スモールカーのベンチマーク的な存在となっているホンダのフィット。初代のデビューから12年間で500万台に迫る販売台数を記録し、世界中に多くのファンが持つ。2代目のフィットは初代の延長線上にあったが、3代目はデザインだけでなくメカニズムもまったく別物。何がどう変わったのか? 九州は熊本~長崎~福岡の全行程355km試乗でその進化を見極めた! (本稿は「ベストカー」2013年10月26日号に掲載した記事の再録版となります)
文:片岡英明/写真:茂呂幸正
街中で 郊外で サーキットで 高速道路でとことんチェック 3代目ホンダフィット熊本~長崎~福岡全行程355km試乗プレイバック【10年前の再録記事プレイバック】
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■先代からは走りも燃費も大幅に実力アップ!
先代からガラリとイメージを変えたフロントマスク。全体的に精悍で男性的な印象になった。果たして評判は?
リアスタイルも大幅に変更。角張ったフォルムで先代、先々代よりもかなりスポーティに仕上がっている
フォルムは大きく変わっていないがサイドパネルは大胆なキャラクターラインが施されている
先代までのイメージが「柔和、優しい」だったとすれば、新型は「スポーティ、高級」を目指していることがわかる。新鮮さは強く感じる
プラットフォームは一新したが、自慢のセンタータンクレイアウトは受け継いだ。ただし、構造は変えている。
全長は50mm延びて3955mmに、ホイールベースは30mm長くなって2530mmになった。全幅は1695mmだ。
今までと同じように小型車枠のなかに収めている。全高も1525mmと、立体駐車場に無理なく入る高さにこだわった。
パワートレーンは3つとも新設計だ。今までと同様に1.3Lと1.5Lエンジン、そしてハイブリッドを用意している。だが、全エンジンがDOHC・i-VTEC仕様へと進化し、アイドリングストップも採用した。ハイブリッド用のエンジンは1.5Lに排気量を増やしている。
1.3Lエンジンはアトキンソンサイクルと電動化した連続可変バルブタイミング.コントロール機構(VTC)によって良好な燃費と力強いパンチ力を両立させた。FF車はキャパシタも搭載する。
1.5Lエンジンは直噴化などで燃焼効率を高め、先代より約10%高い出力を実現した。
ハイブリッド用エンジンはi-VTECとVTC、アトキンソンサイクルなどのメカが目を引く。従来のIMAと同じ1モーター・パラレル式だが、新型はデュアルクラッチトランスミッションを高出力モーターに内蔵したi-DCDだ。
モーター駆動とモーターアシストは、7速DCTの奇数ギヤを介して行なう。バッテリーもニッケル水素より高出力で容量の大きいリチウムイオンバッテリーを搭載した。
また、先進のインターフェイスも特徴のひとつ。スマートな直感操作ができるように、初めて静電式タッチパネルを採用している。
衝突軽減ブレーキと誤発進抑制機能に代表されるシティブレーキアクティブシステムも、先代にはなかった先進の安全装備だ。
質感を大幅に高めた内装。仕上がりは高く、長時間乗っていても疲れないぞ
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■走ってどうだったか?
合計350km超の試乗でフィットの走行性能を徹底チェック。熊本から長崎に渡り福岡へ。燃費もチェックしたぞ!
新型(3代目)フィットは、パワートレーンが大きく変わった。
そこで今回はサーキットに持ち込んで、極限状態でのフィーリングをチェックしてみた。最初にステアリングを握ったのは、もっともサーキットが似合うRSの6速MT車だ。
新開発の直噴エンジンは軽快なパワーフィールで、高回転まで気持ちよく回る。レッドゾーンの6500回転に難なく達し、アクセルを踏み続けると7000回転まで実用になった。
うれしいのはi-VTECがスポーティ方向に味付けされていることだ。
カムが高速側に切り替わると、ビートのきいたエンジンサウンドを奏でる。適度にショートストロークの6速MTは軽いタッチで、小気味よく狙ったギヤに入るなど、扱いやすい。
熊本と大分の県境に位置するオートポリスインターナショナルレーシングコース(住所は大分県日田市)にて試乗。かつてF1も誘致したことがある名門サーキットでフィットの実力をじっくりと検証
2台目はRSの7速CVT車に乗った。CVTとは思えないほど応答レスポンスが鋭いなど、こちらも元気いっぱいだ。滑らかさが持ち味だが、積極的にアクセルを踏み続けると6500回転までストレスなく回る。
スポーツドライビングではステアリングに手を添えたまま好みのギヤを選べるパドルシフトも重宝した。
ただし、高回転まで引っ張ると自動的にシフトアップするなど、もどかしいと感じるところもある。公道では気にならないが、極限の領域ではCVTをだますテクニックも必要だった。
サスペンションは形式こそ前ストラット、後トーションビームで同じだが、すべて新設計だ。
専用セッティングのRSは足が引き締められ、タイヤも185/55R16を履く。軽やかなフットワークを見せるが、ロールは抑え込まれ、リアは踏ん張りが利く。元気にコーナーに飛び込んでもリアが安定しているから不安なくホットな走りを楽しむことが可能だ。
ハンドリングにも磨きがかけられている。スポーティな味わいに加え、意のままに操るコントロール性も大きく向上した。電動パワーステアリングは洗練度を高め、直進安定性も優秀だ。
風が強かったが、直進安定性は大きく向上している。横風が強かった高速道路でも同様の印象を持った。
RSは4輪ディスクブレーキにグレードアップされている。サーキットでは100km/hを超えるスピードから何度も急制動を行なったが、安定したきき味だった。姿勢の乱れも小さい。横滑り防止装置のVSAも出しゃばらない、絶妙な味つけだ。
1.5LのDOHC・i-VTECエンジンを得たハイブリッド車も優れたドライバビリティと胸のすく加速を披露した。モーターの出力とトルクは2倍以上に引き上げられている。
さすがにサーキットではECONモードだと非力だったが、Sモードを選べば痛快な走りを存分に満喫できる。
ダイレクト感と力強さは1.5Lエンジンの一歩上をいく。吹け上がりも軽やかだ。変速もCVT並みに滑らかで、切れ味鋭いから気持ちがいい。
その日の午後、サーキットを出て一般道を走ったが、優れたドライバビリティが印象的だった。
流して走ったり、下り坂ではEV走行できる時間が長いから燃費向上の効果も大きい。エンジンが始動した時の違和感もまったくなかった。
さすがにサーキット走行ではRSほどの好印象を残さない。重さが災いして軽快感は薄いが、優れたコントロール性はRSと通ずる美点だ。シフトダウンやブレーキングによる挙動の乱れも上手に抑え込んでいた。コントロールしやすく、公道では上質な乗り味までも手に入れている。
今回は試乗機会がなかったが、プロトタイプで乗った13GのFパッケージもよかった。エンジンは軽やかに回り、燃費も悪くない。タイヤをグレードアップするだけで質感は大きくアップする。
ライバル、トヨタアクアのJC08モード燃費35.4km/Lを抜いた新型フィット
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■燃費と乗り心地
満タン法で計測した結果、郊外~市内を60km走行して燃費数値は31km/Lと、ほぼ備え付けの燃費計と変わらない結果となった。JC08モード燃費は36.4km/L。目指せば出そうだぞ!
さすがにハイブリッド車でもサーキットでは10km/Lに届かなかった。が、一般道では非凡な実力を見せた。
山岳路や渋滞した街中でも15km/Lは難なく超えた。高速道路では軽々と20km/Lを超えるなど、先代の記録をことごとく塗り替えている。公道での実際の燃費は、2モーター式のトヨタ製ハイブリッド車に勝るとも劣らない。
サーキットからの帰り道、阿蘇の周辺で撮影を行なった。そこから下って熊本市内に行ったが、伴走車のアクアにカウンターパンチを浴びせる快走を見せている。
下り坂が多かったが、夕方の渋滞にも巻き込まれた。約60kmのステージだったが、アクアはインフォメーションディスプレイで27.4km/Lを表示している。
これに対しフィットハイブリッドは、コンマ5上回る27.9km/Lを記録した。先代のフィットと比べると群を抜いて燃費がよくなっていることを実感。
翌日は燃費計測をしながら撮影を行なった。まずは熊本市内から天草に向かって一般道を1時間ほど走って燃費を計測する。信号も少ない好条件だったが、ここでは32.5km/Lをマークしている。
そこから先のフェリー埠頭までも同じような道路状況だ。約50kmの距離を走ったが、平均速度は39km/hになった。アップダウンが多かったこともあり、このステージでは30.4km/Lにとどまっている。もちろん、文句のつけようのない好燃費だ。
長崎県に渡り、諫早市を目指す。このステージも50kmほどの距離だったが、信号が多く、平均速度は34km/hとなっている。初めて30km/Lを割り、28.8km/Lに。丁寧に乗ったら驚異的な数値を連発した。
最後が高速道路を主体にしたエコランである。80kmほど高速道路を走ったが、意外にもアップダウンが多かった。が、滑らかなアクセル操作を心がけ、条件がよければ80km/hくらいまではEV走行を行なう。先代と比べてEV走行の領域が広がり、これが好燃費につながった。
途中で渋滞に巻き込まれ、最後はペースアップしたが、最終的に29.0km/Lを叩き出している。この数値を上回るチームがいた(29.8km/L)が、すべて1km/L前後の範囲に収まった。フィットは燃費のいいクルマであると断言できるだろう。
乗り心地は、路面によってはちょっと硬質と感じることがある。だが、先代と比べると感動するほどよくなっている。また、キャビンは広く、開放的だ。後席の快適性も向上していた。シートはサーキットでもロングドライブでもサポート性がよく、疲れは少なかった。シンプルで直感的に分かる操作系スイッチも美点のひとつだ。マルチインフォメーションディスプレイも見やすい。
長距離試乗に使ったのはHVのFパッケージ。いいクルマだけど、ちょっと空気圧を入れすぎでは……? 乗り心地がイマイチ
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■おすすめグレードは?
新型フィットのRSは1.5Lのガソリンのみ。HVのRSは用意されず
走りを楽しむならRSの6速MT車がいい。が、燃費のよさを知ってしまうと、ハイブリッドの魅力に引かれる。
RSに近い走りを期待するなら、エアロパーツやRSに準じたシートとインテリア、16インチタイヤを履くSパッケージがおすすめだ。
が、ファミリーカーとしてトータル性能が高いのは、ハイブリッドではない15Xである。エンジンは好印象だったし、ハンドリングも軽快だった。渋好みの選択である。
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■3代目フィットLPL(開発責任者)小西真氏直撃 フィット最大の「ウリ」は?
3代目フィットLPL(開発責任者)小西真氏
──重圧はありましたか?
【小西真氏(以下、小西)】まったくなかったんですよ。フィットの開発責任者というのはよく交代するので、僕も一時的なものかな、なんて思ってたこともあり気楽でした。そしたら最後までやることになっちゃって。
──特に「ここを見てほしい」というウリはどこですか?
【小西】全部ですけど(笑)、特にというなら「燃費スペシャル仕様ではないのに、世界一の燃費数値を出した」というところですね。買い物にも送り迎えにも旅行にも、普通に使えてナンバーワンの数値を出せたということが嬉しいですし、ぜひそこを体験してほしいです。
cap
──先代はキープコンセプトでしたが、3代目はデザインが大きく変わりました。
【小西】変わってるように見えますか? 特に「先代から変えよう」と意識したわけではなくて、一番いいものを選んだらこれになりました。上層部で別のデザイン案を選んだ方もいましたが、最終的にはこれで納得してもらったし、いいものに仕上がったと思ってます。いいデザインでしょ?
──燃費ナンバーワン獲得のプレッシャーは大きかった?
【小西】そりゃもうね、全世界、全クラスで一番を獲れと言われたわけですから、これはなかなか凄い仕事だなと思いました。いろんな人にも苦労をかけましたし(笑)。ただ、ある程度まとまった開発費を渡されて「これで世界一を獲れ」と言われる開発の仕事なんてそうそう経験できることではありませんから、そういう意味では幸せでした。
(ここで本田技術研究所で四輪開発部門トップの野中俊彦副社長が乱入)
【野中氏】小西にはだいぶ苦労をかけました。お金(開発費)も本当はもっと渡せればよかったんだけど、ウチは大学の研究室じゃないんだからね。決められた金額内で作って、しかも儲かるようにしないと、お客さんにより多くの負担をかけてしまう。そういう意味でも小西はいい仕事をしてくれて、そのおかげでお客さんにいい値段でお渡しできることになっています。
ホンダ 3代目フィット諸元表
(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)
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