競技未使用&程度極上のレアな1台を捕獲!
専用エンジンとなる4T-GTEUを搭載
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セリカ最後のFRモデル、3代目♯A60型は1981年7月に登場。翌年9月、国産車初のDOHCターボエンジン3T-GTEU搭載のトップグレード、GT-Tが追加され、それからひと月遅れでラインナップされたのが限定200台のグループBホモロゲモデル、GT-TSだ。
車両型式はGT-TのTA63に対して、GT-TSはTA64。まず、エンジンは3T-GTEUのボア径をコンマ5mm拡げたφ85.5とし(ストローク量は78.0mmで共通)、排気量を1770ccから1791ccへと拡大した4T-GTEUを搭載。
この微妙な違いによってターボ係数1.4を掛けた時、3Tは2478ccで排気量2500cc以下クラスとなるのに対して、4Tは2507ccで3000cc以下のクラスに組み込まれることになる。後者の場合、レギュレーションでよりワイドなタイヤの使用が認められていて戦いを有利に進められるから…というのが4T-GTEUを搭載した最大の理由だ。
ちなみに、最高出力160ps/6000rpm、最大トルク21.0kgm/4800rpmというカタログスペックは3T-GTEUと全く同じだ。
ベースの3T-GTEUと同様、4T-GTEUもツインプラグ方式を採用。デスビからは8本のプラグコードが生える。この頃、日産のZ型エンジンもそうだったが、燃焼効率アップによってパワーやトルクを稼ぐだけでなく、排ガス濃度の低下や燃費の改善なども狙っていたわけだ。
一方、TTE(トヨタ・チーム・ヨーロッパ)製作のWRCマシンはボア径φ89・0×ストローク量84.0mmで排気量を2089cc(ターボ換算2926cc)まで拡大した4T-GT改を搭載し、タービンもKKK製K27に交換。
パワー&トルクはステージによって若干異なるが、370~385ps/7000~8000rpm、40.0~48.0kgm/5000~5500rpmを発揮し、抜群の耐久性と合わせて84~86年とサファリラリー3連覇、しかも85~86年に1-2フィニッシュを飾ったのはトヨタのモータースポーツ史に燦然と輝く快挙と言っていい。
細部をチェックしていく。エクステリアではウレタン樹脂製フロントフェンダーがGT-TS専用品。標準モデル用に対して素材が異なるだけでなく、ブリスター化も図られている。斜め後ろから見ると、フェンダー後端が盛り上がっているのが分かる。
前期モデルの特徴と言えるポップアップ式ヘッドライト。カタログにはライズアップライトと記述される。「やっぱリトラクタブル式だろ!」と信じていたスーパーカー世代の目には違和感ありまくりだったためか、俗にブラックマスクと呼ばれる後期モデルでは一般的なリトラクタブル式に改められた。
エンジンと並んでメカニズム面におけるGT-TSのハイライトがリヤサスペンション。ターボモデルGT-Tのセミトレーリングアーム式から5リンクリジッド式へと変更されてるのだ。シンプルな構造ゆえ耐久性が高く、メンテナンス性にも優れているという、極めて実戦的な改良と言える。
インテリアはスポーティモデルの廉価グレード、GTラリーに準じたものでビニール表皮のシートやエアコンレスが標準となる。ダッシュボードはGT-Tに準じていて、GT-TSならではスペシャルな演出は一切ナシ。ステアリングがナルディクラシックに、シフトノブが当時モノのTRD製に交換され、ステアリングコラム上にはGReddyブースト計をセット。センターコンソール右側にはHKS初代ターボタイマーも確認できる。
スピード&タコメーターの下には、右から電圧、燃料、水温、油温計が並ぶ。ブースト圧の上昇に合わせて緑→黄色と2段階で点灯するタコメーター内側のターボインジケーターは、この頃の国産ターボ車に良く見られた装備だ。
メータークラスター右側にはオイル交換の目安に使うダイヤル式カウンターが。ちなみにGT&SXグレードでは、ここに30~65km/hの範囲内で5km/h刻みで任意にセットできるスピードアラームが標準装備され、SXではオプションでクルーズコントロールを選ぶこともできた。
室内側のプッシュボタンを押すとシャッターが開き、換気を促すワンタッチベンチレーターなる装備は全グレードに標準。が、ドアミラーが標準となった後期モデルで採用されたのかどうかは不明。
何より驚かされるのは車両本体価格。「どうせ後から手を加えるベース車両なのだから」という割切りの元、たったの169万円で販売されたのである。
80年代前半と言えば、ランチア037ラリー/デルタS4やプジョー205ターボ16やフォードRS200やアウディスポーツクワトロやMGメトロVR6など、グループBホモロゲモデルが数多く存在したが、その中でセリカGT-TSの価格は超バーゲンプライス以外の何物でもなく、誰にでも手が届く1台というのが衝撃的。
また、ほぼ同じ時期に日産から登場した240RSとも対照的だった。左ハンドルメインで触媒レスゆえ基本的に国内販売はナシ、海外では500万円前後で販売され、即実戦投入可能なほど本格的に作り込まれた日産の肝入りだったにも関わらず、結局1勝も挙げることなくWRCの舞台から去ることに。
戦績を見れば、国産グループB勢で成功したのはセリカGT-TSだけ。これは揺るぎようのない事実なのだ。
TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)
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みんなのコメント
『シャレード926ターボ』の1985年のサファリラリークラス優勝
3代目シルビアベースの『240RS』の1983年のニュージーランドラリー2位、1985年のサファリラリー3位だって
十分成功ではないだろうか?
「申し訳ありませんが、正式なカタログはありません。」と書かれたA4紙と
変更点を示した図と価格表(だったかな?)が一緒になったコピーが送付されて来て
「ああ、本当に特殊なモデルなんだなぁ…」と思うと共に、こんなアホにもしっかり対応してくれた事に感嘆した覚えがw