より扱いやすく、安心感アップ
サーキット走行も楽しめるワイドレンジなハイグリップタイヤとして人気を博したミシュラン「パワーRS」。今回のフルモデルチェンジを機に、ストリートに特化した「パワー5」と、サーキットでの性能をより高めた「パワーGP」へと分流した。今回はスズキ・カタナをメインに、前作パワーRSとの同時比較テストを行った。
●文:大屋雄一 ●写真/取材協力:ミシュラン
よりナチュラルな操安性へ。ウェット路面も恐くない
先代タイヤ「パワーRS」から新たに誕生した、ストリート系の「パワー5」とサーキット系の「パワーGP」。ミシュランが想定する一般公道とサーキットの使用比率は、先代のRSが85%:15%だったのに対し、パワー5は一般公道が100%、パワーGPは50%:50%であり、この数字からそれぞれの狙いがおよそ理解できよう。
―― 【MICHELIN POWER 5】●価格:オープン
前作のパワーRSは、ハイグリップ系でありながら暖まりが早く、軽快でスポーティなハンドリングを特徴としている。今回はグリップのいいテストコースで試乗したのだが、’17年の登場時に公道用スポーツラジアルとして最高水準にあると絶賛されただけに、全く不満がない。唯一、わずかにステアリングが切れるのが早いような印象を受けたのだが、これは試乗車であるスズキ・カタナの特性かもしれない。
―― MICHELIN POWER RS装着車
そう思いながら新作のパワー5を履いた試乗車に乗り換えると、表現が過ぎるように思われるだろうが、全くの別物だった。まず感じるのは乗り心地の良さで、明らかにしなやかで接地感が高い。パワーRSはリヤにACT+という独自のテクノロジーを採用していたが、パワー5ではシンプルなシングルカーカスに。これは技術的な後退ではなく、さまざまな技術の中から最適な組み合わせを選んでいるだけに過ぎない。事実、このしなやかさはツーリングに最適と思うほどだ。
―― ミシュラン パワー5装着車
そして、ハンドリングについてもパワー5は進化している。前後のタイヤが絶妙にシンクロしながらバンクするので、印象としては極めてナチュラル。ブレーキングを残しながらのコーナー進入で狙ったラインをトレースしやすく、しかも深く寝かせている際の安定性が高い上に、そこからスロットルを大きく開けたときのリヤからのインフォメーションが潤沢など、全ての印象がパワーRSを上回っている。なお、ドライグリップに関しては、リヤのショルダーのコンパウンドがブラックカーボンからシリカに変更されているが、ケーシングのしなやかさがそれを補っているのか、大きな差異は感じられなかった。
さらにウェット性能もいい。土砂降りの中でABSやトラクションコントロールの介入レベルを試してみたが、一般公道を常識的なペースで走る分には滑り出す気配すらなく、ひと昔前のハイグリップ系のネガなイメージは一切なし。スポーツモデルはもちろん、ツアラーにも対応できるほどワイドレンジなタイヤだ。
―― トレッド面における溝の比率を表すボイド比は、パワーRSの6.5%から11%(前後とも)にアップ。リヤのショルダーのコンパウンドはブラックカーボン→シリカへ。
―― (1) トレッドショルダーのディンプル模様とスクエアパターンの細溝は、ウェット時にライダーに対して視覚的に安心感を与えるもの。 (2) ロゴ部分には光を吸収してグレーとブラックのコントラストを演出するベルベットテクノロジーを採用。サイドウォールに上質感がプラスされた。
先代RSからストリート系/サーキット系の2派に分流
先々代「パイロットパワー3」の後継として’17年に登場した先代の「パワーRS」は、一般公道だけでなくサーキット走行も視野に入れて設計された。このパワーRSから今回のモデルチェンジにより、公道向けの「パワー5」とサーキット性能を追求した「パワーGP」の2つに分流されることになった。
パワー5/GPを含め、全4種の「パワーエクスペリエンスシリーズ」を展開
上の2グレードに加えて、さらにサーキット指向の新作が2種登場し、全4種で「パワーエクスペリエンスシリーズ」を新たに呼称する。
―― 【基本構造は4銘柄とも同一】パワーRSではカーカスをビードで折り返す独自のACT+をリヤに採用していたが、新シリーズでは全4種類が簡素なシングルカーカスに。しなやかさと軽量化を同時に達成した。
―― パワーエクスペリエンスシリーズ サイズ表 ※公道走行不可
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