■世界で2社だけが採用続ける「水平対向型エンジン」とは
自動車メーカーは、さまざまエンジンを開発し、ボディタイプやユーザーニーズに合わせたラインナップを展開。エンジンの種類には、大きくシリンダー位置によって「直列型」「V型」「水平対向型」の3タイプに分けることができます。
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現在、世界のほとんどの自動車メーカーは、シリンダーを一列に配置した「直列型エンジン」や左右交互のV型に配置した「V型」を主流として採用しています。一方、シリンダーを左右交互に配置する「水平対向型」を採用しているのは、OEM車などを除くとスバルとポルシェの2社です。
なぜ、「水平対向型エンジン」を採用するメーカーが少ないかと言うと、エンジンの構造に関係してきます。「直列型エンジン」や「V型エンジン」に比べ、部品点数の多さや排気通路が複雑化するなど生産性が落ちるほか、燃費の悪さも問題となります。
また、水平型のため横幅が広くなるので、コンパクトカーなど車格が小さなクルマでは、エンジンルームに搭載することが困難なほか、メンテナンスなどの整備性も悪いです。
しかし、「水平対向型エンジン」には、クルマを走らせる上でのメリットも多く存在。具体的には、「低振動・低重心・軽量・高剛性・回転バランスの良さ」などが挙げられ、速さを競うモータスポーツなどの場面においては、低重心なクルマほど安定性が高くなり、コーナリング時などで有利に戦えます。
メリットもデメリットもある「水平対向型エンジン」ですが、スバルとポルシェの2社だけが採用しているのはなぜなのでしょうか。
スバルは、1966年に発売した「スバル1000」に「水平対向型エンジン」を搭載したことがきっかけで、現在まで開発・改良を重ねて行くことになります。
現在は、軽自動車などのOEMを除く全車に採用され、1989年の初代レガシィから搭載されている「EJ型」、環境性能と走りを両立する新世代の「FB型」、さらなる低重心化を目指した「FA型」といういくつかの種類をラインナップ。
スバル全車に搭載する理由に、今でこそ大手自動車メーカーにならぶ知名度がありますが、以前までは小規模メーカーと言われていました。そのため、他メーカーとの違いを表現する方法の一つとして、独自性がある「水平対向型エンジン」を採用することで、ユーザー獲得や固定ファン層を維持。それ故、自社開発のエンジンをひとつに絞ることで生産性も確保しています。
スバルは、「水平対向エンジンを『SUBARU BOXER』と称し、振動の少ないスムーズなエンジンフィーリングやアクセルワークに忠実なレスポンスも実現する、あらゆるシーンで気持ち良くスポーティなドライビングを愉しめる理想のパワーユニット」と説明しています。
■電動化が進むクルマ業界のこの先は…
スバル同様に「水平対向型エンジン」を採用しているのがドイツの自動車メーカー「ポルシェ」です。現在では「パナメーラ」や「カイエン」「マカン」以外のスポーツモデルに採用しています。
ポルシェが「水平対向型エンジン」の採用を続ける理由には、ポルシェの1号車として登場したポルシェ「356」に搭載されたのがきっかけで、その後の「911シリーズ」を代表する名車達に採用され続けた伝統性や前述の“クルマを走らせる上でのメリット”なども採用され続ける理由です。
従来、ポルシェの「ボクスター」「ケイマン」には、「水平対向6気筒エンジン」を搭載してきましたが、年々厳しくなる燃費規制やパワー・トルク向上の技術革新により、2016年から「水平対向4気筒エンジン」にシフトしたモデルも登場しています。
将来的には、さらなる燃費規制や電動化が予想されるなか、ポルシェは、2025年までに全モデルの50%を電動化すると宣言。プラグインハイブリッド(PHEV)や電気自動車(EV)の投入を進めていく計画です。
一方、スバルは「水平対向型エンジン」と電動技術を組み合わせた新開発のパワーユニット「e-BOXER」を展開。燃費の悪さをカバーするとともに、規制にも対応していくとしています。
同じ燃費の悪さで、一旦は姿を消したマツダの「ロータリーエンジン」は、モーターの発電用として新たに開発が進められ、近い将来には市販車に搭載して登場する予定です。
独自性をもつ「水平対向型エンジン」も何らかの形で残り続けることを期待せずにはいられません。
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