マウンテンバイク王者が自動車のラリー競技に挑む!
マウンテンバイクのトップアスリートが、ラリーの世界に挑んでいます。平林安里選手は、全日本MTB選手権クロスカントリー部門で実績を残した実力者。父は全日本ラリーで活躍した名ドライバーであり、名前の由来も伝説的ラリーストにちなんでいるそうです。そんな平林選手が、ラリーデビュー2戦目となる「TOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジ in びわ湖 高島」に挑み、初めての全SS完走を果たしました。MTBからラリーへと競技種目を超えて挑戦を続ける彼の姿には、大きな可能性と未来への期待が感じられます。
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ラリーストとしての優秀な血統を持つ「アリ」と名付けられた男
平林安里選手は、全日本MTB選手権クロスカントリー部門2位という輝かしい成績を持つマウンテンバイク・ライダー。1997年生まれの28歳だ。マッスルラリー・チームのサポートを受け、本業とは別にラリーへの挑戦を続けている。
じつは、平林安里選手とラリーとの縁は深い。今回の挑戦に同行している父、平林織部さんは、新城ラリーの初代ウィナー(2004年/4輪駆動Cクラス)であり、全日本ラリー選手権でも活躍したラリーストだ。さらに、安里(あり)という名前は、伝説的なラリードライバー、アリ・バタネンから名付けられたという。その血統や父の想いを考えると、彼がラリーの世界に足を踏み入れたのは、必然だったのかもしれない。
平林選手のラリーデビュー戦は、TOYOTA Gazoo Racingラリーチャレンジ(TGRラリチャレ)の第4戦「富士山すその」。そして、2戦目の舞台となったのは、2025年8月30日~31日に滋賀県高島市で開催された同シリーズの第9戦「びわ湖 高島」だ。
この大会は、エントリー台数が90台に制限されるほどの人気戦。平林選手はデビューから3カ月で、愛車スイフトスポーツでの練習に加え、ラリー用車両であるトヨタ「アクア」での走り込みを重ね、この一戦に備えた。
もっとも「遅い」マシンでクラス最速タイムを刻む
平林選手が駆るマシンは、現行モデルのトヨタ・アクア(No.134 エムリットアクア/MXPK11)。TGRラリチャレのレギュレーションにより、彼はエキスパートクラスの「E-3」に参戦する。コ・ドライバーは、前回に引き続きベテランの保井隆宏選手が務めた。
今回、マッスルラリー以外にも2台の現行アクアがエントリーしていたが、それぞれの車両はデフが組み込まれるなど、仕様が異なっていた。平林選手のアクアは、そのなかでももっとも戦闘能力が低い仕様だったにもかかわらず、果敢にアタックを続けた。
「びわ湖 高島」では、林道コース2本と、今津総合運動公園内のギャラリーステージ1本の計3ステージを2回走行する、合計6本のスペシャルステージ(SS)が設定された。前回のデビュー戦ではSSがキャンセルされるなど不完全燃焼だったため、今回は全SSを走り切ることが大きな目標だった。
平林選手はSS1から好タイムをマーク。他の現行アクアに対し、3秒以上の差をつけてクラス4番手タイムを記録するなど、練習の成果を発揮した。しかし、パイロンで設定されたジムカーナのようなSS3ではタイムが伸びず、他のアクアに2秒差をつけられてしまう。それでも、午後のループではしっかりタイムを更新し、最終的にクラス11位(総合51位)で完走を果たした。
ラリー終了後のインタビューで
「富士山すそのから3カ月間、使える時間はすべて練習に費やしました。SS1とSS2は手応えを感じましたが、SS3のパイロンコースは初めてだったので、もっと練習が必要だと感じました。攻略の仕方が違うという新たな発見もありましたね。エアコンを切ってバッテリーの消費を抑えたこともあり、午後のループでタイムを上げることができました。これからも全体の速さを上げられるように練習を重ねていきたいです」と平林選手は語る。
また、コ・ドライバーの保井選手は
「前回はなかった林道コースで、どんな走りをするか未知数でしたが、しっかりスピード感もあって操作もできていました。あとは低速コーナーでのメリハリや繊細なコントロールができれば、もっとタイムを縮められるはず。それがクリアできれば、さらに良くなるでしょう」と評価した。
自転車競技のシーズンが終了したため、ラリーも含めて平林選手の今シーズンにおける活動はひと区切りとなる。「マッスルラリー」チームとしても、彼の参戦初年の活動を終えた。今後は、マウンテンバイク競技との兼ね合いを見ながら、次シーズンの計画を立てていくという。今後のさらなる飛躍に期待したい。
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