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4WDマイスターのレーシングドライバーが乗って触って徹底解説! GRヤリスの「メカ」を斬る

 パワーユニットは2リッターターボエンジンと比べても遜色ない!

 ようやくトヨタGRヤリスに試乗することができた。長く三菱自のランサーエボリューション(ランエボ)開発に関わり、とくにレースシーンでランエボの4WDシステムから速さを引き出すことに傾注してきていたので、4WDスポーツとして登場したGRヤリスには高い関心をもっていたのだ。とはいえ、今回の試乗は一般道。クローズドコースは用意されていないので、とても限界走行を試すことはできそうにない。そこで、会場に展示されている普段見ることができないカットモデルを参考に開発担当エンジニアにインタビューを行いつつ試乗の参考にすることとした。

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 まずはパワーユニットから。GRヤリスに搭載されるのは1.6リッター3気筒のターボチャージドエンジンだ。そのパワースペックは最大出力が272馬力を6500回転で発生させ、最大トルクは370N・mにも及ぶ。

 最大出力280馬力自主規制時代のランエボやインプの2リッターターボエンジンクラスと比しても遜色ない数値を引き出している。1.6リッターとしたのはWRCをはじめモータースポーツシーンでのカテゴリー基準に適合させるためだろう。

 このエンジンはG16E-GTS型でヤリス1.5リッターのM15A型とは細部に渡り大きく異なっている。もっとも気になったのは直噴とポート噴射を両立するトヨタ自慢のD4システムを搭載していることだ。トヨタ86/スバルBRZもD4システムを搭載しているが、ターボ過給器と組み合わされたのは今回が初めてではないだろうか。吸排気バルブスプリングには不等ピッチで可変径の特殊形状のスプリングが採用されていて、最高回転数の7200回転域においてもバルブサージングを起こさず安定したバルブ追従性が可能になったという。また吸排気に可変バルブタイミングのVVT-iも採用していて、持てる技術をフル投入していることがわかる。

 シリンダーブロックはアルミニウム製で軽量だが、厚みのある鋳鉄製のスリーブを埋め込んだオープンデッキ方式であり、軽量化を計りつつ高出力時の剛性も確保し耐久性を高めている。後方排気でレイアウトされるターボチャージャー自体は小型で極めてオーソドックスな仕様となっている。ツインスクロールや可変A/Rなどの特殊な機構は持たない。またインコネルなどの特殊鋼も使用せず、しかし最大過給圧1.6barを安定して供給し続けることができるという。それは3気筒のシリンダーレイアウトが排気干渉を起こさず効率よくタービンを回せるからだという。あえて3気筒を選択したのは性能重視の理由からなのだ。

 次にトランスミッション。僕は勝手にDCT(デュアルクラッチトランスミッション)が選択できるのではと思っていたのだが、設定されていたのは3ペダルの6速マニュアルミッションのみだった(1.5リッターのRSグレードはこの際話の外に置く)。といってもこのミッションはヤリスの6速MTとは別物で、完全に専用設計となっている。トランスミッションは耐久性を上げるのが課題だが、GRヤリスでは1、2、3速をトリプルコーンシンクロとして強化。

 1、2速にはカーボンのシンクロを採用して軽量かつ高剛性としている。また4、5速はダブルコーンシンクロで1~6速までギヤ歯面を加工強化していて耐久性対策は万全だ。実際に富士スピードウェイで開催された24時間レースにモリゾーこと豊田章男社長もドライバーとして参戦。ウエットコンディションに助けられたとはいえ、初参加ながら完走しクラス優勝を果たして耐久性の高さを証明している。

 エンジン+ミッションをマウントするフロントクロスメンバーはヤリス/ヤリスクロスと同じだが、リヤクロスメンバーは同じTNGAプラットフォームファミリーに属するがクラス上のGA-C(カローラやプリウスクラス)型を採用していて、見た目にもガッチリした構造をしている。

 そのリヤクロスメンバーにはトルセン方式のデファレンシャルと電子制御される電磁カップリングクラッチが搭載されている。ハイパフォーマンスグレードは前後に1WAYのトルセンLSDを装着しているが、その他のグレードはノーマルのオープンデフを装着。RCグレードはレースやジムカーナ、ラリー、ダートラなど競技に使用するベース車で、必要に応じてユーザーが好みのLSDを選択して装着させるのが狙いのようだ。

 意のままに操れる4WDスポーツとして今後の磨き上げに期待したい

 カップリングクラッチはGRヤリスを4WDスポーツとして高度に成立するための要となる重要装備だ。採用されているのはJTEKTから供給される湿式多板電磁クラッチで、クラッチ枚数は10枚以上組み合わされ、900N・mのトルク容量を誇る。構造以上に重要なのはその制御ロジックだ。ハイパフォーマンスにはノーマル、スポーツ、トラックと3モードをスイッチで選択でき、ノーマルでは前60後40のトルク配分。スポーツでは前30後70とリヤ寄りの駆動配分となり、トラックでは前50後50という駆動力重視の設定がなされていた。こうした駆動力配分を可能としているのはトランスファーに2.293、リヤデフに2.277という0.7%程度の減速比変化を与えていることで、カップリングの上流と下流で回転数差を生じさせることで強制的に後輪がトルクを奪う仕組みとしていることだ。

 ただ常時回転数差を生じるためにはカップリング内のクラッチをつねに滑らせ続けなければならずオーバーヒートしやすい。またコーナリング姿勢によっては内輪差やヘッドインによる車輪速変化で0.7%分は相殺されてしまうので、数値通りに常時固定させることはできない。おそらく多くのユーザーがイメージしている後輪駆動のようなリヤタイヤをパワースライドさせてカウンターステアを当てながらドリフト走行させるのは乾燥舗装路では不可能だといえる。

 実際にコーナーでいくつかの操作を試したが、アクセルターンに近い微低速の小さなRの旋回時にアクセルを踏み込むと、トルク増大初期には蹴飛ばされるようにリヤが振られたが、すぐに駆動力が4輪均等にかかり、コーナー出口はアンダーステアになっていた。

 今や世界的に有名になった「ゼロカウンター走法」は、高速旋回中にトランスファーを強く拘束し、前後のLSDの効きを効果的に強めなければ有効な走法とならない。現状の設定のままだとトルセンが1.5WAYで効かせ方(バイアス比駆動側2.3、減速側1.9だがJTEKTは1WAYと表記している)は弱く前後バランスも不明なので筑波サーキットの最終コーナーのような高速でのゼロカウンターは有効な走法にならないのではないかと推測できる。メルセデスAMG A 45 SはGRヤリスと似た駆動システムだが、リヤアクスルに左右トルク移動式デフを装着。さらに強力なブレーキベクタリングも作動させて「ドリフトモード」を可能としているが、GRヤリスはそうしたギミックも有していない。

 一方、サイドブレーキターンは可能で、レバー方式のサイドブレーキを引き上げればカップリングが解放されテールを振るが、アクセルを踏み込み続けてもフェイルセイフが働きパワーを絞るようで、ジムカーナなど競技で使うにはECUの変更が必要になるだろう。

 同じようにブレーキング時には安定性とハンドリングのバランスを得るためカップリングを弱く掴む設定となっているが、じつはそれはドライバー目線的には中途半端で有りがたくない。GRヤリスのブレーキシステムはフロント4ポッドにフローティング方式のディスクローターを組み合わせ理想的な構造を採用している。前論のストッピングパワーは強力で、ホイールベースの短さから急制動時にはピッチングモーメントが起こりリヤ荷重は減少する。このときにターンインしようとしても前輪はブレーキ力にグリップを奪われているのでコーナリングフォースの立ち上がりが悪い。

 そこで三菱ランサーエボリューションではセンターデフの拘束力を強めて後輪にもブレーキ力を伝達し制動安定性を高めつつ後輪ブレーキターンのような状況を作りだしていた。ドライバーがステアリングを切り込むと瞬時に拘束を弱め旋回応答性を高めることで直進制動性とターンイン応答性を両立していたのだ。ダートやオフロードでは拘束優先、乾燥舗装路やサーキットではステアリング操作に応じて拘束力を変化させる。GRヤリスはまだその領域にも達していない。ただヨーセンサー、ステアリング操舵角センサーなど必要な情報はそろっているので、今後ECUのシーン別適合作業がきめ細かく行われることを期待したい。

 さて、最後に一般道を走った印象を記しておくが、iMTによるブリッピング操作はヒール&トウの必要性をなくし、誰でもスムースなシフトダウンができる。エンジン音は大人しく、最近の欧州製ターボスポーツモデルのようなフラップサウンドは鳴らさない。いたって普通の乗用車として快適でスムースに走れてしまう。リヤシートはヘッドスペースが狭くて大人には窮屈だが、なだらかなルーフラインは車体後方に設置されるであろうリヤウイングの効率を高めるために必要で、狭さは我慢しなければならない。リヤコンバートメントも狭く床が高いが、その床下にはバッテリーが搭載されて前後重量配分の向上に役立てている。その搭載位置は右ハンドルと左ハンドルで微妙に異なり、左右の重量バランスにも配慮しているという。

 ルーフはカーボン製で軽く、エンジンフード、左右ドアパネル、リヤゲートも軽量なアルミ製だ。したがって走りは軽快でアジリティも高い。

 今後モータースポーツのさまざまなシーンでカップリング制御を含め各部が磨き上げられていくだろう。意のままに操れる4WDスポーツとして完成度を高めていく姿を楽しみに注視していこう。

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