京都の抵抗で米原ルートに注目
北陸新幹線小浜・京都ルートが京都府民の抵抗で袋小路に入るなか、米原ルート再考を訴える声が高まっている。しかし、実現へのハードルは決して低くない。
関東から来た東海道新幹線のひかり、こだまが到着するたびに、乗換客が在来線ホームへ移動する。乗車するのは、福井県の敦賀駅(敦賀市)へ向かう名古屋発の特急しらさぎか、大阪・京都方面から来る新快速。滋賀県で唯一、新幹線が停車する米原駅(米原市)は開業以来、東海道新幹線と北陸を結ぶ交通結節点の位置にある。
浜松市から来た営業マン(39歳)は福井県内を回る予定。
「東京経由で北陸新幹線に乗ると遠回り。北陸へ行くのはいつもこのルートですよ」
北陸新幹線が敦賀延伸して以来、乗換客は減ったようだが、米原駅に再び、注目が集まっている。小浜・京都ルートでの北陸新幹線大阪延伸が袋小路に迷い込み、米原ルート再考の声が上がっているからだ。
京都停滞が呼ぶ再燃論
小浜・京都ルートは2024年末に京都市内の駅設置場所など詳細ルートを決め、2025年度着工を目指していた。しかし、京都府市から地下水への影響などに懸念が示されたため、2025年度着工が断念された。
京都府内の地方自治体向け説明会が3月、京都市であったが、国土交通省は「施工上の不安はない」と従来通りの主張を繰り返すだけで、納得を得られなかった。小浜・京都ルートに反対する市民団体が5月末、約200人を集めて京都市内をデモ行進するなど、むしろ反対運動が勢いを増しているほか、京都市議会は6日、ルート反対の決議案を可決した。
決議は深さ40m以上の大深度地下で京都市内を通ることに反対する内容で、地下水への影響やヒ素を含む残土処理、工事期間中の交通渋滞、地元負担の増大などを挙げ、事実上小浜・京都ルートを拒否している。
石川県では北陸新幹線の敦賀止まりが長期化することを危惧し、2016年のルート決定時に選ばれなかった米原ルート再考を求める声が強まってきた。石川県交通政策課は
「県として小浜・京都ルートに反対しているわけではないが、京都の懸念解消がどうしてもできないようなら、米原ルートも検討してほしい」
と説明した。
米原ルートは敦賀駅から南へ進んで滋賀県へ入り、米原駅へつなぐ約50km。敦賀~新大阪(大阪市淀川区)間約140kmの小浜・京都ルートより短く、建設費を抑えられる。費用便益比(事業効果を金額換算し、総費用で割った数字で、1を超すと事業効果があるとされる)も2016年のルート決定時で2.2。小浜・京都ルートの1.1を上回る。
このため、石川県の「米原派」は
「建設費が高騰していることもあり、小浜・京都ルートが無理なら、米原ルートが望ましい」
と口をそろえるが、状況はそう簡単ではない。米原ルートの実現性が小浜・京都ルートより困難とする見方も出ている。
福井県は小浜先行開業検討を国へ要望
小浜市を抱える福井県は納得しないだろう。北陸新幹線の小浜市通過は1973(昭和48)年、整備計画に文言が盛り込まれた。小浜市内の駅位置もJR東小浜駅周辺に決まっている。杉本達治知事は米原ルートについて京都新聞に
「うちはお金を出さない」
福井新聞に「同意しない」と発言したことが報じられるなど、米原ルート再考の動きにいら立ちを隠さない。
小浜・京都ルートにこだわるのは、敦賀市以西の嶺南地方と福井市など嶺北地方の格差が広がっているからだ。嶺南にある敦賀、小浜両市と美浜、若狭、おおい、高浜4町のうち、人口最大の都市は約6万1000人の敦賀市で、小浜市も約2万7000人しかいない。6市町合計人口は約12万7000人。2045年には約10万人に減ると推計されている。
基幹産業の水産業は低迷が続く。関西との交流拡大目的で計画された小鶴線(小浜市~京都府南丹市)や若江線(若狭町~滋賀県高島市)という鉄道新線は実現しなかった。敦賀市と美浜、おおい、高浜3町に立地した原発が地域を支えてきたが、東日本大震災後に廃炉措置入りが続き、かつての活気はない。
福井県にとって新幹線が嶺南の危機を打開する最後のカードなのだろう。国の2026年度予算概算要求に向けてまとめた重点提案・要望書に小浜市までの先行開業案検討を盛り込み、4日から関係省庁に要請を始めた。福井県新幹線建設推進課は
「小浜・京都ルートは決定事項。ルート再考はない」
と力を込める。
滋賀県は「望んでも求めてもいない」
米原ルートになると、線路が滋賀県を通る。滋賀県は過去に米原ルートを推していたこともあるが、三日月大造知事は5月、東京都内で開かれた北陸新幹線建設促進大会で
「米原ルートを望んでも求めてもいない」
と拒否反応を示した。
滋賀県民約140万人のうち、人口が多い大津市(約34万人)など県西部の住民は東海道新幹線を利用する際、京都駅(京都市下京区)から乗車することが多い。近江八幡市など県中部の住民も米原駅にのぞみが停車しないことから、京都駅を利用することもある。米原駅に北陸新幹線がやってきても、それほど大きなメリットがあるわけではない。
整備新幹線は地元負担がある。建設費からJRの貸付料を除いた額を国2、都道府県1の割合で負担する仕組みだ。米原ルート約50kmのうち、約40kmは滋賀県内。内閣府によると、新幹線建設費は北陸新幹線金沢~敦賀間で1km当たり約146億円かかった。今はもっと高いはずで、滋賀県の負担は軽くない。
並行在来線の問題も頭が痛い。米原ルートだと対象になるのは北陸本線とみられる。沿線住民が路線維持を求めれば、滋賀県が第三セクターで運営せざるを得ない。米原~敦賀間は人口が希薄なだけに、楽な経営にはならないだろう。滋賀県交通戦略課は
「持ち出しばかりが増えるのは困る」
と渋い口調だ。
小浜・京都ルートは京都府で袋小路に迷い込んでしまったが、米原ルートに切り替えても福井県と滋賀県の抵抗で立ち往生する未来しか見えない。(高田泰(フリージャーナリスト))
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みんなのコメント
大阪、京都方面からは、金沢までは、サンダーバード1本で行けたのに、敦賀で乗り換えさせられて、不便になってるだけなんだけど…
敦賀は新快速の始終着駅ではあるが、かつての在来線特急に取っては途中停車駅の1つだった。
関西圏の利用者からすると北陸に行く特急に乗ったのになんで北陸トンネルの手前で乗り換えなきゃいけないんだとと思うし、関東圏の利用からしても富山金沢で大体の需要は満たすから敦賀延伸と言われても正直ピンとこなかったんじゃないかと思う。
ルートも固まってもっと実現性が高まってから敦賀延伸なり新大阪全線開業すればよかったと思う。タラレバだけど。