はじめに断っておくが、Off1.jp編集部はCRF250Lファンだ。旧CRF250Lが重いとか、運動性能にかけるとか、そういう話は正直どうでもいいと思っていた。ご存じのとおり、CRF250Lが登場する以前はオフロードバイクの巡航性能たるや、とても低かった。人生のバイク遍歴のほとんどをオフロードバイクで過ごしてきた僕にとって、旧CRF250Lの登場は衝撃的だったのだ。こんなに、高速巡航が安定していて、誰にとっても乗りやすいオフロードは出会ったことが無かった。
加えて、旧CRF250Lは足回りをしっかりさせれば十分にオフロードで性能を発揮できた。この3年ほど、じつはCRF250LはOff1.jp編集部にとって購入候補だったのだ。振り回されるレーサーより、落ちつきのあるマルチなトレールのほうが、いいかも…と思っていた。そんな折りの、新CRF250L登場だ。開発陣は、国内外のレースに多数参戦していて僕らオフフリークの仲間と表現すべき、杉山氏が率いていて「オフ性能を、あげた」と言われれば、飛びつかざるを得ない。
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低速トルクで存分に発揮されるライダビリティ
Off1.jpでエンデュランサーや、アドベンチャーバイクのインプレを御願いしている和泉拓は、まずエンジンについて切り出した。「低速トルクを相当感じますね。300ccくらいの感触があります。アクセル開度でいうと、5~30%くらい、回転数でいうと2500~3000回転くらいがすごくたのしい。その域のツキがすごくいいですね。くねくねした細い舗装路でも、とても楽しめるエンジンだと思います。回さなくちゃ走らないエンジンって、実は面白いシーンが限られてしまうじゃないですか」と言う。舗装路でいけるのだから、林道ではなおさら常用域が楽しいバイクに仕上がっていた。
効いているのは、吸気・排気系のアップデートと、専用設計された吸気カムの採用だと開発陣は言う。あまり知られていないが、CRF250Lは2017年モデルでマイナーチェンジしており、今回はそこで出たウィークポイントを消化する形で開発が進行した。「17年モデルでは極低速を出すことができたんですが、その先で谷ができてしまいました。それを改善すべく上までしっかりスムーズにつながるエンジンにしたいという狙いがありました」とのこと。そのために、開発陣は吸気ダクトからマフラーの出口まで、セクション毎に別々に解析をかけて徹底的に洗い出しを敢行。マフラーもテールパイプ径まで場合別にわけて、非常に緻密な解析をおこなっているのだそう。
付け加えさせていただくが、編集稲垣が乗った場合はダートの上で際だった「低速トルク」を感じることはなかった。というのも、ダートの上で回して乗れる技量がない僕では、そもそもアクセル開度5~30%の域で乗っている時間がとても長いのだろう。だから、僕のエンジンに関するファーストインプレッションは、「旧型とは比べものにならないほど、元気に感じる」エンジンだった。エンデューロバイクを乗り継ぐ編集部の伊井も「このバイクなら十分に満足できる」と高評価。とはいえ、和泉は僕の話を聞いて「CRF250Lは高速巡航もするから、いくらビギナーといってもアスファルトの上では、特性がわかると思います」と僕の不足するインプレを補ってくれた。
さらに和泉は言う。「CRF450Lや、NC750のエンジン特性によく似ていると思いました。マッピングも含めて、思い切り低速に特性を振った感触です。高開度ではトルクが薄いのですが、昔の感覚でいうと不自然なくらい低速がある。僕は、こういうエンジン特性好きですね」と。もともと、高回転域を引っ張って乗るエンジンでは無いから、ある意味ではダート好きな人間からすれば「こちら側の世界に思い切り振ってくれた」ものと言えるのかもしれない。レブ域まで回しきった時の得もしれぬ加速感はモトクロッサーで堪能すればいい。実に、うまいところを狙った開発だったのだ。
低速を思い切りボカす欧州のマシンに対して…
このエンジンは、CRF250LだけでなくCBR250Rや、レブル250に搭載されているグローバル戦略のユニットである。過去にも、XLR250の名エンジンがGB250に使われたり、単気筒の小気味良い高性能エンジンが流用されてきた経緯があるのだが、それにしてもこの新CRF250Lのエンジンはハマリがいい。和泉も「ここまで汎用性を持たせられるとは思っていませんでした」と評価する。
開発陣によれば、この汎用性の高さはひとえにFIをはじめとする電子制御によるところが多いのだと言う。「パワーを出そうと思えば、出せるエンジンです。ただ、今回はとくに下に特性を振りたかったのでインテークカムを新作しました。厳密に言うと、燃料系、点火時期などを細かく変えていてデータ上、セッティングはだいぶ違うモノになっています」とのこと。「今まで(キャブレター)だと、自然吸気で吸えるものでしか表現できなかったものを、こちらで強制的に電子デバイスを使うことによって一つのエンジンでいろんなバリエーションがくめるようになってきた」とも。それにともなって、燃料系の開発は非常に細かなものになっているそうだ。電子制御は、ロードバイクではさらに進んでいるジャンルで、CRF1100Lアフリカツインでも散々語られているとおり、モード切り替えなどの精度や満足度が、飛躍的に向上している。8年前のCRF250Lデビュー時には、できなかったことができるようになったのだとも言える。
和泉が気になった点としては、何度も話にでている「低速トルク」を電子制御でぼかすことは考えなかったのか、というところだ。欧州のエンデューロバイクであるBetaと比較しているのだが、あながちこの比較はジャンル違いとも言えないだろう。どのエンデューロバイクも、欧州においてそのほとんどが本来の目的である「公道を使ったオンタイムエンデューロ」に使われるのでは無く、ストリートリーガル車として運用されている。特にBetaではその傾向が強いが、オフロードを強く意識するメーカーほど、低速のレスポンスをぼかして扱い安くする傾向にあり「Betaよりも、今日もCRF250Lのほうがゼロ開度からちょっと開けたくらいの低開度が鋭く感じるほど。それ自体は面白さでもあるんですけど」と評価した。
※ジョバンニ・サラがKTMのEXCシリーズ開発に関わっていたとき、明確に「ターゲットはビギナーだ」と教えてくれた。自身も、そのEXCに乗るツーリングライダーを山につれていくツアーをよくやっていてウケているのだと
開発陣は、その疑問をうけて「開け口の反応については、ある程度狙ったモノとしてセッティングをしています。このバイクとしては扱いやすさはもちろん必要なのですが、オフロードを走る上で車体のピッチングを出したり、フロントの荷重を抜いたりすることが必要だと感じています。そういう特性を、セッティングから引き出せないかと試してみた結果です」と話す。多くのライダーは、かなりこの新CRF250Lのエンジンを「元気で、パワフル」に感じるだろう。それは、このあたりの味付けによる部分が大きい。ただ、念のため追記しておきたいが、この特性がオフロードバイクの門戸を狭めるような類いのものではない。
今回、高速巡航についてはOff1.jpでは試していない。とにかくオフロードでの性格を推しはかりたかったからだ。だが、1~5速をプレジャー感あふれるクロスミッションに、6速を高速巡航にわりきった特殊なギヤ構成を考えれば、高速で不快に思うようなこともまずないだろう。
ミニモトのように振り回せる感覚
車体についても、とても秀逸であった。
「言い方は悪いかもしれないけど、ミニモトのように振り回せます。旧モデルとは、まるで違う。ポジションと、コンパクトさが影響してるのかなと思いました。ボディの形状は、足が触れる部分がとてもスリムになっています。マフラーのあたりが出っぱっていますが、ここに足を触れるような使い方をする人はホントに少ないでしょう。フローティングターンしたり、ガレ場でフロント吊ったりね。そんなのは想定外でいいと思う」とまずはライダーインターフェイスについて和泉は語る。「たとえば、過去のMD30(XR250)は横幅も太くて、今思うとだいぶ大きく感じるバイクでした。このバイクは、とても小さいですね」と。
加えて「寝かしていくとフロントから回頭してくれるのも好印象ですね。ハンドルも軽いし、ほぼ何もせずに曲がってくれる、とても素直なハンドリングです。クセがまったくなく、とても普通。そういう言い方がいいのかわかりませんが。
それとステップをふんだ時の反応がダイレクトですね。スタンディングしながら踏み込んでみるとよくわかります。昔のトレール車って、よれてしまってワンテンポ遅れるようなフィーリングがあったのですが、このバイクならステップを踏み換えるだけでスパスパ曲がってくれる」と和泉。
車格自体は、サスペンションのストロークが長い<s>タイプだったのだが、逆にコンパクトに感じるという感想だった。単純な足付きからすれば、<s>は腰高かもしれないが、乗って感じる小ささは旧型とは比較にならないものだと言える。旧型より4kgも軽くなったというCRF250Lだが、それよりも軽く感じるのだ。
「ステップをピボットに近づけていて、車体の中心に乗れるようにしました。ハンドルは手前にベンドさせて、より近い位置で乗れるようにアップデートしています。車体自体もスリムになっていてスムーズに動かしやすい、とか、そういう部分で乗りやすさを感じていただけたのだと思います」とは開発陣。軽さというのは不思議なものだ。単に車重が軽ければ軽いフィーリングになるわけではないのだが、ダイレクトな操作感を演出する車体の剛性も、あれば軽さにつながるかと言えば、そうではないのだとのこと。
「操安担当が、かなり軽さを感じる部分について追い込んだ車体になっています。軽量化にあわせて、剛性の適正化をしています。結果的に25%の剛性ダウンになっていて、しなやかなフレームになっていることが大きく軽量感に感じてもらっているポイントだと思います。細かいところでは、ラジエターに空気を受けるのではなく、流すような形状にすることで空力的にも軽さを感じる部分と考えています。車体を固くして軽く感じる車両もあれば、軟らかくして軽く感じる車両もあります。人がステップに入力した力で、どのくらいしなって、どのくらい向きを変えていってバイクが寝るか、そこが少なすぎても多すぎても軽量感にはつながらないんです。固くしすぎると、初期が重くて急に倒れるフィーリングになります」と開発陣が教えてくれた。「基本的には、重くなればなるほど、剛性が必要になるのです」と。今回は、車重を軽くしたからしなやかさを手に入れる必要があったのだと。
格段に変わったのはLだけではない。CRF250RALLYもだ
フェイスが変わらなかったが、実際には中身をごっそり入れ替えたCRF250RALLY。今回は、旧型よりもCRF250RALLYをアドベンチャー要素に振ったというが…
「Lとはまるで違うバイクに仕上がっています。ぱっと乗って感じるのは、コンフォート感がまるで違いますね、座面も広いシートに変えられているし、あとハンドルのウェイトで振動が消されていることがすごく大きいと思いました。キビキビ動くCRF250Lに対して、いい意味でまったりした仕上がりになっています。
車重はカタログ値で12kgの差があるんですが、これがサスペンションのフィーリングにも効いていますね。ダンピングは、結構効いてる感じがあります。バネレートはそこまで高くなくて、低速シムを積んでるような感覚で、沈みこむのが緩やか」と。
非常にツーリングライダーの評価が高かかった、整流効果をもたせたカウルは継続されていて、高速の巡航性能は火を見るより明らか。加えて、やはり継続されたクラス随一の21-18インチのあしまわりは、積極的にダートを走りたくなる仕様。小排気量のアドベンチャーバイクが、みんなリッタークラスのアドベンチャーをコンパクトにしたコンセプトであるのに、しっかりCRF450RALLYをイメージソースとした唯一無二のラリーレプリカコンセプトであるCRF250RALLYは、頭二つ飛び抜けてダート成分が強い。旅の途中で林道によりたいあなたには、おそらく必須の選択肢になるはずだ。
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みんなのコメント
本当にウインカーとホーンの位置は元に戻してほしい。