■バイクの抱えるスペースと性能、重量、価格のジレンマ
自動車業界では、電動化が急速に進んでいますが、バイク業界はクルマと比べてラインナップが充実していません。バイクの電動化が進まない原因として、どんな理由が挙げられるのでしょうか。クルマ業界では、電動化とハイブリッド化が一般的になりつつあります。トヨタ「プリウス」や日産「リーフ」などの車種から始まったとされるEVシフトは、今後も多くの車種に波及していく可能性があります。
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同様に、バイク業界でも電動化は始まっています。しかし国産メーカーで一般の人が購入できる車種は少なく、ヤマハの「E-Vino(イービーノ)」の1車種のみです。
ホンダは「PCX e:HEV(イーエイチイーブイ)」と昨今業務用に採用されつつある「BENLY e:(ベンリーイー)」、「GYRO e:(ジャイロイー)」と「GYRO CANOPY e:(ジャイロキャノピーイー)」に加え、法人や個人事業主、官公庁に限定したリース専用のホンダ「PCX ELECTRIC(エレクトリック)」の、6車種となっています。
政府は、2035年にはガソリンエンジンのみを搭載した新車の販売を禁止する方向で取り組んでいるため、電動バイクやハイブリッドバイクのラインナップを、今後さらに増やす見込みです。ただ、現在のバイク業界はクルマ業界に比べ、電動・ハイブリッドモデルが非常に少ないように思われますが、その理由はどこにあるのでしょうか。
その理由のひとつとして挙げられるのは、2021年11月の段階では、バイクをハイブリッド化しても商品として魅力がなく、電動化すると今のバイクより航続距離が短くなるためです。バイクの場合、今までの車体の大きさをほとんど変えずに、ハイブリッドシステムを搭載しようとするとスペースが限定されます。その上、ハイブリッドシステムを搭載できたとしても元になったモデルより割高なバイクになってしまい、商品として魅力に欠けるものになる可能性が高くなるといえます。
実際、ハイブリッド化したホンダ「PCX e:HEV」の価格は44万8800円で、元になった「PCX」の価格は35万7500円であり、10万円近く値段が上がっています。ハイブリッド化して向上した燃費は、51.2km/L(WMTCモード値)で、ガソリンエンジンの「PCX」は47.4km/L(WMTCモード値)と、その差は4kmほどです。
従来のモデルより、10万円ほど値上がりしたハイブリッドバイクに魅力を感じるかは、意見が分かれるかもしれません。
ハイブリッドではなく電動化した場合には、航続距離の短さがネックとなっています。クルマでも同様ですが、電動化された際に注目される可能性が高いのが、航続距離です。電動化して多少値上がりしても、航続距離が伸びていれば購入を検討する人もいるかもしれません。
しかし、2021年11月現在では、バイクを電動化すると航続距離が短くなってしまいます。参考までに電動化したモデルと従来のガソリン車をカタログデータで比較してみます。
まず、ヤマハ「Vino(ビーノ)」の燃費性能は58.4km/L(WMTCモード値)、燃料タンク容量が4.5L、ざっくりと計算しても250kmほどの航続距離が期待できます。それに対して、電動化した「E-Vino」は、バッテリーをフル充電して走れる距離は29kmと、電動化すると200km以上航続距離が短くなっています。
同様にホンダの電動スクーター「PCX ELECTRIC」は、一回の充電で走れる航続距離は41kmです。ガソリンエンジン仕様の「PCX」の燃費は、47.4km/L(WMTCモード値)で、燃料タンクは8.1Lあるため、航続距離は350kmほど走行できる計算です。このように、「PCX」も電動化すると航続距離が300kmほど短くなりました。
航続距離に大きな影響を与えているのは、バッテリーの容量です。バッテリー容量を十分に確保できれば、航続距離をある程度伸ばすことができるかもしれません。しかし、バイクの場合はスペースが限定される上に、バッテリーを載せるほど車重も増えてしまい、使い勝手が悪くなる傾向があります。
とはいえ、いずれバイクもバッテリーの高性能化で解決される可能性が高く、遠くない未来には、新しい電動バイクが国産メーカーから生まれるかもしれません。
■限定的ではあるが実用化できている業務用電動バイク
バイクの電動化・ハイブリッド化はなかなか進んでいませんが、昨今、電動バイクが業務用として採用される機会が増えつつあります。業務用電動バイクとして、どのような車種が活躍しているのでしょうか。バイクの電動化には、航続距離の短さが問題として残っていますが、それは導入期の電気自動車にも同じ問題があったといえます。
ホンダは航続距離が短くても、電動バイクが使えるようにバッテリーを簡単に交換する仕組みを導入しました。その結果、業務用として電動バイクが実用に耐えられるものになりつつあります。定期配送業務であれば行先が決まっており、必ず物流拠点に戻ってくるため、電動バイクの航続距離が短くても使用可能です。
その結果、「BENLY e:(ベンリーイー)」「GYRO e:(ジャイロイー)」「GYRO CANOPY e:(ジャイロキャノピーイー)」の電動バイク3車種を、業務用として2020年12月から展開しました。これら3車種と「PCX ELECTRIC]は、モバイルパワーパックを搭載しており、今までの電動バイクのように充電されるまで待つ必要はなく、充電済みのバッテリーを交換するだけで走行が可能です。
また、配送業務であれば必ず物流拠点に戻ってくるため、電動バイクの航続距離が短くても、交換バッテリーの数を用意しておけば業務で使用できます。カタログデータ上では航続距離は100km満たないものの、バッテリーひとつの重さが10?ほどしかないため、簡単に交換できる点も特徴のひとつです。
限定的な使い方はありますが、電動バイクは徐々に浸透しつつあります。今後モバイルパワーパックの高性能化ができれば、交換頻度が少なくなり、今のバイクと同じぐらい航続距離がある電動バイクになるかもしれません。
※※※
今の段階ではバイクをハイブリッド化しても、電動化しても、ガソリン車に勝るほどの性能が実現できない可能性が高いといえます。
しかし、バッテリーを簡単に交換する機構を搭載したビジネスバイクが、配送業務に採用されつつあります。今後バッテリー性能が向上し、電動バイクの航続距離も伸びていくと、実用性がさらに高まるかもしれません。
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