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【岡崎宏司カーズCARS/CD名車100選_01】1980年代スポーツの方向性を提示した2代目Z-CARの洗練世界

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【岡崎宏司カーズCARS/CD名車100選_01】1980年代スポーツの方向性を提示した2代目Z-CARの洗練世界

ロードインプレッション/1978年 日産フェアレディZ(S130型)

 ニューZのコクピットに入って感じるのは、ドライビングポジションがガラリと変わったことだ。ダッシュボードの高さに対して、シート位置は高めに設定され、前方視界が非常によくなっている。従来のZにくらべて明るく、開放的になり、圧迫感がまるでなくなった。

【誉れ高き血統】モダンGTスポーツ、それがフェアレディZの本質。新型は個性が一段と鮮明になっている!

 ステアリングホイールの高さが適切になり、より自然に操作できるようになったし、シフトレバーの位置/操作性も向上している。ペダルを含めた操作系の相対的な位置関係にもとくに問題になるような点はない。

 エンジンは2.8リッターのL28E(145ps/23.0kgm)と2ℓのL20E(130ps/17.0kgm)の2種類がある。2.8リッターのもっとも魅力的な点は、強力なトルクだ。ピークパワーは押さえ気味にして幅広い回転域に強力なトルクを得るというチューニングだが、実に扱いやすい性格のエンジンに仕上がっている。40km/hはトップギアの守備範囲に入っており、そこからアクセルを急激に踏み込んでも、何のぐずつきもみせずにスムーズに加速してゆく。その加速は十分に実用的なものだ。定速走行であれば5速ギアでも楽々と40km/hをキープできる。

 L28Eが最も活気を帯びるのは回転計の針が3500rpmを指すころから。強力なトルクは、1200kgを大きく超えるボディをいとも軽々と引っ張る。その加速感はビッグトルク・エンジンならではのダイナミックなものだ。145psのピークパワーを発生するのは5200rpmだが、この回転数を超えてもパワーは急激には落ち込まない。3速以上のギアでは5500rpmあたりでシフトアップしていった方がいいが、1、2速では6000rpmあたりまで引っ張った方が加速はいいだろう。レッドゾーンは6400rpmから始まるが、6000rpm以上まで引っ張るのはあまり意味がない。

 5速ギアボックスのギア比はエンジン特性にマッチしており、その力をフルに引き出すことができる。シフトフィーリングはベストとはいえないが、スポーツ走行時のリズムを壊さないレベルには達している。

 一方のL20Eだが、エンジンとしては一応不満のない出来はみせてはいる。しかし1200kgを超える車重に対しては、やはり非力さは隠せない。その非力さをギアリングでカバーしようとしているわけだが、この低くワイドなギアリングは、フィーリングを大幅にスポイルする結果を生んでいる。例えば2速で6000rpmまで引っ張って3速へシフトアップすると、回転計の針は一気に3800rpmまで落ちてしまい、3速で同様に6000rpmまで引っ張り上げて、4速にアップすると4200rpmまで回転はドロップしてしまう。

 ステアリングはマニュアルとパワー(オプション)の2種がある。まずマニュアルステアリングだが、従来のステアリングはかなり重く、弾性感のある操舵フィールも好ましいものとはいえなかった。ニューZのそれは、かなりいいフィーリングに変わっている。据え切りはさすがに重いが、少しでも動き出せば、スポーツカーとしてはリーズナブルな操舵力となり、女性ドライバーでもそれほど負担を感じないですむレベルになる。

 パワーの方はエンジン回転が低い時には軽く、回転数が高くなるにつれ操舵力は重くなってゆく方式だ。
 富士スピードウェイでの全開走行でも、パワーステアリングだからといって、とくに走りにくいとか、不安感はなかった。やや重めだがスポーツカー用としてはむしろこのくらいがいい。

 従来のZにくらべて、アンダーステアの度合いも弱くなっている。本格的に追い込んでいった場合でも、従来のZのようにフロントが大きく流れるといったことにはならず、スムーズなリバースステアに移行してゆく。

 コーナリングスピードは2by2より、2シーターの方が勝る。リバースポイントもより高いし、流れの挙動もより落ち着いている。2by2もスムーズな流れを見せ、コントローラブルだが、2シーターに比べるとより軽い感じの流れ方をする。

 ニューZのリアのオーバーハング部に、80リッターという大容量のガソリンタンクを吊っているが、満タンに近い状態ではやはりハンドリングに影響が出る。その影響も2シーターより2by2の方がよりはっきり感じられる。高速で速い切り返しをしたような時のテールの振られ方あたりに、その影響が感じられる。ハイウェイ上で、パニック的な急転舵を行うといった場合には問題があるかもしれないが、通常の走行ではさほど大きな問題にはならないと思われるが。

 乗り心地はなかなかいい。ダンピングレートをかなり強くしているにも関わらず、この種のクルマとしては十分に快適な乗り心地といえる。前後のバランスもよく、うねりのある路面を高速で通過しても、揺れはスムーズに収まる。静粛性の向上も大きい。この点には拍手をおくりたい。
 とにかく、あらゆる点デニューZは洗練されたが、中でも快適性の向上はもっとも印象的だ。

【プロフィール】
おかざき こうじ/モータージャーナリスト、1940年、東京都生まれ。日本大学芸術学部在学中から国内ラリーに参戦し、卒業後、雑誌編集者を経てフリーランスに。本誌では創刊時からメインライターとして活躍。その的確な評価とドライビングスキルには定評がある。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員

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