軽自動車の立ち位置はいまやファーストカーに
近頃クルマがかなり高価になった。アレもコレもと装備を増やすとなれば、それも当たり前。さらに原材料高騰だの円安などとくれば当然の流れなのだろう。
N-BOXカスタムの「優等生顔」はやっぱり選んでもらえなかった! 「オラオラ顔」化理由も含めてマイチェンのキモを開発責任者に直撃した
この状況は庶民の味方だったはずの軽自動車だって変わらない。うっかりオプションをテンコ盛りにしたら300万円の壁だって優に超えてしまうものもある。
ならば普通車に行けば良いかといえば答えはノーだったりする。どのカテゴリーも高価になる流れは変わらず、普通車が視野に入ったとしてもベーシックモデル。サイズだけちょっと大きくても、肝心の装備はそれなりなんてことも。
そんな現実を考えると、軽自動車が一気に魅力的に見えてくる。背伸びして上を狙うよりも、軽自動車のトップを選んだほうが幸せなのでは? それがこの企画の裏テーマだと筆者は見ている(あながち間違いではないはず!?)。
各社が市場に投入するターボやEVのゴージャス仕様は一体どんな世界を見せてくれるのか? また、ライバルと見比べるとどんなメリットが見えてくるのか? 今回は話題の軽自動車たちをドライバー目線で乗り比べてみた。
■ダイハツ・ムーヴ/ターボでパワフルだが唐突な反応が気になる
まず、ほかと比べるとお買い得感のあるムーヴから。ターボモデルにも関わらず、N-BOXのNAと同等の価格に設定されている。もちろんハイトワゴンなのでN-BOXとジャンルは違うのだが、今回のモデルからスライドドアを装備しているし、高さを考えなければコレってアリかも、なんて思わせてくれる立ち位置にいる。
乗り込んでみても1655mmの背の高さは感じない。走ればその全高が効いている感覚で、スーパーハイトワゴンとは違った重心からくる素性の良さを感じる。実際、乗り味も穏やかだ。
運転席の装備としてはメーターがアナログなところがいまでは古くも感じるかもしれないが、個人的にはホッとするような感じで、これはこれで悪くない。ターボモデルでは電動パーキングも装備されているし必要な物は揃っている。
走ってみるとパワフルだが、アクセルの唐突な応答と、アイドリング振動が気になる。また、パワステの戻り方向の制御の荒さ、ACC時のステアアシストが少ないのがいまひとつ。全体的にリニアさがほしい。
■ホンダN-BOX/乗ればわかる売れる理由! 走りも装備も完成度高し
一時期はスペーシアに抜かれそうになったこともあったが、相変わらず販売台数トップに君臨しているN-BOX。思い返せば現行型にスイッチした直前も販売台数は変わらず。新型にする意味ってあるの? って思ったものだ。
今回のターボモデルは微振動も少なく低回転からしっかりとしたトルクが得られ、回転数を上げなくても交通の流れに難なく乗れるところがいい。アクセルの応答性もリニアで、唐突感もなく扱えるところが嬉しい。その落ち着いたエンジンに加え、NAモデルにはない遮音材がドアまわりやルーフライニングに使われており、走行中に不快なノイズを感じない。
フットワークはNAより引き締められた印象があるが、ほかと比べればかなりしなやかな部類で、まるでフランス車っぽい感覚だ。けれどもステアリングの感触は骨太であり、切り込む際も戻す際もリニアに応答してくれる。
ACC使用時の車線キープもしっかりとしており、質感が高いと思えるところがマル。ありとあらゆる領域が円熟のときを迎えているとさえ感じる仕上がりがある。こりゃ売れるわけだ!
N-BOXを追うライバルたちも個性的
■三菱デリカミニ/ヤンチャな見た目だがじつはシットリしなやか
N-BOXの完成度に驚いてばかりはいられない。次は日産ルークスの兄弟車といえるデリカミニ。けれども、デリカD:5の弟分という立場もある。2代目である現行型は、見た目から中身までよくぞここまで成長してくれたものだと感心した。
キープコンセプトで登場した2代目デリカミニは、エクステリアを見比べてどちらが新しいのか言い当てられる人は少ないだろう。
だが、中身はショックをカヤバのプロスムースにしたり、フロントのナックルをアルミ製にしてバネ下の重量を軽減したりと、シャシーはキャリーオーバーながら着実に進化している。そこは基本的にルークスと変わらずである。
今回持ち込んだ4WDモデルはリヤサスがトルクアーム式3リンクとなること、そしてタイヤの扁平率をFFルークスの55から60に変更。外径を少し大きくすることで、最低地上高は10mm高くなった。
その結果、しなやかさが際立つ乗り心地に。ちょっとヤンチャさがあった動力系が穏やかに感じるところもマルだ。
■日産ルークス/デリカミニの兄弟車だが走りの味は違っていた!
ピラーを先代よりも立たせることで室内長トップの座を取りに行ったルークス。結果としてルーフは前に出て頭上が重く、少しばかり運動性能としては不利になるのだが、ソコを収めるためにフロントのスタビを太くしたり、足まわりをカヤバのプロスムースにしたりと対処。さらにナックルをアルミ化するなどの努力は兄弟車のデリカミニと変わらない。
だが、55扁平のタイヤを採用したFFモデルは乗り比べるとまるで印象が異なるくらいオンロード向けに仕上がっているから面白い。目線が下がったこともあるが、コーナーリングは安定感が高く、けれども路面のうねりや突起はしなやかに吸収してくれる。
N-BOXはフランス車のようだと記したが、コチラは軽自動車界のドイツ車か!?
シャキッと走りが良い感覚が嬉しい。また、プロパイロットを入れた時のステアリング支援が「まかせとけ!」とばかりにガッツリと導いてくれるところは頼り甲斐ある仕上がり。見た目とは裏腹に硬派な1台だ。
■スズキ・スペーシア/使い勝手だけでなくリニアな反応の走りもよし
軽自動車といえばスズキだが、今回ピックアップしたのは販売台数で王者N-BOXを猛追しているスペーシアから、マイルドハイブリッドにターボを搭載したスペーシアカスタムだ。
スペーシアカスタムの特徴といえば後席の多彩なアレンジやポケットの多さなどが注目されるだろう。だが、フロントまわりの作りにもギアとしての立ち位置が強く感じられる。収納ポケットが多くてちょっと武骨なスタイル。おまけにヘッドアップディスプレイがあるなど盛りだくさん。さすがはN-BOXに続く売れ行きだけのことはある。
だが、それで終わりじゃない。このクルマはいまやスーパーハイトワゴンで唯一となるマイルドハイブリッド搭載車であることが特徴のひとつ。おかげでターボモデル燃費は同じカテゴリーでナンバーワン。やはりバッテリーを積んでいると、このあたりは有利だ。
けれども走ってみるとそれだけで終わっていない。走り出しからトルクフルでグングン速度を重ねて行く余裕がある。敏感すぎず、ちょうどいい応答のアクセルも好感触。シャシーはしなやか系ではなく引き締まった感覚。でも、ダンピングは悪くない。アウトドア気分が高まるスタイルと走りのテイストがマッチした仕上がりだ。
■ホンダN-ONE e:/軽自動車の来るべき未来を感じる
今回唯一のEVであり、スライドドアでもないN-ONE e:。どこのカテゴリーに入れるのが正解なのか? 今回、このクルマをなぜ比較試乗に入れたのかがチト疑問だったりするが、走ってみると編集部の意図がちょっと理解できた。
EVならではの静粛性はどのクルマもまだ達成できない世界観。走り出しからの余裕のトルクも見どころだ。そして何より低重心でとにかく安定感が高く、何もかもが軽自動車の枠を飛び越しているかのように感じるのだ。見た目はガソリン車のN-ONEとさほど変わらずで、使い勝手も室内空間も同じだからパスしがちだが、乗り味はやはり次世代の基準。
つまり逆を言えば、これにユーティリティ充実のクルマが登場してきたら脅威だよね、というのが今回の結論。BYDのラッコがそれなのは間違いない。
さて、日本車はどう反撃するのか? 最初にやらねばならないのはやはりホンダさんでは? 軽は日本発なのだから海外に先を越されないで欲しい。
※本記事は雑誌「CARトップ2026年4月号」の記事を再構成して掲載しています
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