1階の大ホールだけでなく重要モデルが2階にも
ドイツの空の玄関口であるフランクフルトから北、クルマで1時間ほどのディートツェルツタールにあるナショナル自動車博物館ロー・コレクションを訪れたのは2025年の9月。家内が子どもの頃からの念願だったというラインクルーズ(ライン下りは日程的にも席が取れずに反対方向のライン上りになったけれど)の際に特別にスケジュールを組んで、フランクフルトからラインクルーズのスタート地であるオランダのアムステルダムに出発する前々日に訪問のスケジュールを組んだのでした。
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当日朝はフランクフルト市内のホテルから電車で空港に行き、レンタカーをピックアップして博物館へ。ここまでは普段の博物館詣でと同じながら、今回は家内が同行しているだけに強行スケジュールはNG。空港から博物館まで1時間余り行程のなかで一度トイレ休憩を挟むなど、普段の弾丸ツアーからは考えられないような、ゆったりとした移動行程でした。
ローコレクションに着いてからも、家内はカフェで休憩したいというので、彼女をカフェに残して、まずは斥候がてら単身で展示コーナーをまわることに。中庭を経て最初に入ったコーナーは戦前のロードカーやレーシングカーばかりで、家内を連れてきてもあまり興味を示さないだろう。さらに進んだ大ホールには戦後のロードカー&レーシングカーが、展示されていましたが、車椅子では見てまわるのも大変だろうと勝手に判断。 1912 Rolls-Royce Silver Ghost 40/50 HP 創業当初のモジュール仕様ではなく、完全に新設計した直6エンジンを搭載。スペック的には平凡だが、その工作精度と製品レベルでの完成度を誇る、ロールス・ロイスを代表する1台となった1912年製のシルバーゴーストだ。
1929 Bentley 6 1/2-Liter SWB Speed Six Boat-Tail Two-Seater by Barker ベントレーの6.5リッターをベースに開発されたスポーツ・バージョン/レース仕様がスピードシックス。ローリングシャシーで販売され、さまざまなコーチビルダーが腕を奮った。こちらの個体はバーカーが手がけたボートテール。
1929 Mercedes-Benz 710 SSK フェルディナント・ポルシェ博士がダイムラー・ベンツ在籍中、最後に手がけたモデル。グランドツアラーのSをベースにショートホイールベースの2シーターに仕上げられた、戦前のメルセデス・ベンツを代表する1台だ。
1938 Auto Union Type D ドイツの民族系資本メーカーが合併して誕生したアウトウニオンがポルシェ博士に設計を委託して誕生したレーシングカーで、ミッドシップレイアウトを採用。1938年に登場したType Dはその最終モデルで3リッターV12を搭載。
1948 Talbot-Lago T26 Grand Sport by Saoutchik 1950年にはル・マン24時間で優勝したタルボ・ラーゴはフランスのメーカー。ル・マン優勝車はオープン2座だが、こちらは1948年式T26グラン・スポールでソーチックが手がけた2ドアのクーペボディを纏っている。
取材終了を決めたもののエレベーターの上には……
ここまで小1時間で見てまわり、1950年代から1960年代にかけてのフェラーリのレーシング・スポーツカーなど見るべきクルマも少なくなく、とくにステファン・ベロフがドライブしたマウラーMM83・BMWは、当時モータースポーツ専門誌の編集部員として海外レースのページを担当していた頃の思い出がよみがえりました。 1983 Maurer MM83・BMW レーシングカートから1981年にFF1600にステップアップ。翌82年のヨーロッパF2で開幕2連勝を飾ったステファン・ベロフが翌83年にドライブしたマウラーMM83・BMW。ドイツ人初の世界王者の期待も高かったが、1985年の事故で帰らぬ人に。
1951 Ferrari 212 Inter フェラーリ195の発展モデルとして1951年に登場したロードゴーイングカー。インテルはシングルキャブのロングホイールベース版でこの個体と同じヴィニヤーレ製だけでなく、ピニンファリーナ製のボディを纏うモデルもあった。
1955 Opel Olympia Rekord Cabriolet オペルのミディアムクラス、オリンピアの後継モデルが1953年に誕生したオリンピア・レコルト。こちらは1955年に登場した2代目。オペルといえば実直なイメージが強いが、こちらはロールトップを持ったカブリオレだ。
1963 Lincoln Continental “Limo One” owned by John F.Kennedy 若くして合衆国大統領となったジョン・F・ケネディが愛用した大統領専用モデルのリンカーン・コンチネンタル“Limo One”。こちらは白いカラーだが、彼が銃弾に倒れたときの“Limo One”は黒いボディだった。
1973 Ford Capri RS 2600 DRM Spec ヨーロッパ・フォードが1968年に投入したカプリの最強モデルが2.6リッターのV6エンジンを搭載したRS2600でヨーロッパのツーリングカーレースで活躍。青/白のカラーリングだけでなく赤/白のカラーリングもワークスカラーだ。
ただし、期待していたほどにはレーシングカーも多くなく、ひとりカフェで待っている家内も心配になったので、「取材撮影はここまで」と決断してカフェに戻り、家内とお茶を楽しむことになりました。
そして席を立って帰ろうとしたときに家内が「少しクルマを見てみたい」と言うので『見てもあまり面白くないよ』とは思ったものの、家内と一緒に展示ルームに戻ることに。博物館のスタッフが車椅子の家内に「こちらにどうぞ」とエレベーターに載せてくれたのです。そして階上についてエレベーターのドアが開くと、驚くべき光景が広がっていたのです。
1935年のアルファ・ロメオに始まり、1957年のマセラティから2019年のメルセデスAMGまで新旧のF1マシンが居並ぶさまはまさに壮観。とくにフェラーリに関しては1964年の275、Tipo579から1972年の312B2、1975年の312T、2000年のTipo651、2004年のTipo655が展示されており、1階のレーシング・スポーツカーも含めてオーナーのフェラーリ好きがうかがえました。 1935 Alfa Romeo 16C Bimotore 政府の管理下に置かれたアルファ・ロメオに代わり、エンツォ率いるスクーデリア・フェラーリが完成させたビモトーレ。Tipo Bをベースにコクピットの前後にエンジンを文字どおり2基搭載したモンスターマシン。
1957 Maserati 250F T2 Lightweight Formel 1 1950年に始まった近代F1GPにおいてアルファ・ロメオやフェラーリとともに王座を競っていたマセラティが54年に投入した新型マシンが250F。こちらの個体は1957年シーズン用の750F T2でシリーズ最終モデルとなった。
1975 Ferrari 312B3 74 1975年にワールドタイトルを奪還することになるフェラーリがシーズン序盤に使用した前年モデルが312B3 74。1975年シーズン用の主戦、312Tは横置きミッションを採用するなど大きく改変されており、つなぎは重要だった。
1974 McLaren M23 マクラーレンが初のワールドチャンピオンに輝いた、記念すべきマシンが1974年のM23。デビューは1973年だが、マールボロ・カラーの1974年版のほうが、成績を抜きにしても印象が強いのは言うまでもない。
1984 Tyrrell 012 ターボ全盛のなか、最後までNAのコスワースDFYで頑張ったティレル012。レギュレーション違反でポイントは剝奪されたが、雨に見舞われたモナコGPにおいてプロストとセナを追い詰めたベロフの快走はいまも語り草となっている。
普段、クルマにあまり興味を示すことのなかった家内も、ホンダのエンジンを載せて世界一になったマクラーレンもあるのね、と感激の様子で記念写真にも納まるなど、ラインクルーズに博物館詣を組み込んだ自分としては、ほっとひと息ついたところでした。
それにしても、カフェで家内が「少しクルマを見てみたい」といってなかったら、階上のF1マシン群を見ることなく立ち去っていたかと思うと、本当に、家内に感謝です。
ナショナル自動車博物館ロー・コレクション National Automuseum-The Loh Collection
Museumsstraße 1, 35716 Dietzhölztal-Ewersbach, Deutschland. Website://www.nationalesautomuseum.de/ 月曜と火曜休館。 開館時間は11:00~18:00(土曜と日曜は10:30~18:00)/入館料は€21.0
ナショナル自動車博物館ロー・コレクションは、フランクフルトの北かつケルンの東という立地で、どちらからもクルマで1時間程度の好アクセスなので、ほかの博物館と合わせて午前と午後で1軒ずつはしごすることも可能だ。ただ、ロー・コレクションの収蔵車種は希少性やレストアのレベルなどが高く、写真を数カット撮っただけで立ち去るのはもったいない。1台1台が持っているヒストリーに思いを馳せながら、ゆっくり1日を過ごしても良いと感じたほどだ。 ※本記事は雑誌「CARトップ2026年3月号」の記事を再構成して掲載しています
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みんなのコメント
ポルシェ博物館はSバーン(近郊電車)、メルセデスベンツ博物館はトラム と公共交通機関を利用して1日で2館余裕を持ってハシゴする事が可能です。
ポルシェ博物館は歴代のポルシェのレーシングマシンが1列にズラリと並べられているのが圧巻で、メルセデス・ベンツ博物館は自動車の歴史博物館といった感じで規模の大きさに圧倒されます。