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フツーのフレンチ・ハッチバックが小さくて軽くて小気味よい──ココロに効くクルマに乗ろう VOL.11

掲載 更新 16
フツーのフレンチ・ハッチバックが小さくて軽くて小気味よい──ココロに効くクルマに乗ろう VOL.11

自動車は走れば何でもいい。そう考える人は多いし、間違いでもない。しかし、自動車の個性が薄くなり、EVやカーシェアリングが普及する「今」だからこそ、クルマに「遊び」や「冒険」を求めたい。伊達軍曹が贈る攻めの自動車選び。第11回は「何の変哲もないFFハッチバック」プジョー106をお届けしよう。

ごくフツーのフランス産ミニマムハッチバック

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郊外や地方都市に住まうのであれば話は別だ。しかし東京あるいはそれに準ずる都市に住まう者にとって、「実用」を主たる目的にクルマを所有する意味はさほどない。

そんな状況下で「それでもあえて自家用車を所有する」というのであれば、何らかのアート作品を購入するのに近いスピリットで臨むべきだろう。

すなわち明確な実益だけをそこに求めるのではなく、「己の精神に何らかの良き影響を与える」という薄ぼんやりとした、しかし大変重要な便益こそを主眼に、都会人の自家用車選びはなされるべきなのだ。

そう考えた場合におすすめしたい選択肢のひとつが、日本では1995年から2003年まで販売されたフランス産のきわめてミニマムなハッチバック、「プジョー106」である。

プジョー106。もしもそのハードウェアの特徴をなるべく端的に述べるとすれば、それは以下のとおりとなるだろう。

「何の変哲もないFFハッチバック」

そうなのだ。プジョー106というクルマには、人目を引く華々しいメカニズムは(表面的には)いっさい使われていない。

日本仕様に搭載されたエンジンは、前期型が1.6リッターのSOHC4気筒で、1996年からの後期型がDOHCの1.6リッター。後期DOHCはやや高回転型だが、だからといってホンダVTECのような複雑なメカニズムが付帯しているわけでもない。ごくフツーである。

サスペンションはフロントがマクファーソンストラット+コイルで、リアがトレーリングアーム+横置きトーションバー。自動車のスペックに詳しくない人からすると意味不明のカタカナの羅列で、何やら高級なサスペンションシステムと勘違いするかもしれないが、念のため解説すると「当時のFF小型車としてごく普通のサスペンションでした」ということである。

小気味よいのは「小さくて軽いから」

しかし「ごく普通」なのだが、この106というクルマ、すこぶるよく走る。

まるで自分の肉体が──それは日本人男性の場合、たいてい長さが1.7mから1.8mぐらいで、横幅がせいぜい40cmぐらいであるはずだが──それが数メートル四方となるクルマの形にそのまま拡張し、体内で爆発しているエンジンの様子と、足(タイヤ)がとらえている路面の状況をリアルタイムで逐一認知しながら、前方に向かって高速移動したり、あるいは側方に向かって回頭したりするような感じ──といえばいいだろうか。

この感覚と似た部分を持つマツダのロードスターというクルマに対し、広島の技術者たちは「人馬一体」という言葉を使ったが、プジョー106に対してはなんと言うべきか。

人体拡張車? 肉体超特急? ……ネーミングのセンスが皆無なため今ひとつ素敵なフレーズが浮かばないが、まぁとにかく自身の肉体がそのままクルマと化したかのように自在に走ることができ、それがゆえに「快感」を感じることができるクルマ。それがプジョー106だと思っていただければ、おおむね間違いない。

そのような快感発生器であるプジョー106には、前述のとおりややこしいメカニズムは使われておらず、というか、どちらかといえばショボい機構類が採用されていた。それなのになぜ、こんなにも小気味良く走ることができるのかといえば、結局のところは「小さくて軽いから」なのだろう。

後期型のS16というグレードでいうとスリーサイズは全長3690mm×全幅1620mm×全高1370mmで、車両重量は960kg。数字を見てイメージできるのはカーマニアだけかもしれないため補足すると、要するにこれは「トヨタ ヴィッツより断然小さくて軽い」という数字である。

そこに(後期型の場合は)最高出力118psのエンジンをぶち込み、5MTをローギアードに(最高速ではなく加速が良くなる方向に)セットし、そのうえで、詳細は不明だがプジョー社秘伝の味付けを各所に施したのだから、この小さなハッチバックがすこぶるよく走るのも、まぁ必然といえば必然なのかもしれない。

狭いのはどうってことない問題

そんなプジョー106に、己のココロを高揚させるために乗ろうじゃありあませんか! というのが本稿の主旨なわけだが、実は問題点もなくはない。

ここまで繰り返してきたとおり、サイズ的に小さいというのは「快感発生器」としては有利に働くのだが、普段使いのクルマとしては「狭っ苦しい」「荷物があまり積めない」というネガティブ要因にも転じる。

こういった部分に難色を示す向きもあるのかもしれないが、筆者個人としては「別にどうってことない問題じゃないですか? 」と考えている。

「狭い」というのは確かにそのとおりだが、自分ひとりか、あるいは3人家族ぐらいで乗る分には何ら問題ない車内環境ではあるのだ。定員いっぱいの5名乗車で、なおかつ「その全員が大柄な男性でした」みたいな場合は地獄となるが、そんなケースはほとんどあるまい。

また荷物の積載能力についても、そりゃもっと大きなクルマと比べれば確実に劣ることは間違いないが、一時期は初代マツダ ロードスターという小さな2人乗りのクルマで「コストコ」に行き、やたらとデカいトイレットペーパーや冷凍食品などを普通に積み込んでいた筆者に言わせれば「ま、使おうと思えば普通に使えますよ」としか言いようがない。

そのほかの問題点として、このところプジョー106は中古車の流通量が激減しているという問題もある。具体的には2020年4月中旬現在、大手中古車情報サイト『カーセンサーnet』での掲載台数は全国でわずか15台。一時期に比べればずいぶん少なくなったものである。

しかしまだまだ「絶滅」には至っておらず、車両価格100万円から170万円あたりのゾーンに、ほぼフルノーマルの好ましい物件がそこそこ集中している。

プジョー106でコストコに行くかどうかは別として、あくまで「快感発生器」としての使い方を第一義に、この小さなフレンチ・ハッチバックに──それが絶滅してしまう前に──ご注目いただければ幸いである。

文・伊達軍曹 編集・iconic

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