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F1初優勝サインツJr.、12年前のシルバーストンでの“デジャヴ”。今も活きる「失敗を繰り返さない」姿勢

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F1初優勝サインツJr.、12年前のシルバーストンでの“デジャヴ”。今も活きる「失敗を繰り返さない」姿勢

 2020年のイギリスGPで最終ラップにタイヤバーストに見舞われながらも3輪でトップチェッカーを受けたルイス・ハミルトン(メルセデス)は、実はその17年前、フォーミュラ・ルノーのレースでサスペンショントラブルを抱えながら事実上の3輪走行で優勝した経験があることは、あまり知られていない。2022年のイギリスGPでF1初優勝を飾ったフェラーリのカルロス・サインツJr.にも、そういった巡り合わせを感じずにはいられないエピソードがある。

 サインツJr.のイギリスGPは、ポールポジションからスタートしながらも、一度はチームメイトのシャルル・ルクレールに首位の座を明け渡すなど、一筋縄ではいかないレースに。しかし終盤のセーフティカー出動も味方し、見事ポールトゥウィン。12万3000人という大観衆が見守る中、パルクフェルメに帰ってきたサインツJr.は、インタビュアーのジェンソン・バトンにファンへのメッセージを求められて次のように答えた。

■フェラーリ、ルクレールにピットストップさせなかった理由を説明「今日もまた、運が悪かった……」

「みんなに感謝したい」

「シルバーストンは僕にとっても少し特別な場所だからね。2010年にここで、フォーミュラBMWのレースに勝った。初めてのポールポジションもその時だった」

「あれから12年が経って、僕はF1でフェラーリに乗って全く同じことを成し遂げたんだ」

「だからここは特別な場所だし、僕を応援してくれて、その特別な思い出の一部になってくれた観客のみんなには感謝している」

 サインツJr.の言うフォーミュラBMWでの勝利は、2010年7月にシルバーストンで行なわれたフォーミュラBMWヨーロッパ第4戦レース2のこと。この時サインツJr.はポールトゥウィンで同シリーズ初勝利を飾ったが、これは厳密には彼にとっての4輪レース初優勝ではない。彼は同年5月にセパンで行なわれたフォーミュラBMWパシフィックにゲストドライバーとして参戦し、ダニール・クビアトを従えて優勝を飾っている(ゲスト参戦のため選手権外)。

 それはさておき、フォーミュラBMWのシルバーストン戦に話を戻すと、サインツJr.は2レース制で行なわれたこの大会でどちらもポールポジションを獲得したものの、レース1はスタートに失敗して優勝を逃している。サインツJr.は今回のイギリスGPでも、赤旗中断前のスタートでマックス・フェルスタッペン(レッドブル)にホールショットを奪われており、その点もデジャヴを感じさせる。

 motorsport.comの姉妹媒体『Autosport』に掲載されていた、2010年当時のイベントレポートにはこう記されている。

「サインツJr.はキャリア13戦目にしてポールポジションを獲得したが、スタートでつまずき、(ジャック)ハーベイの先行を許してしまった」

「彼は1周目のビレッジでも、ロビン・フラインスにパスされてさらに順位を落とした。サインツJr.は明らかに取り乱してしまい、続くザ・ループでも左側のドアを大きく開けてしまい、ファク・レガリアにも前に行かれてしまった」

「ジュニア選手権のトップに立つサインツJr.は、1周目の失敗を取り戻そうとしていた。サインツJr.は再びレガリアに追い付くと、6周目のブルックランズでパスして表彰台を獲得した。一方で優勝争いの2台は遥か前方に逃げてしまい、サインツJr.はどうすることもできなかった」

「彼が表彰台で見せた表情は、自らがあまりに多くのミスを犯し、ポールポジションを無駄にしてしまったことを自覚しているかのようだった」

 サインツJr.は今季開幕戦のバーレーンGPでルクレールに次ぐ2位でフィニッシュした際、チームが今季タイトル争いの最右翼に浮上したにもかかわらず、「フェラーリ加入後で最も複雑な週末」だと表現していた。こういった内省的で野心的な一面は、シルバーストンで悔しい3位に終わったあの頃から変わっていないと言える。

 今季のフェラーリ『F1-75』は高い戦闘力を誇っているとはいえ、サインツJr.は開幕当初、高速でリヤの挙動がルーズになった際に絶妙なブレーキングとパワーマネジメントが求められるF1-75になかなか適応できずにいた。しかし、彼はチームと協力してこの部分を解決するためにセットアップの改善に取り組み、ドライビングスタイルをわずかに変えることにも時間を費やした。その成果が出始めていたことは、前戦カナダGPで優勝争いを展開して2位に入ったことからも明らかであった。

 今回のイギリスGPでサインツJr.は、一度はフェルスタッペンにスタートで先行を許したものの、赤旗でスタート仕切り直しとなった時には2度目のチャンスをしっかり掴んでホールショットを奪った。これは12年前のシルバーストンも同じだった。『Autosport』のレポートには、レース2のサインツJr.がレース1とは「別人に見えた」と綴られている。

 レポートの続きはこうだ。

「彼はまずまずのスタートを切ったが、フラインスからリードを守るには十分と言えず、先行を許してしまった」

「万事休すかに思われたが、2周目のブルックランズでハーベイとフラインスがやり合っている隙をついて、彼はリーダーをとらえて前に出ることに成功した。最終的にそれが、サインツJr.がそのまま勝利を手にすることを決定付けたのだ」

 サインツJr.のF1初優勝までの道のりは決して平坦ではなかった。2015年にトロロッソからデビューを果たした後は、決して優勝を争えるポテンシャルのあるマシンに恵まれた訳ではなかったが、着実に結果を残してシートを繋ぎ止めてきた。そしてキャリア8年目にしてようやく「勝てるマシン」を手にしたサインツJr.は、序盤こそ適応に苦しみながらも、持ち前のスタイルで着実に物事を積み上げていき、勝利を掴んだのだ。

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