これは定着した。ブランドの顔を示すデザインを作り出す動きが、この頃の自動車界で多くなっていた。
フォルクスワーゲンはこのころ目立っていた自意識過剰なデザインの流行を達観して、シンプルなデザインこそ、国民車から出発して合理的なクルマづくりを信条とする、自らのブランド哲学に沿うものだと再認識した。フォルクスワーゲンのデザイン改革も二転三転したが、今度の新デザインは定着し、ゴルフはその後、7代目、8代目と、基本はこの6代目のデザインを進化させていくことになるのだった。(文:武田 隆)
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