これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、セリカの兄弟車として誕生したスペシャルティクーペ、トヨタ カレンを取り上げる。
トヨタ カレンはスタイル・走行性能・価値提案の三位一体を追求した2ドアクーペ【愛すべき日本の珍車と珍技術】
文/フォッケウルフ、写真/トヨタ
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兄弟車のセリカとキャラクターを明確に差別化
1994年1月27日、トヨタは新型2ドアクーペ「カレン(Curren)」を全国のトヨタビスタ店を通じて発売した。このモデルは、6代目セリカ(T200系)をベースにしながら、エクステリアデザインやパッケージングに大幅なアレンジを加えた、国内専用のスペシャルティクーペという位置づけとなる。
「走り」志向のセリカに対して、「洗練」「上質」「日常性」をキーワードに、よりスタイルと日常性の両立を重視した派生モデルとして企画された。スポーツモデルに準じたパフォーマンスを持ちながらも、視覚的な部分や乗り味に上質さを感じさせる仕立てが特徴であり、その存在は単なる姉妹車に留まらない。まさに1990年代のトヨタにおける多チャネル、多様なスペシャルティカー戦略の象徴でもあった。
従来のスポーティクーペの枠組みに、上質さや洗練さを加えた新たなスペシャルティモデルとしての提案がなされた
カレンはセリカと基本骨格を共用しながらも、外板の多くを専用設計とすることで、独自のプロポーションと個性を確立した。開発に際しては「流行のなかに普遍性を宿すスタイル」を目指し、デザインと機能性のバランスに注力している。
プロポーションは全幅1750mm、全高1310mmの寸法からもわかる通り、ワイド&ローを基本とした低重心でフラットな姿勢が強調されている。スタイルのよさだけでなくフロントバンパー、Aピラー傾斜角、サイドミラー形状に至るまで空気の剥離ポイントを解析し空力性能にも配慮されている。
風洞実験に基づいてディテールを設計した結果、Cd値(空気抵抗係数)は0.30台前半に抑えられているなど、当時のスペシャルティクーペとしては良好な数値を達成。これにより、高速走行時の安定性や静粛性の向上にも寄与した。
フロントまわりは兄弟車のセリカが4灯独立ヘッドランプでアグレッシブな印象を際立たせているのと対象的に、カレンではフラットなコンビネーションランプと細幅グリルを採用した。この意匠によって横方向への視覚的な拡がりを演出するとともに、コンパクトなヘッドライトユニットが前面投影面積を最小限に抑え、空力的にも有利な形状となっている。
また、ランプカバーやグリル周囲にはリブや段差を極力排したスムーズなサーフェス設計が採用され、表面風の剥離を防ぎ、風切り音の低減にも貢献する。
サイドビューでは、前後フェンダーにわずかな張りを持たせた断面変化を与えて立体的な量感をもたらしつつ、光の当たり方で表情が変化する動的造形を実現。リアまわりはトランクリッドと一体化したリアスポイラー形状とすることで、ダウンフォースを確保しながらスタイリングにも自然に溶け込むよう設計されている。
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ドライバーの意図に即応する精密な操縦性と乗り心地を両立
カレンは「走る・曲がる・止まる」といった基本性能を高次元で融合させるべく、シャシー全体にわたって構造・設計の最適化が図られている。
足まわりには、前後ともマクファーソンストラット式独立懸架サスペンションを採用。ジオメトリーとロアアーム、ブッシュ、スタビライザーといった構成部品の設計を最適化することで、トレッド変化やキャンバー変化、ロール特性の各要素をバランスよくコントロールしている。
さらに、前後サスペンションにはサブフレーム構造を採用。これによって取り付け点の局所剛性が向上し、操縦応答性と乗り心地の両立とロードノイズや微振動を効果的に遮断している。
「カレン(Curren)」の語源は英語の「Current(時流・流行)」であり、トレンドに敏感な層に向けた現代的モデルであることを意図していた
ZSグレードには、フロントにスーパーストラットサスペンションを設定。スーパーストラットサスペンションは、標準ストラット式の構造をベースにしながらストラット外側に独立したスピンドルアームとキングピン軸を設けた高性能なシステムとして注目を集めた。
その効能は、キングピンオフセットの低減によってステアリングの初期応答が向上し、キックバック(路面の衝撃)を抑制するほか、対地キャンバー角変化を最小化してコーナリング時の接地性向上が図れる。さらに、アッカーマンジオメトリの精度が高まり、緊急回避操作時でも高いコントロール性が確保できる。こうした効果により、高速巡航時からワインディング走行、急回避動作に至るまで、高度な運動性能と安定性が得られた。
搭載されるエンジンはトヨタの名機と称される「3S」系ユニットで、2機種をグレードに応じて設定した。トップグレードに位置づけられ、カレンのスポーティな一面を強調したZSグレードには3S-GE型2L DOHC 16バルブ スポーツツインカムが搭載される。最高出力180PSを発生し、高回転域での伸びやかな加速感と、アクセルレスポンスに優れた制御特性によって、状況を問わずリニアで爽快なドライビングフィールを提供してくれる。
このユニットには、5速MTと電子制御4速AT車が組み合わされるが、トランスミッションのタイプによって異なるカムシャフトプロファイルが採用されている。トルクカーブと変速特性の整合性を高めることで、5速MTは高回転の吹け上がりを重視し、4速ATでは扱いやすい実用トルク域を強化するという用途最適化設計がなされている。
ZSグレード以外のFS、XSには、3S-FE型2L DOHC ハイメカツインカムが搭載される。最高出力は140PSと控えめなスペックだが、中低速域でのトルクが厚めに設定されているうえに、インテークポート断面積やバルブタイミングを調整することで、実用域でのスロットルレスポンスを強化。日常走行での扱いやすさと高い燃費性能の両立が図られている。
1990年代にトヨタが展開していた商品戦略の象徴的存在
1990年代のトヨタは、カローラ店、トヨペット店、ビスタ店、トヨタ店という多チャネル販売戦略を推し進めており、同一プラットフォームから派生する車種を各販売網に独自展開することで、市場シェアの最大化と顧客ニーズの細分化対応を図っていた。
この戦略のもとで登場したカレンは、セリカと基本骨格を共有しながらもスタイリングやキャラクター性を明確に差別化。アグレッシブで走り志向のセリカに対し、カレンは都会的で上品、かつ日常にも溶け込む落ち着いた雰囲気を持ち合わせ、スポーティクーペでありながら“見せる楽しさ”と“使う快適さ”を両立した存在として男性だけでなく、女性ユーザーからも支持された。
インテリアは、セリカと基本構造を共有しながらも、独自の上質感や落ち着き、使いやすさを意識してアレンジされている
このように、カレンは単なるセリカの姉妹車ではなく、市場ニーズに応じた柔軟な商品企画を実践した。また、パワートレインやサスペンション技術の応用と実験的展開や、販売チャネル戦略の実証フィールドとしての役割を果たしただけでなく、ユーザーのライフスタイルと感性に寄り添った商品提案としても大きな意味を持っていた。まさに1990年代トヨタの商品戦略を語るうえで欠かせない1台だったのである。
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セリカ、カレン、カリーナED、コロナEXIVと兄弟車もたくさんあった。