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横尾忠則の現在地を世田谷美術館で。新作《連画の河を描く》──今月のアートを深掘り

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横尾忠則の現在地を世田谷美術館で。新作《連画の河を描く》──今月のアートを深掘り

横尾忠則の個展『横尾忠則 連画の河』が世田谷美術館で、4月26日より開催される。新作の油彩画約60点とスケッチなどが並ぶ展覧会は必見だ。その中から、美術ジャーナリストの鈴木芳雄が新作《連画の河を描く》にフィーチャー。

日本で古くから成立した詩作の方法に「連歌」がある。和歌の上の句(発句)の5・7・5と下の句(脇句)の7・7を複数人が連ねて読んでいき、やがて長い詩になる。

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横尾忠則の最新の展覧会『連画の河』はその「連歌」に想を得ている。日々描き続ける横尾が昨日の自作を他人の絵のように眺め、そこから今日、筆の導くままに描き、明日の自分(=新たな他者)に託していく絵の連鎖を「連画」と名付けた。

横尾は名作「Y字路シリーズ」で空間を左右真っ二つに分断したかと思ったら、今度は「連画」によって、時間を接合し得たようである。

接合され連なった時間の起点となったのは1枚の集合写真。1970年に横尾が故郷の西脇(兵庫県)で同級生たちと収まるその写真は、篠山紀信が撮影したもので、その22年後、写真集『横尾忠則 記憶の遠近術』に収録された。序文は、撮影年の70年に自決した三島由紀夫が遺していた横尾論だった。

元になった集合写真や94年に描いた《記憶の鎮魂歌》のイメージを携えつつ、広告などで見つけた別の集合写真、そして川や水にまつわる物語など、さまざまなイメージが入れ代わり立ち代わり登場する。

そういえば一時、横尾は滝に取り憑かれ、滝ばかり描いた。滝は天と地をつなぐ存在としてある。

川は世界各地の文化で古くから此岸と彼岸、生者と死者の間にあるものとされ、一方、時間を可視化する装置としても機能する。

この新作《連画の河を描く》には横尾とはおそらく無縁の無名の男女が集まっている。画面右下でそれを描いている画家は横尾の自画像だろう。日付が書かれている。前後の絵をぜひ見てみたい。

『横尾忠則 連画の河』場所:世田谷美術館 東京都世田谷区砧公園1-2
会期: 4月26日~6月22日
休館日:月曜(4月28日、5月5日は開館。5月7日は休館)
開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
https://www.setagayaartmuseum.or.jp/

鈴木芳雄/YOSHIO SUZUKI美術ジャーナリスト。昨年、ビルバオの『ヒルマ・アフ・クリント展』で見た高さ3m超・10点組みの《10の最大物》との東京での再会を楽しみにしている。

編集・橋田真木(GQ)

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