■「リレーアタック」の次は「CANインベーダー」
テレビなどで度々、高級車が盗難被害に遭う様子が報道されている。これまで「リレーアタック」という手口が定番といわれていた。
しかし、最近になって、新しい車両盗難の手口が出てきたという。いわゆる「CANインベーダー」といわれる方法だ。
2021年8月には、CANインベーダーによる車両盗難によって逮捕者も出たが、CANインベーダーとはどのような手口なのか。
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本来なら盗難防止効果のために作られたクルマのスマートキーながら、これまでスマートキーの電波を増幅してロックを解除する「リレーアタック」や、キーを紛失したときにスペアキーを作成する「コードグラバー」などが盗難の手口として使われていたが、今回出てきたCANインベーダーはでセキュリティを突破された格好。
以下、詳しく新手口を紹介したい。
まず私(国沢光宏)がいち早く情報を掴んで警鐘を鳴らしたリレーアタックだけれど、スマートキーから出ている微弱電波を使うため、キーを電波から遮断することで対策は可能。
続くコードグラバーは、車内にある「OBDII端子」に専用機器を差し込んでエンジン始動させる。したがってドアロックを解除しなければならず時間掛かった。
新しい手口であるCANインベーダーは、今までとまったく違う。
スマートキーの電波を受信出来なくてもいいし、ドアロックすら短い時間で開けられてしまう。
セキュリティを専門にしている業者なら、すでに対抗手段を見つけているかもしれないが、いかんせん防御策を公開したら窃盗団に対応されてしまうため防止策の情報は出てこない。
自動車メーカーに聞いたら「CANインベーダーについての情報は知っていますが、今のところ対応策をとれていません」という回答で、狙われたらオシマイということらしい。
果たしてどんな方法で盗難するのか。
最新のクルマは「CAN」という、人間でいえば「脳」と「神経」のようなシステムで総合制御をおこなっている。
エンジンやミッションはもちろん、エンジン始動、衝突被害軽減ブレーキ(通称自動ブレーキ)の制御、ABSや横滑り防止装置をコントロールするのもCANを使っています。
したがって車体の各所にCANの配線やセンサー、制御ユニットなどが搭載されている。もちろんOBDIIのカプラーもCANに繋がっており、コードグラバーは車内のOBDIIからCANに進入した。
しかし、CANインベーダーはさらに高度。前述の通り車体の至るころに張り巡らされているCANの配線やセンサー、コネクターから進入する。
盗難される様子を記録している動画を見たら、車体の左前方(左フロントフェンダー辺り)の下側からアプローチしていた。
盗難された車種は、そのあたりにCANの配線があるんだと思う。そして、専用機器のカプラーを差し込む。
するとOBDIIにアプローチしたのと同じ状態になってしまう。ドアロック解除の信号を送れば普通に解錠。
エンジン始動シーケンスを立ち上げることで、ブレーキ踏みながら始動ボタン押せばエンジン掛かる(ハイブリッドならレディ状態になります)。アラームだって鳴らない。そのまま乗って行ってしまえばよい。
前述の通りドアロックを物理的に開けることもないため作業時間的に短いし、アラームも鳴らない(振動センサー使ったアラームなど追加してある車両でも問題無し)。
動画を見ていると、数分でロック解除になり、直後に乗って行っている。ちなみにCANの内容は車種によって異なるため、すべての車種を盗めるというワケじゃないと思う。
モータースポーツ車両はチューニングのためCANの解析をしなければならないが、時間もお金も掛かる(表ルートだと1車種3千万円くらいになるようだ)。
したがって盗難して儲かる車種に限られるハズ。逆に考えると、今まで盗難された車種についてはCANインベーダーで乗って行かれる可能性が高いと思っておけば間違いない。
現実の対策としては、自宅のガレージなら盗みにくい工夫をすることをすすめておく。
問題は外出先で、人目が届かないような場所に駐めないようにしたい。ハンドルのロック装置とかは大きい金属ハサミでバッツリ切られてしまう。物理的な盗難防止策を講じるのだったら、複数のロックを使うと良いかもしれません。
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車に対する正当防衛。
こうすれば盗難は無くなる