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その轟音はフェラーリだ!! “究極の乗り物”宇宙ロケットに乗るならヴァージンかブルーオリジンか?

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その轟音はフェラーリだ!!  “究極の乗り物”宇宙ロケットに乗るならヴァージンかブルーオリジンか?

 民間による弾道宇宙旅行がついに実現する時代となった。2021年7月、ついにその有力な2社である「ヴァージン・ギャラクティック」と「ブルーオリジン」が、有人試験飛行を成功させたのだ。安全に飛行する技術が整えば、次はいよいよ誰が乗るか、ヴァージンではすでに乗員の募集も始めている。

 こういった宇宙ツアーに参加しようと手を挙げるのは富豪中の富豪、あるいは超金持ちなどと思われるかもしれないが、実はその値段は、スーパーカーの新車一台分と同じくらい。

うっかり飛びついたのが不幸の始まり 激安スーパーカー購入後に待ち受ける試練とは?

 今回は、無類のロケット好きを豪語してやまない自動車評論家の清水草一が、それぞれのロケットがどんな構造で、どちらのロケットがどう好ましいのか、スーパーカー目線で勝手に評価する!

文/清水草一 写真/ヴァージン・ギャラクティック社(協力:クラブツーリズム・スペースツアーズ)、Blue Origin

【画像ギャラリー】スーパーカーを買うより宇宙旅行に行く時代!?

■ロケット発射の轟音はフェラーリサウンド!?

アマゾン創業者ジェフ・ベゾスが所有する宇宙ベンチャー「ブルーオリジン」のロケット・ニューシェパード

 いよいよ民間会社による宇宙旅行ツアーが始まった。どちらも高度は100kmほど。つまりジェット旅客機の10倍程度。これは、国際宇宙ステーションが周回している高度400kmの約4分の1の高さに過ぎないが、地球は丸く見えるし、「宇宙」(高度80kmあるいは100km以上と規定)に行けることは間違いない。1名あたりの費用もスーパーカーの価格にかなり近い。

 あらゆるスーパーカーを乗りつくしたような富裕層にとっては、次なる欲望として宇宙旅行は最適。日本では、クルマ好きとしても知られる元ZOZO代表の前澤友作氏がその代表だが、われわれ一般人だって、スーパーカーを買う根性? があれば、宇宙に行ける時代になった。

筆者(清水草一)が種子島にて撮影したH2ロケット発射シーン

 宇宙ロケットは究極の乗り物。クルマ好きの多くは乗り物全般が好きだし、スーパーカー好きなら宇宙ロケットもたいてい好きではないだろうか。かくいう私は、子どもの頃はクルマよりもロケットが大好きで、大人になってからはH2ロケットの打ち上げを見るために、種子島を4回も訪れている。ロケット発射の轟音は野蛮なる高貴さに満ち満ち、「これはフェラーリ1000台分のサウンドだ!」と震撼した。

 今回は、このようにスーパーカー好きの視点から、ともに第1回の試験飛行に成功した2社の宇宙ロケットを比較してみようと思う。

■飛行機型ロケット/ヴァージン・ギャラクティック スペースシップ2

スペースシップ2が母機ホワイトナイト2とドッキングしている状態

 2021年7月11日、バージンエアの創業者であるリチャード・ブランソン氏率いるヴァージン・ギャラクティックの「スペースシップ2」が、6名のクルーを乗せての試験飛行に成功した。

 スペースシップ2は、ジェットエンジンを4基搭載した双胴の母機・ホワイトナイト2に吊り下げられる形で滑走路から離陸、高度15kmで切り離され、ロケットエンジンに点火、高度80kmの宇宙へと向かう。

 ホワイトナイト2のデザインは、「双胴の悪魔」と呼ばれた米P-38戦闘機を彷彿とさせ、その中央に吊るされたスペースシップ2は、小型スペースシャトル、あるいは『ウルトラマン』のジェットビートル的で、実にカッコいい。垂直に離陸するロケットに比べると古典的で親しみやすく、どこかスーパーカーっぽい気もする。

有翼の宇宙船で滑空して着陸する方式のスペースシップ2

 そして、クルマ好きに注目してほしいのは、スペースシップ2のロケットエンジンである。ロケットエンジンには、大きく分けて液体燃料(液体酸素と液体水素)ロケットと固体燃料ロケットがあり、用途によって使い分けられている。

 スペースシャトルを例に取ると、シャトル本体には液体燃料ロケットが、補助ブースターには固体燃料ロケットが使われていた。国産のH2ロケットも、本体は液体燃料ロケットで、打ち上げ時はその下部に2本から4本の固体燃料補助ブースターが装着される。

 液体燃料ロケットは、精密かつ複雑なメカを持ち、出力コントロール性に優れる。その出力特性は、クルマで言えば自然吸気エンジンに近く、高回転高出力型で最高速は伸びるが、トルクは小さい。

 一方の固体燃料ロケットは、酸化剤を含んだ固体燃料に火をつけるだけ、つまりロケット花火とほぼ同じなので、構造が単純だ。一度火を付けたら燃え尽きるのみだが、打ち上げ直後はその大トルクで、機体を持ち上げる役割を担っている。つまりトルクフルなスーパーチャージャーでしょうか?

 ところがスペースシップ2のロケットエンジンは、そのどちらでもない「ハイブリッドエンジン」。これは、液体酸素と固体推進剤を組み合わせた、文字通りハイブリッドで、高性能ではないが構造が単純、出力もコントロールできる。つまり低コストで安全性が高い。まさにハイブリッドカー的だ。

スペースシップ2の内部。座席はリクライニングが可能

 ロケットエンジンの燃焼時間は、約1分。それでマッハ3に到達する。この速度、人工衛星を打ち上げる通常の宇宙ロケットに比べると、ものすごく遅い。地球の重力圏を脱出するためには、秒速7.7km以上の速度が必要だが、これはマッハに換算すると20以上に相当する。つまり、ホンモノ? のロケットに比べると、最高速は7分の1というところ。スーパーカーの最高速が時速300kmだとすれば、時速40kmくらい。原チャリのようなものである。

 でも、マッハ3で宇宙へ飛び立つなんて、クルマにはできないし(当たり前)、母機から切り離されてロケットエンジンに点火した瞬間の映像を見れば、それはもうマフラーから火を噴いて全開加速するフェラーリそのものだ! 震えがくるぜ! 長い尾翼は、大気圏突入時、最大65度立てて「フェザリング」を行うのも、可変リヤウイングみたいでカッコイイ。この時の最大減速Gは6Gに達するという。

 旅行費用は25万ドル(2750万円)。離陸から着陸まで1時間半ほど。日本の旅行会社でも募集している。

【クラブツーリズム・スペースツアーズ】
実施年:2021年以降運行開始予定
参加条件:18歳以上で健康な方(年齢上限なし)

■通常ロケット型/ブルーオリジン ニューシェパード

ベソス氏を含む4人の搭乗者を高度100km超の宇宙まで運んだニューシェパード

 ヴァージン・ギャラクティックに遅れること9日の2021年7月20日、有人飛行に成功したのが、アマゾン創業者であるジェフ・ベソス氏率いる民間宇宙ロケット会社・ブルーオリジンだ。

 ブルーオリジンは通常の人工衛星用ロケットも開発しているが、宇宙観光用に特化したのが、この「ニューシェパード」。この名前は、マーキュリー3号でアメリカ人初の弾道宇宙飛行に成功した宇宙飛行士、アラン・シェパード氏(後にアポロ14号で月面へ)にちなんでいる。

 ニューシェパードは、液体燃料ロケットエンジンを積んだ、いわゆる通常のロケットで、垂直に離陸し、上空で乗員の乗るカプセルを分離、そのまま垂直に着陸して再使用される。カプセルは無重力状態を数分間楽しんだ後、パラシュートで帰還する。

6名が搭乗可能なクルー・カプセルは、パラシュートで地上に着陸

 最高高度100km前後、最高速度マッハ3は、ヴァージン・ギャラクティックとほぼ同じ。ただ、垂直に離陸して戻ってくるため、飛行時間は15分ほどと非常に短い。

 ロケットエンジンの最高峰たる液体燃料ロケットが満喫(?)できて、窓も大きく眺めがいいのがウリだが、見た目はコケシっぽく、スーパーカー的ではない。費用は未定だが、いまのところ20万ドル(2200万円)を予定している。

ブルーオリジンは年内にあと2回の飛行を予定している

◆  ◆  ◆

 性能も費用もほぼ同じながら、クルマ好きとしては、コケシ型のニューシェパードより、スーパーカー的なスペースシップ2に激しく萌える。私が乗るならこっち(ヴァージン・ギャラクティック)だ!

【画像ギャラリー】スーパーカーを買うより宇宙旅行に行く時代!?

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