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センターデフを電子制御にチェンジ。新たな次元へと進化したエボリューションVII【ランサーエボリューションChronicleダイジェスト(11)】

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センターデフを電子制御にチェンジ。新たな次元へと進化したエボリューションVII【ランサーエボリューションChronicleダイジェスト(11)】

モーターマガジンムック「ランサーエボリューションChronicle」が現在モーターマガジン社より発売中だ。ハイパワー4WD車の代表として多くのファンから支持されてきたランサーエボリューション。その変遷を詳細に解説した内容が好評を博している。ここでは、同誌からの抜粋をお届けする。今回は電子制御センターデフ(ACD)の装着により、フルタイム4WDで革新的な速さを見せつけたエボリューションVIIついて解説しよう。

ランサーセディアがベースとなり第3世代となったエボリューションVII
2000年にランサーがモデルチェンジし、ランサーセディアになったが、これをベースとしたのがランサーエボリューションVIIで、ここからがランエボ第三世代と呼ばれている。発売は2001年1月だ。特筆されるのは、フルタイム4WD機構の要となるセンターLSDが、それまでのビスカスカップリング式LSDではなく、電子制御LSDとなったこと。これはACD(アクティブ・センター・デファレンシャル)と呼ばれるメカニズムで、モータースポーツ走行でも有効なデバイスとなった。それには後ほど触れる。まずパワーユニットから順に見ていこう。

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エボリューションVIIでは、従来の4G63型+インタークーラーターボを改良し、当時このクラス最強の206kW(280ps)/6500rpmと383Nm(39.0kgm)/3500rpmを実現。中速域中心に出力向上を図った。具体的な改良点は、ターボチャージャーの改良、インタークーラーの大型化、吸気系の見直し、3ノズルインタークーラースプレー(手動切替機構付)の採用などだ。エンジン内部では、ロッカーカバーの材質をアルミからマグネシウムに変更し、カムシャフトを中空化するなど、エンジン上部の軽量化で重心を下げた。

排気系にも手が入れられている。フロントパイプの接合部に球面継手を採用するとともに排気管のストレート化を図り、背圧を低減させた。また、メインマフラー内に背圧可変式バルブを設け、低回転域での静粛性の向上と高回転域での背圧低減を両立させた。さらに、排気管すべてのパイプをステンレス化することにより耐腐食性、強度を向上させている。

駆動系を見ていくとトランスミッションは、従来から採用の5速MTをエンジントルクの向上にともない改良している。具体的には一部ギアに高強度材を採用するとともにギアレシオも変更している。1速ギア比をローギアード化することにより発進性能を向上させ、5速ギア比をハイギアード化することにより高速巡航時の快適性、燃費性能を向上させた。また、エンジントルクの向上にともないクラッチカバーの押し付け荷重を上げるとともに、クラッチディスクとフライホイール径も大型化。これにより駆動力伝達性能と耐久性の向上を実現した。

エボリューションVIIの最大の変更点でありフルタイム4WDシステムのエポックメイキングとなったのがACDの採用だろう。これはセンターデフの差動制限を従来のビスカスカップリングLSDに替えて電子制御式油圧多板クラッチ機構とすることにより、走行状況に応じて前後ロック率配分を変えるものだ。具体的には50:50に設定されたセンターデフの前後輪差動制限力をフリー状態から直結状態までオートマチックでコントロールできる。モードの切り替えができるのも特徴だ。ターマック(舗装路)、グラベル(未舗装路)、スノー(雪道・アイスバーン)の3モード切替スイッチにより路面状況に応じた制御を最適化する。このシステムはGSRには標準装備され、RSはメーカーオプションとなった。

マニア受けする部分では、サイドブレーキを引くと、センターデフがフリーになる機構が備えられていたことが挙げられる。これは、確実にリアタイヤだけロックさせるシステムで、モータースポーツ全般、特にジムカーナに参加するドライバーにはありがたい装備だった。当初、ACDについては、モータースポーツに参加しているドライバーの間でも賛否が分かれたが、特に低ミュー路を走る場合にはタイムがいいという事実の前に誰も否定できなかった。これはランサーエボリューションがWRCに参加し続け、勝つことに執念を燃やした末に開発されたデバイスだからこそ、市販車に生かされたといえる。

もうひとつの電子制御系デバイスであるAYCは、GSRに引き続き採用されていた。ACDとAYCをコンピューターで統合制御させたのもトピックだった。三菱自動車は、「コーナーの立ち上がり加速時にはACDが主に駆動性能を、AYCが主に旋回性能をサポートし、ACDとAYCそれぞれの単独制御に比べ、優れた加速性能や操縦安定性を実現した」と謳った。

RSはオプションでAYCが装着できた。サスペンションは引き続きフロントにマクファーソンストラット、リアにマルチリンクが採用されたが、エボリューションVIIでは、アライメントの最適化とホイールストロークの増大を図り、コーナリング時の初期応答性から限界性能に至るまで、旋回性能をバランスよく向上させるなどのリファインが行われた。

ボディも強化されている。まず操縦性に大きな影響を及ぼす部分としては、サスペンション取付部およびボディフレーム結合部の補強だ。20カ所に及ぶ専用リーンフォースメントの追加、溶接点の追加、ストラットタワーバーの採用などにより、従来車に対して1.5倍の曲げ剛性を確保した。さらに軽量化に関しては、ボンネットフードやフロントフェンダーなど大型部材を標準車の鋼板からアルミに転換するとともに、部品の構造や形状の合理化により、重量増を極力抑えている。

エクステリア、インテリアはより洗練されたものに
エクステリアに関しては、エボリューションVIと比べると、フロントマスクも含め、スマートなエクステリアとなっているのがエボリューションVIIの特徴だ。機能的な部分としては大開口の放熱用アウトレットと、冷気導入用NACAダクトを配置したアルミ製ボンネットフードなどが目立つ。だが、全体的にはおとなしい印象にまとまっている。機能的な部分としては、空気抵抗の減少を図りながらエンジンの冷却効果を高めるサイドアウトレット付グリル一体型バンパー、エンジンルーム下面を覆う大型アンダーカバー、ボディと一体感ある前後ブリスターフェンダー、フロントおよびサイドの各大型エアダム、可変仰角機構付リアスポイラーなどが従来からの変更点として挙げられるだろう。

フロントビューは、多眼ヘッドランプや補助灯を含めて一体化を図り、精悍で迫力ある表情を与えるとともに、優れた照度分布と高い光力を追求したもので、夜間走行時の安全性を高めた。メーカーオプションでは、ディスチャージヘッドランプ+フォグランプを設定している。また、テールランプはクリアタイプ6連リアコンビランプを採用した。

インテリアでは室内色を、オフブラックのモノトーンを基調色とし、機能パーツでは新デザインのMOMO社製本革巻3本スポークステアリングホイール(RSはメーカーオプション)、本革巻シフトノブ、パーキングレバーグリップが採用された。インストルメントパネルに目を移すと、丸型タコメーターを中央に配した専用の5連スポーツメーターが備わる。それぞれにシルバーベゼルをあしらわれスポーティ感が強調されている。またACD走行モードを表示するインジケーターを見やすい中央部に設定した。シートはレカロ社製バケットシート(RSはディーラーオプション)を採用している。

タイヤは、GSRは標準で高性能ハイグリップコンパウンドと横方向のひずみ耐性に優れる高剛性カーカスの専用タイヤを採用し、高負荷旋回時の安定したグリップ性能と軽量高剛性を両立させた。タイヤサイズは従来の225/45ZR17から235/ZR17とすることで、高G旋回時のグリップ力を向上させている。ホイールは新デザインのメッシュタイプで、サイズは従来の17x7.5JJから17x8JJに変更されている。ブレーキはGSRには、ブレンボ製フロント17インチ用ベンチレーテッドディスクブレーキ(対向4ポットキャリパー)、リアに16インチ用ベンチレーテッドディスクブレーキ(対向2ポットキャリパー)を採用。タンデムブースターを大型化し、効きとペダル操作における剛性感を向上させた。

ABSには、前後Gセンサー、横Gセンサー、各車輪速センサーに加え、新たにハンドル角センサーを新設。これらがドライバーの操舵を検知し、旋回制動時の操舵応答性を向上させるスポーツABS(EBD付)となっている。EBDとは、電子制御制動力配分システムのことだ。

モータースポーツの活躍だが、WRCでは1997年からWRカー規定が採用されていたのはこれまでも述べてきたとおり。グループAよりも少量生産の、いわばWRCだけのために作られたスペシャルカーで参戦できるというレギュレーションだ。主だったメーカーがWRカー規定に則ったマシンで参加するのに対して、市販車をベースとするグループAでの参戦に三菱自動車はこだわった。しかし、他メーカーのラリー専用開発車が相手では苦戦を免れず、2001年から三菱自動車もWRカー規定でマシンを作ることになった。よってエボリューションはWRCの上位クラスでは戦えないある意味不幸なクルマとなってしまった。

ただし、ベース車両の性能がものをいうグループNでは、プライベーターに盛んに使用される状況は変わらなかった。国内のモータースポーツを見るとACDという武器を利用して活躍をした。ただ、電子デバイスで速く走るというのは、クルマが速く走らせてくれていることでもあり、ドライビングテクニックを磨きたい人たちには微妙な位置づけとなったのも事実だ。エボリューションVIIは、国内サーキットレースでの活躍も見落とすわけにはいかない。スーパー耐久選手権レースで2001年に三菱PUMAランサーEVO VIIがチャンピオンになるなどの活躍を見せた。

ランサーGSRエボリューションVII主要諸元
●全長×全幅×全高:4455✕1770×1450mm
●ホイールベース:2625mm
●車両重量:1400kg
●エンジン:直4DOHC16バルブ+インタークーラーターボ
●排気量:1997cc
●最高出力:280ps/6500rpm
●最大トルク:39.0kgm/3500rpm
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:フルタイム4WD
●10.15モード燃費:9.6km/L
●車両価格(当時):299.8万円

[ アルバム : ランサーエボリューションChronicle(11) はオリジナルサイトでご覧ください ]

文:Webモーターマガジン 飯嶋洋治(FAN BOOK編集部)
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みんなのコメント

4件
  • エガちゃんねらー
    そうそう グループNはエボかインプかって世界
    ヨーロッパ中心なのに日本車ばかりというw
  • hotchilli
    鳴り物入りで登場したACDですけど、
    個人的な感覚ですが、
    舗装路では大して効果ないと感じます。
    スポーツ走行を良くするんですが、
    どのモードで走っても同じような感じで同じようなタイムが出ます。
    やっぱり一番効く電子制御はスーパーAYCなんでしょうね。
    ただ、スーパーAYC付は乗ったことないんで何となくそう思います。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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