2016年7月に発売された17年モデルのGT-Rにサーキット、一般道、高速道路で試乗してきた。「300km/hの高速でも助手席の人と会話が普通にできる」ことを目標にもしているGT-R。次元の高い開発目標がもたらす性能をたっぷりと味わってきた。<レポート:高橋 明/Akira Takahashi>
17年モデルはGT-Rのネーミングのとおり、「GT」と「R」の持つ意味にも注力して開発したモデルでもある。GTはグランツーリスモ。上質な乗り心地と気持ちの良い走り、グランドツーリングに相応しい性能を意味し、Rはレーシングだ。レーステクノロジーを惜しみなく投入し、圧倒的な速さを持つ、という2つの要素を大切にしているモデルだ。
GT-Rという世界観の中で、GTの性能を高めるとRの性能がスポイルされる、ということがあってはならないモデルだ。だから、Rの性能はどんどん投入できる一方で、GTの性能追及はより難しい領域に入っていくのだろう。
GTカーに求められるのは速く走れるが、乗り心地もよく静粛性などの快適性も高いという性能だ。そのため、吸音材や遮音構造の見直しなどで、室内でのロードノイズや風切り音を大幅に低減できたと説明している。
■GT-Rプレミアムエディションに試乗
エンジン・スタートボタンを押すと、V6型3.8Lターボエンジンが吠える。と同時にミッションなどの機械音も聞こえてくる。「これまでよりだいぶ小さくなった」と言うことだが、聞こえる。これがRの世界でもある。走り出しは1速にシフトするとギヤを噛む軽いショックがあり、気分は上がる。
市街地ではそれほど大きい音を出さずとも、普通に走る。乗り心地はスポーツカーのように引き締まり、気持ちよさと安心感が沸く。だが、クルマに興味のない人からすれば硬い、という表現をするだろう。
試乗車は新色のアルティメットシャイニーオレンジで、インテリアも新色のタンカラー。プレミアムエディション専用に、このタンとアーバンブラックの2色が追加された。タンカラーのナッパレザーは高級でハイセンスな印象を受ける。高級車のGTに相応しいと感じさせる。またエアコンなどのダイヤルやノブ類はアルミ削り出しで、欧州のプレミアムスポーツカーと同等の印象を受ける。GTの世界観がインテリアで表現されていると感じる。
ミッションも改良型の6速デュアルクラッチで、パドルシフトはステアリングに取り付けられた。コラムポスト固定タイプからの変更だ。高速道路に乗り100km/hまで加速する。まさに瞬間的に制限速度に到達する。加速音は軽く、チタンマフラーの乾いた気持ちのいいサウンドを奏でる。音質をコントロールするアクティブサウンド・コントロールも手伝って感性を刺激する。
100km/hでの巡航速度では、タコメーターは24000rpm付近を指す。300km/hまでの速度を6速ギヤだけでカバーするのだから仕方ないのかもしれないが、多段化の激しい昨今、スーパースポーツカーにはもうひとつ高いギヤ段が欲しい。エンジン音は常に聞こえ、高性能車に乗っていると印象付けられる。
当然日本の高速道路など、GT-Rには「これで高速?」という印象だろう。一般道の延長でしかない。実際、欧州の一般道は100km/hで走行しているのだし。
■GT-Rニスモでサーキット走行
場所を替え袖ヶ浦レースウエイに到着。ここでは「GT-Rニスモ」と「トラックエディション エンジニアリングbyニスモ」の試乗になる。ここまで試乗してきたプレミアムエディションの570psに対してGT-Rニスモは600psで、外装も専用のエクステリアを持っている。また、インテリアにも専用パーツが奢られている。サスペンションは専用チューニングされ、ビルシュタイン ダンプトロニックが装着されている。
一方トラックエディションはニスモと同じサスペンション&ホイールだが、外装などは標準車と同じで出力も標準車と同じだ。ただ、500psを超える世界での30psの差などまったく感じない。ニスモは30psプラスするためにタービンをGT3選手権で使用する高流量、大口径のターボに変更している。
試乗はあいにくのウエット路面だったが、コントロール性の高さ、安定感などRの要素を存分に味わうことができた。袖ヶ浦のコースは路面のμが一般道路と似たような路面のため、サーキットとしてはかなり低いμになる。さらにウエットという条件であるため簡単にタイヤのグリップを失ってしまう環境だ。
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