クルマの世界選手権といえばF1、世界耐久選手権(WEC)、そして世界ラリー選手権(WRC)が御三家だろう。自動車競技をする人ならだれでも憧れる競技だ。実は自動車ジャーナリストの国沢光宏氏がWRCに参加したことがあるのはご存知だろうか。
すべて自費で賄うプライベーターながらクラス入賞も果たすなど、自動車ジャーナリストのなかでも屈指のラリーストだ。そんな国沢氏が今回はGAZOOレーシングのオーディションを受験したという。
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完全極秘のオーディションだったがまさかの一次試験突破。二次試験はオンライン面接となった。しかし画面の向こうに現れたのはあのフィンランドの大物だった……。さすがに緊張した国沢さんのレポートもお届けしよう。
文/国沢光宏、写真/ベストカー編集部、TOYOTA GAZOO Racing
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■太っ腹GAZOOの心意気に感謝!
2021年8月、TOYOTA GAZOO Racingは、WRCで活躍できる日本人若手ドライバーの発掘・育成を目的に、TGR WRCチャレンジプログラムの育成ドライバーを新たに募集した
2021年8月のこと。Gazooレーシングが「世界ラリー選手権で活躍できる日本人若手ドライバーの発掘・育成を目的にWRCチャレンジプログラムの育成ドライバーを新たに募集します」というリリースを出した!
早速Gazooに「若手とは何歳からですか?」と問い合わせてみたら「特に基準は設けていません」。となれば私も申し込んでみなくちゃならんでしょう!
そしたら「本気ですか?」と言うので「当然本気です」。さらに「合格したらフィンランドに住んでトレーニングすることになりますが……」。これも「もちろん承知です!」と答えたら、仕方ないな、という雰囲気を濃厚に漂わせながら書類選考から受け付けてくれることになった。
実績を書くのだけれど、WRC参戦4回(完走4回)。2012年タイ選手権シリーズチャンピオンなどまぁまぁ。
忘れた頃に連絡あり、一次選考合格でございます! Gazooも茶目っ気ありますね~(笑)。記事になればそれなりの効果もあると考えたか?
本来のスケジュールだと秋口に富士スピードウェイで走行テスト試験を行う。そこで走らせ若手との差を見たかったのかもしれない。私自身、どの程度のポテンシャルを持っているのかわからないから大いに楽しみにしていた次第。
ところが新型コロナの感染者数急増で国内の試験は中止になってしまう。今シーズンの育成プログラムも中止かと思っていたら、一次選考合格者に対しオンライン面接を行い、その結果で育成ドライバー候補を決めることになったという。まだチャンス残ってましたね!
■画面に突然登場のヒルボネン氏に言葉を失う!!!
オンライン面接、11月12日の夜という指定。おっと! その日はWRCジャパンの記念イベントであるセントラルラリーだ。
選手として出ていたこともあり、何とか都合つけインタビューに臨む。動画の回線繋いでスタンバイしていたら、突如画面にミッコ・ヒルボネンさん登場! 超驚く! ペター・ソルベルグと一緒にスバルのドライバーだった時期もあり、私が出場していた2008年のWRCジャパンはフォードを駆って優勝してます。
ラリーファンとしちゃ落選してもこれだけで幸せでしょう!
オンライン面接にて、画面の向こうに現れたのはなんと往年のWRCドライバー、ミッコ・ヒルボネン氏。国沢氏も驚いたが、若手ドライバーの面接と思い込んでいたミッコさんも驚いたことだろう
おっとインタビューでした! どうやら成績についちゃデータがあるらしく、あまり重視されません。考えてみたらミッコさんレベルになれば参戦実績だけである程度レベルはわかるんだろう。
むしろ「どういう姿勢で競技に出ていたのか?」とか「育成プログラムに申し込んだ理由は?」。そして「今までどんな苦労をしてきたか?」みたいな人間性についての質問がメイン。
成績良ければ勝田貴元選手のようなトヨタの看板を背負ったワークスドライバーになる。最初から圧倒的に速いドライバーなら性格など二の次かもしれないけれど、成長するには時間が必要。
やはりメディア対応を丁寧にこなし、多くのファンから応援してもらえないとならない。モータースポーツは「勝てばいい」というだけじゃなく、プロモーションの一環です。
貴元選手、欧州のメディアからも高く評価されており、トヨタの、いや日本のいいアピールになっている。性格に問題のあるドライバーだったらむしろマイナスだ。多くのドライバーにインタビューしてきたが、トヨタのWRC関係者でいえばラトバラ監督最高でしょ!
オジエもジェントルマン。ロバンペラの場合、親父がメディア対応を教えているらしく、しっかり受けてくれます。
今年ドライバーにカムバックするラッピはメディア対応に問題あったが(インタビューの時に足組んでふんぞり返るなど態度悪いと評判)、ラトバラ監督の再教育を受けると思う。
■GRは技術に加えて突破力や人柄も問う
国沢氏の本気ぶりを意気に感じたのか、和やかながらも真剣に面接してくれるヒルボネン氏。名ドライバーの面接に国沢氏はいささか緊張気味!?
ミッコさんのインタビュー、相当の比率で人柄を見ている感じ。私の場合、ミッコさんもジジイのジャーナリストが一次選考に残っていると教えてられなかったらしく、少しばかり対応に困ったかも?
育成プログラムに申し込んだ理由も聞かれました。「今まで競争力のあるラリー車に乗った経験が2回しかありません。死ぬ前にどのくらいの実力を持っているのか知りたいと思ってます」と答えたら笑ってました。
実際、私にとってのラリーって、ある意味常に新しいチャレンジ。皆さんと同じレベルのラリー車に乗って競技に出たのは、フォードMスポーツの2戦しかない。
そんなこんなでネットでの二次審査終了。結果は年内に、ということでした。そしてついに連絡あり、結果は「落選!」。わかっちゃいるけれどガックリします(笑)。
ただ機会あったら最終選考会の取材もしていいでしょ、ということなので、メディアとして育成プログラムを紹介していきたいと思う。貴元選手のように素晴らしい人材が出てきたら我が国にとって財産です!
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