現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#7 憧れのフェラーリ・セダン!

ここから本文です

【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#7 憧れのフェラーリ・セダン!

掲載
【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#7 憧れのフェラーリ・セダン!

機関や変速機が健全なのだから!

つくばの大平原に広がる、メカ砦ならぬメカトリエにて、大貴族号(200万円で買った先代マセラティ・クアトロポルテ)と初対面し、内外装の意外な没落ぶりに軽い衝撃を受けた私。

【画像】清水草一が所有する大貴族号こと先代マセラティ・クアトロポルテ! 全9枚

もうひとつ衝撃だったのは、グローブボックスに残されていた大量のリモコンだった。オーディオやテレビのものらしいが、何が何やらサッパリわからないし、その雑然ぶりが大貴族らしくなかった。

新車時(1540万円)はともかく、最近これに乗っていた方は、見栄重視のパンピーだったのかもしれない。何しろ激安だし……。

いや、そんなことはいい。なにしろ機関や変速機が健全なのだから! フェラーリ・エンジンがちゃんと動いて、その動力が後輪に伝えられれば、あとはすべて枝葉末節! 無視してヨシ!

タコちゃん(マイクロ・デポ岡本和久代表)「じゃ、試乗します?」

オレ「えっ、乗れるんですか!?」

タコちゃん「乗れますよ。車検ついてますし。私もまだ乗ってないんで」

我々は、大貴族号で大平原へ乗り出すことになった。

私は非常に緊張した。なにかこう、ものすごく繊細な壊れものに触る気分だったのである。この緊張感は、フェラーリ288GTO試乗時に匹敵する。

『くおぉぉぉぉぉーん!』

キーをひねると、若干長めのクランキングの後、フェラーリ製4.2リッターV8エンジンは『ぶわぉ~ん』と重々しく目覚めた。思わず「お~!」と声が漏れる。

右パドルを引いて『D』に入れ、しずしずと発進。徹底的に人気のないデュオセレクト(シングルクラッチAT)は、おだやか~につながって後輪に動力を伝えた。

ジャリ道を慎重に乗り切って舗装路へ。軽くアクセルを踏み込むと、フェラーリ・サウンドを発する間もなく、デュオセレクトがシフトアップする。

それはまさにシングルクラッチATのソレ。ゆっくりした変速タイミングは、フェラーリのF1マチックより、アルファ・ロメオのセレスピードやフィアットのデュアロジックに近い。

左パドルでシフトダウンし、少し回転を上げてみた。『くおぉぉぉぉぉーん!』という吸気音が控えめに響いてとても気持ちいい。20年くらい前、先代クアトロポルテに初めて試乗した時、「これぞ我が理想のサルーン!」と感動した記憶がよみがえる。

その背景には、30年以上前に試乗したランチア・テーマ8.32への陶酔があった。私は、フェラーリ・エンジンを積んだセダンにずっと憧れてきたのだ。それは、かつての南極大陸の如き未踏の地。男のロマンである。

オレ「ちゃんと走りますね!」

タコちゃん「いまのところはねぇ」

ちゃんと走るだけで涙。

『タタタタタタタタタッ!』

信号で止まる。アイドリング状態はとても静かだ。さすがはクロスプレーン。

フェラーリV8はパワーとレスポンス重視のシングルプレーンが基本だが、マセラティ用には快適性重視のクロスプレーンが採用されている。その効果を、今ごろになってはっきり理解した形だ。

しばらく進むと、平坦路で『タタタタタタタタタッ!』という、金属的な振動と音が響いた。大地震の時真っ先に感じるP波のようだ。特に路面が悪いわけじゃないのに。

その後も大貴族号は、一見何の変哲もない路面で、一見気まぐれに『タタタタタタタタタッ!』という異音を発した。

オレ「なんですかね、この音」

タコちゃん「サスから出てますね」

オレ「左前かな?」

タコちゃん「右からも……」

サスがほとんどストロークしてない状態で、こういう音が出るってことは、中立付近で共振的な振動が発生しているんだろう。震源地はサスペンション取り付け部か?

ひょっとしたら前オーナーは、この音が原因で手放したのかもしれない。クラッチは85%も残ってるけど、こんなの耐えられないわ、もうイヤーッ! って。

でも、私はこれくらいガマンできる。動けばいい! 走ってくれればそれでいい! なにしろこれは激安マセラティの大貴族号なのだから!!

(つづく/毎週金曜日昼頃公開予定)

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

テストコースで夢見心地 ボアハム・フォード・エスコート Mk1(2) ノスタルジックな危うさ
テストコースで夢見心地 ボアハム・フォード・エスコート Mk1(2) ノスタルジックな危うさ
AUTOCAR JAPAN
2025年に通用する30年前の面白さ シトロエン・サクソ VTS x プジョー106 GTi(2)
2025年に通用する30年前の面白さ シトロエン・サクソ VTS x プジョー106 GTi(2)
AUTOCAR JAPAN
アルファ・ロメオ 8C 2900B「バレーナ」(3) ブロワーの悲鳴と重なるツインカム・ノイズ
アルファ・ロメオ 8C 2900B「バレーナ」(3) ブロワーの悲鳴と重なるツインカム・ノイズ
AUTOCAR JAPAN
魅力そのまま「お手頃」に ルノー5 E-テック・アーバンレンジ 122psでも運転が気持ちイイ
魅力そのまま「お手頃」に ルノー5 E-テック・アーバンレンジ 122psでも運転が気持ちイイ
AUTOCAR JAPAN
スターになり損ねたクルマ、予想外に売れたクルマ 20選 「期待外れ」と「嬉しい誤算」
スターになり損ねたクルマ、予想外に売れたクルマ 20選 「期待外れ」と「嬉しい誤算」
AUTOCAR JAPAN
A110の5座SUV版? アルピーヌA390 プロトタイプ 想像超えの軽快感 総合出力は400-500psか
A110の5座SUV版? アルピーヌA390 プロトタイプ 想像超えの軽快感 総合出力は400-500psか
AUTOCAR JAPAN
1kmでわかる画期的な完成度 ジャガーXJ6 S1とローバーP5 B(3) 我が物にしたいクラシック
1kmでわかる画期的な完成度 ジャガーXJ6 S1とローバーP5 B(3) 我が物にしたいクラシック
AUTOCAR JAPAN
シンプルだけど安っぽくはない。「テスラ モデル3」は万人向けではないけれど素晴らしいEV車だ
シンプルだけど安っぽくはない。「テスラ モデル3」は万人向けではないけれど素晴らしいEV車だ
LEON
プアマンズ・ロールス・ロイス ジャガーXJ6 S1とローバーP5 B(2) 歴代の英国首相の公用車
プアマンズ・ロールス・ロイス ジャガーXJ6 S1とローバーP5 B(2) 歴代の英国首相の公用車
AUTOCAR JAPAN
「キャトル」30年ぶりに復活 新型ルノー4 E-テック 革新的で実用的な電動世代
「キャトル」30年ぶりに復活 新型ルノー4 E-テック 革新的で実用的な電動世代
AUTOCAR JAPAN
スクラップとして消えていく希少・奇妙なクラシックカー 40選(後編) ジャンクヤード探訪記
スクラップとして消えていく希少・奇妙なクラシックカー 40選(後編) ジャンクヤード探訪記
AUTOCAR JAPAN
シトロエン・サクソ VTS x プジョー106 GTi(1) エンジン&シャシー共有の小さなお宝
シトロエン・サクソ VTS x プジョー106 GTi(1) エンジン&シャシー共有の小さなお宝
AUTOCAR JAPAN
GRヤリスにシビックタイプRに……どれもこれもガチすぎる!! メーカーが本気で作ったクルマたち
GRヤリスにシビックタイプRに……どれもこれもガチすぎる!! メーカーが本気で作ったクルマたち
ベストカーWeb
【10年ひと昔の新車】スズキ ワゴンR & ワゴンRスティングレーの完成度は驚異的だった
【10年ひと昔の新車】スズキ ワゴンR & ワゴンRスティングレーの完成度は驚異的だった
Webモーターマガジン
1.8Lターボ搭載の新型スバル フォレスターSPORTから感じた、懐かしさと上質な走り味の好バランス
1.8Lターボ搭載の新型スバル フォレスターSPORTから感じた、懐かしさと上質な走り味の好バランス
Webモーターマガジン
【徹底解説&試乗】売れ筋はウルトラ!ボルボXC90乗るならマイルドハイブリッド
【徹底解説&試乗】売れ筋はウルトラ!ボルボXC90乗るならマイルドハイブリッド
AUTOCAR JAPAN
スクラップとして消えていく希少・奇妙なクラシックカー 40選(前編) ジャンクヤード探訪
スクラップとして消えていく希少・奇妙なクラシックカー 40選(前編) ジャンクヤード探訪
AUTOCAR JAPAN
ホンダeへ通じる「もどかしさ」 ミニ・エースマン E 硬い乗り心地に200kmは本当に丁度良い?
ホンダeへ通じる「もどかしさ」 ミニ・エースマン E 硬い乗り心地に200kmは本当に丁度良い?
AUTOCAR JAPAN

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1515 . 0万円 2569 . 0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

122 . 0万円 1811 . 4万円

中古車を検索
マセラティ クアトロポルテの買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1515 . 0万円 2569 . 0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

122 . 0万円 1811 . 4万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村