クルマが好きで50年近く見続けてきた。そんな中、「なぜ別のコンセプトにするのか……」と驚くクルマが何台かあった。
ホンダ「CR-Xデルソル」もその中の1台だ。
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1983年に登場した初代ホンダ「バラードスポーツCR-X」、1987年に登場した2代目ホンダ「CR-X」は、FFライトウエイトスポーツとしての走りを堪能できるクルマだった。
ホンダ「バラードスポーツCR-X」1.5iサンルーフ仕様車
ホンダ「CR-X 1.5X」
そして、1992年2月27日に3代目CR-Xとしてフルモデルチェンジを発表。同年3月6日より全国のベルノ店で発売されたホンダ「CR-Xデルソル」は、当時のクルマ好きを驚かせる大胆なフルモデルチェンジだったのだ。
オープンの爽快感とクーペの実用性を両立させたホンダ「CR-Xデルソル」
3代目のCR-Xがオープンになった理由として、当時マツダから販売されていた「(ユーノス)ロードスター」(輸出名MX-5ミアータ)の影響が大きかっただろう。
マツダのロードスターは、1989年2月のシカゴオートショーでデビュー。2人乗り小型オープンスポーツカーとして、世界中で絶賛された。
また、1990年3月8日から発売された、トヨタ「セラ」の影響も強く感じられる。
こちらはオープンカーではないものの、ドアガラスを天井まで回り込ませたガルウィングドアを採用した、FF1.5Lクーペだ。
ほかにも80年代末から90年代初頭のいわゆる〝バブル期〟には、個性あふれるクルマが登場している。その中の1台がホンダ「CR-Xデルソル」だといえよう。
クーペ&オープンスタイルを気軽に楽しめる電動オープンルーフ「トランストップ」
ホンダ「CR-Xデルソル」はハードトップを採用したことにより、クーペに近い耐候性・耐久性・遮音性を確保している。
そして、電動オープンルーフ「トランストップ」(SiRに仕様車を設定)とマニュアル式オープンルーフが選べた。
トランストップは、キャビンにいながらにしてルーフを開閉できた。
トランストップのオープンは以下の形となっている。
トランストップ透視図
まずはエンジンをかけてサイドブレーキを引き、リアウインドウを閉めた状態にする。
室内からルーフ両サイドのロックを解除し、メーターバイザー右の開閉ボタンを押し続けると、最初にトランクリッドが上昇しはじめる。
トランクリッドが上がりきるとルーフ後端がチルトアップし、トランクリッドから出てきたスライドユニットがルーフに差し込まれる。ルーフ後端のセンターロックの操作により、ルーフとスライドユニットを接続する。
再度スイッチを押すとスライドユニットは再びトランクリッド内に後退し、ルーフを収納する。
トランクリッドが下降する。なお、安全確認のため閉まりきるまでに2回、動きが停止する。屋根を閉める場合は、以上の動作の逆を行った。
クローズ状態からオープンまでの作動時間は約45秒と短時間で作業が終わるのも魅力だった。
また、トランストップのほかに、手動で脱着するマニュアル式オープンルーフも設定された。
トランストップ、マニュアル式ともにリアウインドウにパワー開閉機能をもたせており、オープン感覚が最大限に満喫できるようになっていた。
ホンダ「CR-Xデルソル」は1.5Lの「VXi」と1.6L VTECの「SiR」がラインアップ
ホンダ「CR-Xデルソル」は、1493cc水冷直列4気筒SOHCエンジン(130PS/6800rpm・ネット値)の「VXi」と、
1595cc水冷直列4気筒DOHC VTECエンジン(170PS/7800rpm・ネット値)の「SiR」がラインアップ。
それぞれ、5速マニュアルとロックアップ機構付7ポジション電子制御4速オートマチックが用意された。
価格は1.5Lの「VXi」の5速マニュアル(マニュアル式オープンルーフ)が137万円(東京)から。
1.6Lの「SiR」の5速マニュアル(電動オープンルーフ)が188万円(東京)からとなっていた。
ロックアップ機構付7ポジション電子制御4速オートマチックは8万6000円高の設定となっていた。
ホンダ「CR-Xデルソル」のインテリア。
ホンダ「CR-Xデルソル」のインテリアは、「オープンスカイ・カフェテラス」と呼ばれた。
インストルメントパネルからセンターコンソール、サイド部からリアへと、なめらかな曲面でつなぎ、ラウンド感を強調。
メーターパネルはゴーグルをイメージ。オープンエアクルージング感覚を強調している。
ホンダ「CR-Xデルソル」のスペック(性能)
では最後に、ホンダ「CR-Xデルソル」の主要諸元を見ていこう。
全長:3995mm
全幅:1695mm
全高:1255mm
車両重量:「VXi」5速マニュアル 1030kg~(ATは1060kg~)/「SiR」電動オープンルーフ仕様車の5速マニュアルは1140kg~(ATは1160kg~)
乗車定員:2名
サスペンション形式:前後ダブルウイッシュボーン式
タイヤ:「VXi」175/65R14 82H/「SiR」195/55R15 83V
電動オープンルーフを採用した割には「SiR」で1140kg程度の重量と、現代のクルマに比べれば十分に軽量といえるホンダ「CR-Xデルソル」。決して見た目だけのスポーツカーではなかったのだ。
しかし、1992年という登場年が悪かった。この年以降の日本はバブル景気が崩壊。大不況へと突入していった。
ホンダ「CR-Xデルソル」は、デルソル=del Sol、スペイン語で「太陽の~」を意味するその名前のようには輝くことができなかったが、30年の時を経た今、改めて見直してもよい歴史的な1台といえるかもしれない。
【参考】ホンダ|CR-Xをフルモデルチェンジ オープンとクーペを1台で楽しめる斬新なコンセプトの新型CR-Xデルソルを発売
※データは2021年1月下旬時点での編集部調べ。
※情報は万全を期していますが、その内容の完全性・正確性を保証するものではありません。
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文/中馬幹弘
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