トヨタ・スープラとBMW Z4はユーザーにとって競合しえない
トヨタ・スープラで人気の高いグレードは、直列6気筒3リッターターボエンジンを搭載するRZだ。価格は690万円になる。ショックアブソーバーの減衰力を変化させるAVS(アダプティブ・バリアブル・サスペンション・システム)、アクティブディファレンシャル、19インチタイヤなどの装着もあって約700万円に達した。
トヨタ・スープラは1日にしてならず! 意外と知らない5世代の歴史とは
この価格帯になると、日本車の車種数は大幅に減る。スポーツカーの場合、レクサスRC350Fスポーツが同じ価格帯に用意される程度だ。日産GT-R、レクサスLC、ホンダNSXなどは1000万円を軽く超えており、そのほかのスポーツカーは大半が500万円以下だ。日産フェアレディZの性能を高めたNISMOでも、スープラRZよりは安い。
スポーツモデル以外のほかのカテゴリーでも、700万円前後となれば、アルファード&ヴェルファイア、レクサスGS/RXなどの上級グレードになる。従って選択肢は少ない。
基本部分をスープラと共通化したBMW Z4は、RZと同じエンジンを搭載するM40iが835万円だ。電動開閉式ソフトトップを装着したこともあって、スープラRZに比べると100万円以上高い。
2リッターターボエンジンを搭載したBMW Z4 sDrive20iは、スタンダードなら566万円に収まるから、590万円のスープラSZ-Rよりも少し安い。sDrive20i M Sportは665万円だ。
注意したいのはBMW Z4の動力性能で、2リッターターボエンジンは、Mスポーツまで含めてスープラSZと同じ仕様になる。最高出力は197馬力、最大トルクは32.7kg-mと大人しい。スープラSZ-Rは同じ2リッターターボでも258馬力・40.8kg-mに高まるが、日本市場においてBMW Z4でこのエンジンは選べない(欧州にはsDrive30iのグレード名で用意される)。つまりスープラとBMW Z4では、価格帯は重複しているが車両の性格は異なる。
意外にもガチライバルはポルシェ!
そうなるとクローズドボディのライバル車として浮上するのがポルシェ718ケイマンだ。エンジンを座席の後部に搭載する2人乗りのスポーツカーで、ボディサイズはスープラに近い。水平対向4気筒2リッターターボの性能は300馬力/380N・mで、価格は6速MTが680万円、7速PDKが727万2000円になる。スープラRZとほぼ同額だ。
上級の718ケイマンSは2.5リッターターボを搭載して、350馬力/420N・mを発生させる。ただし価格は6速MTが869万円、7速PDKは916万2000円と高くなる。
日本車は前述のようにスポーツカーの車種数が減り、スープラのライバル車も探しにくい。それでもボディサイズやエンジン排気量を考えると、フェアレディZがもっとも近いだろう。エンジンはV型6気筒3.7リッターで、4輪アルミキャリパー対向ピストンブレーキなどを備えるバージョンSが476万640円だ。
この割安感は魅力だが、フェアレディZは発売から10年以上を経過している。走行性能から安全装備まで、今では設計の古さを感じる。
そうなると結局のところ、選択肢は3リッターターボで340馬力を発揮するスープラRZと、2リッターターボで300馬力のケイマンに絞られそうだ。豪快な加速と良く曲がる操舵感、充実した安全装備などを重視するならスープラになる。
一方、正確に反応するステアリング/エンジン/ブレーキ、滑らかな挙動変化など、緻密で上質なクルマ作りを求めるならケイマンが推奨される。ケイマンでは装備から内外装の色彩まで、ユーザーの好みに応じた細かなオーダーも可能で、自分だけの1台を作り上げられる。こういったポルシェのブランドを感じさせる販売方法も魅力だ。
それにしても、スポーツカーの品ぞろえが乏しい日本車において、スープラは貴重な選択肢となった。価格は高めだが、ポルシェやBMWと比べたくなる魅力を備えている。
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