遂にキューブが、2019年12月に生産終了となることが決定、日産のラインナップから消えることになった。2003年から2004年にかけて年間で約14万台も売れていたキューブ。
日産の一時代を築いたモデルだけに、その終焉を名残惜しく感じる方も多いことだろう。キューブはなぜ日産に見捨てられたのだろうか。
【いまあれば大ヒット!?】登場が早すぎた残念なコンパクトミニバンたち
考えられる理由や事情を、元日産エンジニアの吉川賢一氏が考察する。
文:吉川賢一、写真:日産、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】キューブと日産のクルマたち
海外展開が予定通りいかなかった
キューブがモデルチェンジをしない理由となった出来事は、海外市場でのチャレンジの失敗にあったと考えられる 。日産に限らず、国内の自動車メーカーは現在、日本市場をあまりあてにしていない。
日産の2018年世界販売台数は550万台、そのうち日本市場は57万台(10.3%)、中国156万台(28.3%)、北米190万台(34.5%)、欧州64.3万台(11.7%)である。
欧州仕様の新型ジューク
日本仕様はまだなのか?
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新型車ビジネスの主戦場は、中国や北米であり、日本はおまけ程度なのだ。トヨタやホンダもメインターゲット市場や割合は近しいであろう。
自動車メーカーが確実に利益を上げていくためには、同一車種をグローバルで販売し、販売台数を増やす必要がある。
キューブは、日本では2008年に発売されたZ12型から、北米、欧州、韓国といった海外での販売を前提に、左ハンドル仕様が追加された。
キューブ (2012年マイナーチェンジ)
ファニーでレトロなエクステリアデザイン、日本流のインテリアセンス、しっかりとした足回り、低燃費、安さなど、日産はいけると思ったはずだ。
しかし、海外では、発売当初は話題となったものの、その後は不振となり、今ではどの地域でも販売終了となっている。デザインのコンセプトや使い勝手は通用していたが、他のコンパクトカーと比べると価格が高かったことが原因だろう。
その結果、日本市場で生き延びるしかなくなったキューブは、ひっそりとその寿命が尽きるのを待つのみとなってしまったのだ。
日産を立て直そうとする意志の表れ
2018年に起きたゴーン元会長の逮捕以降、日産の販売台数は激減した。日産が7月25日に発表した2019年4~6月期連結決算は、営業利益が、わずか16億円。赤字転落は免れたものの、前年同月より98.5%の大幅な減少となった。
また、第四半期累計3か月のグローバル販売台数は前年同期比(131万台)6.0%減の123万1000台。世界の全体需要が前年比6.8%減と、グローバルで減少傾向だったという原因も大きいが、好調の様に見えた北米市場での日産車の凋落が影響した。
その散々たる結果を受け、陣頭指揮を執る西川社長(当時)の元、日産は国内販売も立て直そうとしていた。
2019年9月に辞任した日産 西川元社長
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日産は2022年度までに世界の14の拠点で、すべての従業員の1割近くにあたる12,500人の人員削減や、不採算車種の整理を発表。モデル数で10%カットという指針の中に、キューブは入ってしまったのだ。
同じような車種整理は、1998年の日産倒産の危機の時点でも見られた。当時、日産はブランド力はあっても販売は低迷していたクルマのブランド名を大胆に変更、新たな出発という意味を込めてラインアップを大幅に整理した。
例に上げると
1.セドリック・グロリアからフーガへ変更2.サニーからティーダへ変更3.ブルーバードからブルーバードシルフィへ変更
一時的に車種は減ったが、後に登場した新型車には超が付くほどのヒットモデルが登場している。ノート、キューブ、エクストレイル、セレナ、どれも各カテゴリにて販売台数でランクインしたクルマ達である。
ミニバン販売台数が好調なセレナ(2019年マイナーチェンジ)
さらにはEVやe-POWER、プロパイロット等の技術も輩出することに成功した。
過去に日産は、一時的な痛みを伴ったのち、復活した経験を持っている。日産はそのストーリーを再び実現してみせようとしているのではないだろうか。
まとめ
せっかく育ったブランドを消すのは馬鹿げているという人は多くいる。筆者もそう思うひとりだ。
しかし、もはや日産は、後がない状況に追い込まれている。負の流れを払しょくするには、大胆な決断が必要なこともある。
この2、3年は耐え時であるはず。日産OBとして、厳しくも大いに応援をしたい気持ちだ。
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